8
――ようやく見つけた。
消えてしまった
胸の奥底から湧き上がる、
私はただ、陽彦たちを死なせたくなかった。
単なるエゴイズムかもしれないし、脳に宿った
それでも別に良かった。
今ここにいても良いって思える
――思えばずっと、これを求め続けていた。
私は私として、みんなと一緒に生きたい。きっと、これが私なんだ。
「■■■■■■ーーーーッ!!!」
鳥女の
多方から迫り来る殺意の
だから、三人にも戦ってもらう。
「「「「「「「■■■■■ッ!!?!」」」」」」」
神経線維ごしに動きを与えた。彼らが
死の吹雪が
陽彦と
うまくいかない。いつも彼が見せるような、
愛海と
うまくいかない。攻撃を受けるのが怖くて、思い切った一歩を踏み出せない。
聖二と
うまくいかない。精密で素早い、あの機械のような
そして
「――っ、う……!」
少しずつ、数に押されて傷を負い始める。
陽彦の、愛海の、聖二の身体が
再生を上回る速度で、傷が重なっていく――こんなはずじゃない。
こんなやつらに負けるほど、みんなが弱いわけがない。
歯がゆさを感じる。いっそ三人の肉体を、完全に支配してしまえれば
――いいえ、それだけはあってはならない。
浮かび上がる
私自身が、彼らを殺す悪意にならないように。
「「「「「「「「■■■■■ーーー!!」」」」」」」」
その時、にわかに
「……みゆ……き……はな……せ……」
パシュッ、パシュッ、パシュッ――破裂音が
「……どういう状況だ、これは。なぜ囲まれてる?」
訊ねながらも、聖二は休まず引き金を絞りつづける。
「敵の能力で眠らされていた。たぶんガスかなにか」
「了解。二人を守るぞ」
即答、そして正確無比な射撃。安心感すら覚えるほど――状況はまだ、私たちに不利なままだというのに。
聖二の
やるべきことは分かっていた――怪物たちが死を恐れないのは、人型の
手下たち任せではなく、
「「「「「「■■■■■■■■ーーーーーッ!!」」」」」」
嘴の
来た――命を
愛海の身体で
鳥女が一瞬だけ、動きを遅らせた。
無防備となった愛海に致命の一撃を与えるために、鈎爪が振りかぶられる。
間に合わないと思った。
「……あはっ」
にわかに
「■■■■■■■■■■ーーー!!? ――ッ!!!??」
私が
愛海は迷わずに一歩を踏み込み、同時に左右の手を突き出していた。
鳥女の
「■■■■■■■ッッ、■■■■■■■ィーーーーーッ!!!」
鳥女の羽ばたき――
痛みに耐えきれなかったのか、
「愛海、もしかして起きてた?」
「深雪ちゃんが、聖二くんとお
「もっと早く、教えてくれればいいのに」
「こうした方が、鳥さんが
一歩間違えれば死に
これが愛海の強さなのだ。その危なっかしさすら、今は頼もしい。
「一緒に戦おう、愛海」
「は~いっ!」
思い思いに駆け出す――敵の群れが愛海に引き寄せられる。
「■■■■■■■■ィ……――」
鳥女の傷口から
その出来かけの脚で地を
脚を奪ったせいで、
聖二と愛海が目覚めたのはたぶん、雪上車に
鳥女は攻撃が届かない上空まで逃げるつもりなのだろう。そのまま
一度目覚めた聖二や愛海に、耐性はついているのだろうか。むしろ、二度目はすぐに効く可能性は?
ここで逃がすわけにはいかない――けれど、距離にしておよそ三十歩。
聖二の
私の攻撃が届くより、鳥女が飛び立つほうが早い。
「おい」
にわかに声――
その全身が
そして
反抗ではなく、同調の信号――もっと踏み込んで来いと私に告げていた。
ほんの少し
むしろ思い切って
脳の
陽彦が私を信じてくれているのが、神経線維ではなく、もっと確かな何かを通して伝わってくる。
そのことがただただ嬉しくて、私はもう、これ以上ないぐらいに笑った。
「「……あああああああああああああっ!!!!」」
私たちは、一つになって叫んだ。
足元の雪を
「■■■■■■■■ァァァ!!!――」
雪の大地に、とびきり綺麗な赤い花が咲いた。
陽彦が武器の
※※※
ふっと力が抜けて、背中から雪の上に倒れ込む。
急激に
ぼやけていく視界。蜘蛛の子を散らすように、空へと消える
彼が何か言う前に、私は伝えることにした。
「ごめんなさい」
ごめんなさい。あなたたちが幸せになれる、またとない
ごめんなさい。
ごめんなさい。こんなに酷いことをしたのに、
そんなひとの気も知らずに、陽彦は。
「意味分かんねえし。なんで笑ってんだ、お前」
ぶっきらぼうな、けれど優しい声で、そう
その答えに満足して、私は
なんだか今日は、素敵な夢が見れそうな気がした。
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