9(エピソード完)
「陽彦くんたちのこと、よろしくね」
「あなたはそれでいいの?」
自然と胸に浮かぶ言葉を、そのまま投げかける。
「いつか分かるよ。信じてる」
どうして――その疑問は飲み込んだ。
彼女が本心から、そう言ってくれているのだけは分かったから。
「私のこと、時々思い出してね」
「うん。あなたのこと、きっと忘れたりしない」
「ありがとう。大好きだよ」
「私も、あなたのことが好き」
私も同じ顔で応える。夢の中の私にはそれができた。
「またね」と手を振ると、世界が光の
※※※
あの日から私は、新しい夢を見るようになった。
幸せなことも、胸が苦しくなることもある。
陽彦たちと一緒に戦っていることもあれば、ここではないどこか暖かい世界で、穏やかに暮らしていることもあった。
私は私でありたい。けれど、あの子から奪いたくない。
私はわがままを貫いたまま、あの子に許されたい。
あれはきっと、私の心が見たがっている都合のいい夢なのだろう。
それでいいのだと思った。
たぶんそれが、この
コン、コン――ノックの音。今日からまた遠征が始まる。
ドアの外にいるのは、陽彦か、聖二か、愛海……は、まだ寝ているだろうか。
「少し待って」
そう返事をして、鏡に向かって
現実の私は気持ちの表現が得意じゃないので、こうやって練習をする。
『あなたたちが好き』と、ちゃんと伝えられるように。
「私が死なせないから」
私が
口の
ドアノブを回して、「おはよう」と告げながら、外に一歩を踏み出した。
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