「言うまでもないじゃない」

@masunaga134

「言うまでもないじゃない」

 「言うまでもないじゃない」



『白王の世 四の年 鴉月の七』

 私の名前はサリア。先月の鷹月で十四歳になりました。

今日から日記を付けていこうと思っています。でも、今まで日記が長続きしたことなんてなかったの。去年の長休みの宿題だった日記だって、学校に向かう列車の中で全部書いたんだから。

 でも、今年の日記はうまくやれると思ってるわ。

今日の朝、ママとパパが畑に行ってる間、私は学園の宿題がうまくいかなくて(作文! 大っ嫌い! 数学や理科ならクラスの誰にも負けないのに!)コツを教えてもらうためにお婆ちゃんの家に行ったの。

 お婆ちゃんの家はうちの裏にあるから、ママとケンカした時にはよく行くのよ。でもお婆ちゃんの家の扉には鍵がかかってたわ。後でママに聞いたんだけど、お婆ちゃんはお友達と一緒にお出かけしてたらしいの。でもその時の私はそんな事知らなかったから、お婆ちゃんの庭の倉庫に行ってみたのよ。いつもとは逆で、そっちには鍵が閉まってなかったわ。だから私はお婆ちゃんがそこにいるんだと思って、中の階段を登ったわ。電気がついてたから、私は「お婆ちゃん、見つけた!」って言いながら階段の最後の一段を踏んだんだけど、そこには誰もいなくて――ついでに、電気もついてなかったの。じゃあなんで、私は電気がついてると思ってたか、って言うとね。そこには杖があったの。ママがよく読んでくれた絵本の中に出てくる、魔法使いが持ってるような。先っぽに私のこぶしくらいの赤い宝石がついてて、それが綺麗に光っているの。実はね、今、これを書いてる私の部屋のベッドの中に入ってるのよ。

 ちょっと書きすぎて、手が疲れちゃったわ。また明日。



『白王の世 四の年 鴉月の八』

 朝、お婆ちゃんが見た事もない速さで走ってるのが窓から見えて、そのすぐ後に玄関から「杖! 知らないかい!」ってママとパパに叫んでるのが聞こえたわ。でも、パパが「おかあさん、杖なんて使うほど足は悪くないだろう?」って言ったら、お婆ちゃんはしょんぼりと帰っていったわ。ごめんね、お婆ちゃん。でも、こんな素敵なものを返すわけにはいかないわ。

 昨日、日記を書いた後に、杖に向かってお祈りしたの。「作文をうまく書けるようにしてください」って。そしたらね、杖の宝石がもっと光って、私の手まで光り出したのよ。そして日記を書いて疲れたことなんて全然気にしないみたいに手がどんどん動いて、あっという間に出来上がっちゃったのよ。光った手は、作文を書き終わるまでそのままだったわ。今でも信じられない。でも、夢じゃなくて本当の事なのよ!(さっき「日記を書いても疲れないようにしてください」って頼んで、今も私の右手は光ってるんだもの!)

 出来上がった作文だって、とっても楽しかったわ。紀行文、って言うのかしら?どこかを旅してるお話だったわ。私の知らない、どこか違う国のお話!これを見せてやれば、いつも国語の時間にばっかり威張ってるベラも悔しがるに違いないわ!

 それでね、私、決めたことがあるの。この杖に名前を付けてあげるわ! 杖に名前を付けるなんて、ちょっとおかしいかしら。でも、この杖はただの杖じゃないわ。それに、常識なんて壊した方が楽しいもの!

 でも、まだ決まらないわ。もう少しじっくり考えて、この杖の事をよく知ったら、名付けるようにしましょう。



『鴉月の十一』

 決めたわ。この子の名前は、エレイヤ! それしかないわ。

 昨日の夜、「空を飛んでみたいわ!」って頼んだら、私の背中が光って、真っ赤な羽が生えてきたの!(鏡で見て初めて、自分の背中がどうなってるか気付いたわ!)もしそのまま落ちても大丈夫なように、1階の窓から庭にジャンプしてみたら――私の部屋の窓の前、つまり2階まで飛び上がってたのよ! そのまま右手に持った杖に、あっちに行きたい、こっちに行きたい、ってお願いしたら、その通りに動いてくれるの。(たまに、私がお願いするより前に動いてたこともあったわ。)でもとても疲れちゃったから、部屋に戻ったら、そのままベッドに倒れ込んで寝ちゃってたみたい。なにか夢を見た気がするけど、覚えてないわ。だって、現実の方がよっぽど夢みたいなんですもの!

 その後、パパの本棚の辞書を読んでて分かったんだけど、遠い国の言葉で「つばさ」を「エレ」って言うらしいわ。だから、私の名前から音をひとつ取って、つなげて、エレイヤ! 私、エレイヤとならきっと何だってできるわ。今は疲れちゃうからダメかもしれないけど、きっと雲の上まで飛んでいけるに違いないもの!



