第6話 彼岸花に口づけを

ねぇ、綾斗‥……

随分前から俺との時間は、もうとっくの昔にずれていたのかもしれないね。

全く、いつも俺を置いていくんだから

いつまでも楽しい時間は続くことはできないでも少しでも君ともっともっといたかった。


あの時君は、俺のものになってくれたはずだった。

なのに君は、あの笑顔を何処かに捨ててしまった、ここにあった俺だけのものになるはずの心でさえも何処かに隠して捨ててしまった…

俺と綾斗二人だけの世界ならどうなっても構わなかった君だけを愛し君だけに愛されたかった君の心が一瞬離れたとき怖くて怖くて嫌で離れたくなくて引き剥がそうとしてくる者を片っ端から消した。

それが今更全て間違っていたというのだろうか、いや正しかったはずだ。

君に愛されたかった。

君を心から本当に愛していた。

君を手にいれるならなんだってした。


結局……俺があげたものは、君にとって何になったのだろうか。


愛していた……本当に大好きだったんだ。

どうしても、君が欲しくて欲しくてたまらなかった。


最後に君の笑顔が見たかった。

俺が欲しかったのは‥……

俺が好きだったのは……

幸せな君の笑顔だったのに。

俺は……




9月中旬、紅葉が赤く色づ色づいた頃

綾斗が自殺した。

もう、耐えきれなかったのだろう……

俺がその事に気づく前、携帯に何度も連絡をいれたが全く返事がなかった、だから家に向かった。

綾斗の家の玄関は不用心にも開いており、急に胸騒ぎがし部屋に入ると買い物袋が投げ捨てられ中に入っていたものがそこら中に散らばり中身が飛び出してしまっていた物もあった。

聞き覚えのある、おばさんの悲痛な叫びが明かりの付いていない廊下を一層陰湿なものに仕上げた。

ゆっくりと、声のする方へ向かうと綾斗はベッドの上で変わり果てた姿になっていた。ベッドの中を赤く染め咲き乱れる姿はまるで、彼岸花のようにも見えた。

俺は、その光景に息を飲み持っていた鞄を床に落とし頬に何か冷たいものが伝う……

それは、一体なんだろうか。

病院に連絡しようにもこの状態じゃ、とっくに手遅れであっただろう。

死因の理由はきっと携帯の着信や迷惑メールネットの掲示板等々それらのストレスからの精神的なものだと断定され、女の時のように綾斗の葬式は学校全体がやってくれ校内ではあの時の噂が広がりざわついた。

綾斗の事は風見たく日々を通りすぎ皆から忘れ去られる存在となった。

誰も本当の事を知らないで過ごしている、両親も兄弟も誰も何も知らない……


俺だけが知っている本当の話。


いつしか季節は通りすぎまた君のいない季節を迎えた。

墓には、美しいほどに咲き誇った彼岸花の花が風に揺られ咲き乱れる。

嗚呼、綾斗……

君のいない季節は、なんでこんなにも冷たいんだろう。

君のいない世界で俺は、どうなるだろうか。

つまらないよ、君の笑顔が見たい。

君の声を聞きたい……


でもそれは、もうできなくなったしまったけど、綾斗にとっても俺にとっても嬉しいこともあるんだ、だから平気だよ。

綾斗もこれで、何も悲しまないで済むんだ、

何も見なくていい。

何も聞かなくていい。

騙されることも怯えることもない。

君に触れられなくなってしまっても俺は、ずっといつまでも君を想い続ける。

俺がいつまでもそばいいる、いつも君を覚えて君だけにこの愛を与え決して枯れないように注ぐよ。

どんなに歪に見てようがおかしいと否定されても俺は、この愛を永遠に君捧げる。




大好きだよ……綾斗……さようなら




綾斗の墓の前に咲く

彼岸花に口づけを落とした。






~ End~


Thanks for you…‼

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彼岸花に口づけを 雨音 @ameyuki15

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