5
T市に点在する
『
「もう少し待って」
やがてそれは見つかった。長い通路を抜けた突き当たり――群れの中で、最も大きな個体がそこに居る。
周囲にも
逃げ道を
――そんなの関係ない。一番強い私が、リスクを背負えばいい。
「着いた。いつでも大丈夫」
『……なあ深雪、お前もう奥まで行ってるだろ』
「うん。始めるから」
通信機ごしに、とても深いため息が聞こえた。
スイッチを切って、全速力で駆け出す。
「■■■■■■■■ッ!」「■■■■!!」
浮き上がる
(
うなじから繊維を延ばす。逃げ場のない密室でこそ真価を発揮する
「「「■■■■■■■ッ!?」」」
数を
――
そんなことをぼやく陽彦の顔が、ふいに浮かんだ。
思考を振り払って、攻撃の手をなお
私がしっかりしなければ。今この場には、陽彦も愛海もいないのだから。
愛海には
※※※
深々と積もった雪を
T市は
フィンブルの
いくらせがまれても
日が
私はふざけているのだろうと鼻を
一分ぐらいして、
塞いだ手に、
「ちがう、私はなにもやってない」
「いきなり何を言ってるんだ?」
「陽彦くん、まだ起きないんですか? 可愛い
見ると、陽彦はすー、すー、と静かな息を立て、タオルごしの胸は
一瞬
「陽彦が、目を覚まさない」
※※※
「陽彦くん、
「フィンブルの細胞は通常、気温が下がるほど
シート上で安らかに眠る陽彦を
最初は
「呼吸はあるんだろう? ……もし神経系の変調だとしても、僕らには再生能力がある。じきに治るさ……」
ミラー越しに
私たちに対してというより、自分自身にそう言い聞かせているようだった。
「今すぐ戻って治療を受けさせるべき。なにかあってからじゃ遅い」
「僕もそう思う。でも、今すぐにはできない」
「なんでですかぁ?」
「この街のフィンブルが、増えすぎているからだ」
窓の外を一瞬見る。
一定の
だからその前に、北海道内で数を減らす必要があった。
市内のフィンブルが増えている原因は明らかだった。狩る者がいないからだ。
もしそうなら、
「今僕らが街を出れば、戻ってくるよりも早くここのフィンブルたちは本土に渡るだろう。だが今の内に
「でも、それってわたしたちが危ないんじゃないですかー?」
「危ないよ、だから期限を決めよう。三日以内に人型を見つけられなかったら本土に戻る。陽彦を飲まず食わずのまま
※※※
それから日が暮れるまで、
公民館/デパート/倉庫/
大した敵ではない――
けれど、何かが
「
殺した肉を
確かに、と
「人型が飛びぬけて強いとか、そういうことかも」
「そうだな――三日と言ったが、やっぱり早く帰った方がいいかもしれない。明日の朝、吹雪が
「うん」
私もそれに
「そっかぁ、帰っちゃうんですねー……」
けれど、納得はしてくれたのだと思う。
明日になればこの街を出て、そのうち
※※※
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