第5話
嗚呼、醜い
嗚呼、汚い
嗚呼、邪魔だ
何もかもが消えてしまえばいい。
こんな世の中、俺と綾斗の二人だけでいいんだ。それ以外の者なんて皆皆皆消えてしまえばいい。
同性、異性、そんなものどうだっていい。
これは俺と綾斗の二人だけなんだから、他のものなんてなにもいらない、あの女だって綾斗には必要ない、今は俺がここにいるんだから、二度と手離すなんて馬鹿な真似するものか。
また綾斗に近づこうとする奴がいるなら、そいつもまた消してしまえばいい。
それよりも先に、もう綾斗は俺から離れるなんてしないはずだ、俺なしでどう生きればいいか、わからなくすればいい。
それを支配するのは恐怖でも痛みでもないひたすらに純粋な愛を与えればいい。
人が傷ついて悲しい時こそ、絶対欠かせない人物がいるはずだ、それを植え付け枯れかけの花に水を注いでやる、たったそれだけでいいんだ。
その存在になり愛を与える、こんなにも純粋で美しい愛の形はないだろう。
綾斗と話したその日の次の日も綾斗の家を訪ねた、誰も俺が女を売った張本人だと知らずに懸命に幼馴染みを励ます、友人想いの奴だと錯覚しているだろう、何らかの見返りがなければ普通ここまで人はタダではやらない、いい解釈をしてくれて有難い限りだ。
いつまでもあんな豚のために綾斗が悲しむ必要はない、俺だけを考えてくれればいいんだから。
綾斗の家に通ってからまだ少々休みがちだが事は進み綾斗は学校に行くようになり通常通りに生活をするようになった、少し違うとしたらが綾斗は前よりもずっと多く俺と過ごす事か増えていった。
気分が良くて仕方なかった。
愛しくて愛しくてたまらなかった、嗚呼なんて幸せなことだろう、まだ完全ではないがそれでも嬉しかった。
だが最近近くに居すぎたせいか俺と綾斗は周りから少々浮いている様子であったがそんなものもう気にならないくらい俺は、ますます綾斗だけを考え綾斗のみを愛し続けた。
少しでも変わった事があればすぐに対処した。
気に病まないように探りをいれ今まで抑え無駄にしてきた時間を俺は、取り返すように埋めていった。
だがそんな楽しい時間には必ずと言って良いほど邪魔をする奴らが現れる、やっと落ち着いた頃、綾斗のいる教室へ向かうとあの女が共にいた集団が綾斗を取り囲むようにして何やらもめているようだった。
今頃何を話しているのやら‥……
そんなの綾斗は何も知らない、綾斗はそんな女たちに申し訳なさそうな顔で謝罪の言葉を述べ俺の側にきた疲れた笑顔で笑って見せ俺たちはその場を後にした、帰り道綾斗の家の前まで見送りふと振り返るとなにか言いたそうな表情だったが俺は、あえて気づかないフリをしその日を終えた。
次の日綾斗は来なかった……
放課後気になって訪ねると上から物音が響き慌てて中に入ろうとするも鍵は閉まってとり幼い頃から念のため両親に互いの合鍵持たされていた、もし鍵穴が変わっていなければまだ使えるはずだ、そう思い合鍵を使い中へ入るとおばさんたちはおらず初日の時のようにまた叫び声が聞こえ綾斗の部屋へ向かった、扉越しから泣き声や誰かに訴えているそんな感じの言葉が聞こえ扉を開くと短い悲鳴をあげて壁に身を寄せていた。
あの女たちのせいで折角忘れてきたのにまた気に病んでいたらしい、きっとそれでこんなに暴れているのだろうやはり昨日のはそういう事か‥……
しゃがみこみ名を呼ぶと、壁からゆらりと動きすがり付くように身を投げ出し上を見上げ俺と目が合ったとき俺は、何も言わず綾斗の頬を撫でる、目元から頬にかけ赤く染まり熱を帯びていた。
優しく名を呼び続け落ち着かせ、それと同時に綾斗は胸を押し少しだけ距離をおくと綾斗は震えた声で俺に問いかけた。
自分はどうしたらいいんのだろうか
どうしたら、忘れられる
どうしたら、安心する
どうしたら、眠れる
どうしたら、許してもらえる
何もかもわからない
一人になればあいつの笑い声が聞こえ怖くて怖くて仕方ない。
いくら時間が過ぎようにも
もう、限界なのかもしれない。
そろそろいい頃合いだ。
「なぁ‥…俺どうしたらいい……
教えてくれよ……!」
泣きすがられ、その姿に体にゾクゾクと電流が流れたような感覚がした、許して欲しい、忘れたい、あんなクズの事なんか二度と思い出せないようにしてあげよう。
そうすれば綾斗は完全に俺のものになる。
俺は、綾斗と額を合わせる、綾斗は下を向き泣き続けたその涙を拭うように頬を撫で唇を重ねた。
無抵抗な形で受け入れているような感じもした、そんな事も判断できない程だというのだろうか。
それでもいい、やっとここまできた‥…
唇が離れた瞬間綾斗はやや驚いた表情で俺を見た、尽かさず俺は、綾斗を抱きしめ耳元でこう呟いた。
「俺が忘れさせてあげる‥……」
ずっと一緒‥……
ずっと‥……
絶対俺だけしか見られないようにしてあげる
だから、どうか俺のものになって。
綾斗は黙って俺の背に手を回し服を掴みあげ肩に顔をうずくめ小さくこう告げた。
「……お願い……」
その瞬間俺は、笑って綾斗をきつく抱きしめた。
事がうまくいっても、いつかはこれも枯れ果てる。
どんなに幸せでもその花は一瞬の一時……たった少しの時間しか生きれない。
虚しく馬鹿らしい言葉だ。
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