『鴉月の十二』

 今、人生で一番ワクワクしてるかもしれないわ!

 昨日の夜、お婆ちゃんの家に呼び出されて、「サリア、杖を持ってったのはアンタだね?」って聞かれたの。きっと、エレイヤと一緒に飛んでたのを見られてたのね。ウソをつくのは嫌いだから、正直に話したわ。そしたら、お婆ちゃんはほっとしたような顔をしたの。でも、すぐに怖い顔になって、長い長いお説教を受けたわ。そして、色んなことを聞かされたわ。

 今はみんな知らないことになってるけど、魔法を使ってる人がこの世界にはたくさんいた事ってこと。エレイヤは、大昔に私のご先祖様が使ってた魔法の杖だったってこと。そして、ここからが一番大事なことよ。エレイヤを使える私には魔法使いの才能があって、そんな子どもだけが行ける、魔法の学校があるってこと!

 お婆ちゃんは行くなって言ったわ。そんなわけの分からないところに行ったら、人生がめちゃくちゃになるし、あんたは畑の面倒も見なくちゃいけないんだからって。私、カチンと来たわ。お婆ちゃんが私を、ママとパパの後の畑の世話役にさせたがってるっていうのは知ってたの。でも、他にやりたい事を捨てさせてまで、自分の言うとおりにさせたがるなんて! そのまま家を飛び出してきちゃった。書いてて気付いたけど、「行くな」の返事をしてなかったわね。ま、いいわ。私、ウソはつきたくないもの。



『雀月の二』

 明日には、長休みが終わって新学期が始まるわ。でも、私にはもう関係のない事なのよ。今日の朝、パパにお願いして買ってもらった世界地図を広げて、エレイヤに「魔法学校」っていうのがどこにあるか、聞いてみたの。そしたらすぐに分かったわ。私の家から国を七つ向こうに行った先、海の上!

 パパとママとお婆ちゃんへの手紙は書き終えたわ。きっと三人とも、明日の朝に私がいなくてびっくりするわね。きっと泣いちゃうわ。私だって、手紙を書いてる時に泣きそうになったんだもの。だけど、私はエレイヤと一緒に、行ったこともない所に行きたい。今の私には、それが全てなのよ。



『雀月の四』

 昨日はとても疲れました。エレイヤの魔法も、私と同じで疲れ知らずってわけじゃないみたい。魔法を使い過ぎると宝石の輝きがなくなって、そのうち何もできなくなっちゃう。今日は線路の上を歩いてたんだけど、このままじゃ何年もかかるって気が付いたから、エレイヤに「もっと早く走れるようにして!」って頼んだのよ。でも、真っ暗になる頃にはエレイヤも私もヘトヘトになっちゃって、一歩も動けなくなっちゃった。そこで通りすがりの猟師さんに助けられてなかったら、夜行列車に轢かれてたかもしれないわ。それから、エレイヤは私の助けをしてはくれるけど、何かものを作ることはできないみたいなの。お金を作ってってお願いしても、何も作ってくれなかったわ。

 でもね、エレイヤったらすごいのよ。昨日だけで、私の国を越えて、お隣の国ってまで来たんだから。今は猟師さんの手助けをエレイヤと一緒にやって、何日か休憩させてもらおうと思っています。私がウサギを捕まえて戻ってきた時の猟師さんったら、目が飛び出るかと思ったほど驚いてたわ!



『雀月の十五』

 猟師さんのお手伝いがすごくうまくいったから、泊めてもらうだけじゃなくてお金まで貰っちゃった! 私とエレイヤが捕まえた中で一番大きいのは子どものシカだったわ。さすが私! さすがエレイヤね! でも、そろそろ猟師さんの家からもお別れね。明日出発するってことを伝えたら、すごく熱心に止めてくれたわ。この時期の山道は悪い人が多いとか、熊も出るかもしれないとかね。でも、私とエレイヤなら大人よりも早く走れるのだもの、何からだって逃げられるわ!



『十六』

 〈日付のみ書かれている〉



『雌牛月の一』

 逃げ切れたわ。猟師さんは、良い人じゃなかった。エレイヤが魔法を使えるってことが分かってたのね。

 昨日、寝てる間にエレイヤを取られて、気付いたら私は縄でしばられたまま、荷馬車の中にいたわ。猟師さんは私が起きたと分かると、エレイヤの使い方を聞いてきたわ。私しかエレイヤの力を借りることができない、っていうのは本当だったのね。でも、私は出来る気がしたから叫んだの。「エレイヤ、助けて!」って。そうしたら、エレイヤは猟師さんの手からすべり落ちて、私を縛っていた縄を杖の先で裂きながら、私の手の中に戻ってきてくれたわ。私がまた頼む前に体は軽くなってて、荷馬車の扉を蹴り破ると、地面に落っこちたわ。(まだこの時の痛みが胸に残ってるの。)

