4
小さな
乗り込んだ
そろそろスイッチを切り替えなければならなかった。いつまで続くかも分からない闘争の中で、気持ちの糸を切らさないために。
先ほどまで二段ベッドの下段で昼寝していた
話し相手が必要だ。迷える自分自身を見つめ直すための、
すれ違ったワイルドハントたちが向けてくる、
そんな通りすがりの顔ぶれも、いつの間にやら年下ばかりになってしまった。
「聖二」
入り組んだ通路を数分ほどぶらぶらと歩いた先、
深雪は両腕を胸の前で組み、
大きさからして、おそらく猫のようだ。聖二には曖昧にしか分からない。
手足もなく、血まみれで、声を発することもなかった。頭のあたりから
「何してるんだ、深雪」
「聖二、どうしよう。死んじゃう」
船の中に野良犬や野良猫が紛れ込むのも、そういった動物が
深雪に限ってそういう
「深雪、やめるんだ」
「どうして?」
「それはもう助からない」
頭や心臓が残っていても、
ろくな
「この子もきっと、生きたがっている」
「いたずらに苦痛を長引かせることは、お前のエゴだろう」
深雪の神経線維が
ただし、地獄のような苦痛と
「分かった」
深雪は目を伏せ、そっと猫を
「……辛いなら、代わりにやっても良かったんだぞ」
「ううん。私がしてあげたかった」
彼女自身がそれを知られるよう望み、働きかけたからだ。
人間としての
ただ、聖二にはとてもそんな風には思えなかった。彼女は意思表示の薄いところはあるが、人間らしさも確かに備えている。
「聖二たちにとっても……」
「ん?」
「生き残れることだけが、幸せではない?」
「時と場合によるさ。少なくとも僕らの
「……そう」
深雪はこくりと
「この子を海に
「外は荒れてる。気をつけろよ」
「うん、ありがとう。また後で」
遠ざかる小さな背がやがて
彼女は言う――他の誰かの役に立つことが、自分が人間になる
けれど、聖二はそれだけではないと思っていた。本人は否定するのだろうが、きっと彼女は自分を
おそらくそれは、
自分を
どう答えればもっと自分を大事にしてくれるのかが、聖二には分からない。
生きている限り、より良い
けれど果たして、深雪にそれを実感させられるぐらい、聖二自身が心からその言葉を信じられているだろうか。
――やめよう。考えても
元来た道を引き返す。仮眠を取っている間に船も着くだろう。その後は
そういえば――久しぶりに深雪と普通に話せたなということに気付いて、聖二は
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