それからは、ずっと走ったわ。そこがどこだったか分からなかったから、時々エレイヤに方角を聞いたりもしたわ。途中、エレイヤの宝石が暗くなってしまった頃、猟師さんみたいな声が聞こえたから、草むらの中で隠れてたわ。自分を落ち着かせるために日記を書こうとしたけど、そのまま眠ってしまったみたい。目を覚まして、エレイヤが隣にいることを確かめて、やっと一息つけたわ。エレイヤと離ればなれになることがこんなに恐ろしいだなんて。明日から寝る時は、抱きしめたまま寝ることにするわ。

 それからエレイヤと一緒に近くの村に来て、教会に泊めさせてもらってるわ。お金がなくても泊めてくれるなんて、教会ってなんて優しいのかしら!



『雌牛月の三』

 教会にいればご飯を貰えて、いくらでも泊めてくれるそうだけど、その代わりにお仕事をしなくちゃいけないらしいの。私は昨日の夜からみんなのためにご飯を作ってるわ。家で料理なんてしたことなかったけど、マルチェッサっていうお姉さんが丁寧に教えてくれるの。マルチェッサはこの町で生まれて、子どもの時から教会で働いてるんですって。マルチェッサの言う通りにすれば、私にだってとってもおいしい料理が作れるのよ。私もいつか、マルチェッサみたいに立派なレディになりたいわ!

 そうそう、マルチェッサがいない時、こっそりエレイヤに「料理をうまく作れるようにして」って頼んでみたの。でもね、作れたのは真っ黒焦げのパンだけ! エレイヤにも苦手なことがあるみたい!



『雌牛月の十五』

 いつまでも教会にいるわけにはいかないけど、そろそろ雪が降る季節だし、ここはとっても居心地がいいの。マルチェッサはいつでも優しいし、教会の人も良くしてくれるわ。

 マルチェッサは料理をするだけじゃなくて、村の外の森へ狩りに行ったりもするみたいなの。今日のご飯はマルチェッサが狩ってきたウサギのシチュー! 楽しみだわ。



『鯱月の四』

 今日、マルチェッサが大けがをして帰ってきたわ。森の中に谷みたいになってるところがあって、積もった雪を踏んで滑り落ちてしまったんですって。少し見たけど、血が止まらなくて、何度も包帯を巻きなおしてたわ。お医者さんまで、もう歩けなくなるかもなんておっしゃってたの。可哀相なマルチェッサ。私たちでなんとかできないかしら、ねぇ、エレイヤ?



『千鳥月の五』

 今日は最高の日よ!

 お見舞いに行った時にマルチェッサがとっても辛そうだったから、もう耐えきれなくて、右手にマルチェッサの手を、左手にエレイヤを握って、頼んだの。「エレイヤ、マルチェッサを治してあげて!」って。できるかは分からなかったわ。エレイヤにそんな頼みごとをしたことは今までなかったから。でもね、そうしたらマルチェッサがいきなり目を見開いて、何もなかったみたいに起き上がったの! 真っ赤で見てられなかった傷跡は何もなかったみたいに消えてたわ。マルチェッサも、周りにいた牧師さんや修道士の人たちも、何が起こったか分からなくてびっくりしてたわ。皆の前でエレイヤの力を使っちゃった。でも、こうするべきだったのよ!



『千鳥月の六』

 今日は、私の人生で一番忘れられない日になりそう。あったことだけ書こうと思うわ。

 神父さまが、私が朝食に行こうとする前に立ってこう言ったの。「魔女よ、ここからすみやかに去りなさい」って。いつも料理をおいしそうに食べてた優しい顔なんてどこにもないどころか、まるで怖がってるみたいな目で私を見ていたわ。言い返そうと思ったわ。でも、神父さまの目を見ていたら、それが間違っているような気がしたの。だから、そのまま部屋に戻って荷物を纏めて、町の出口まで歩いていったわ。きっとそれしかなかったのよ。でもね、いざ町から外に踏み出そうとしたら、体が動かなかったわ。なんでかって言うとね、マルチェッサが私の服を掴んでたから!

 マルチェッサはここまで走ってきたみたいで、息を切らしてぜえぜえ言ってたわ。病み上がりなのに無茶なことするんだから。マルチェッサは泣いてたわ。私のせいでサリアが追い出された、って。でも、私は何も後悔していなかったわ。悪い魔女扱いされて追い出されるって分かってても、私はエレイヤに頼んでいたに違いないもの。それから立ったまま、色んな話をしたわ。私が魔法学校に向けて旅をしてるってことも、エレイヤのことも話して、この国の大人たちは魔女や魔法使いってものをひどく怖がってるってことを聞いたわ。またいつか、この町に戻ってきてほしいってことも。

 別れ際に、お金の入った袋を貰ったわ。断ったけど、「受け取ってくれないならまた死にかけるわよ!」って脅されちゃって。(あそこまで怖い顔をしたマルチェッサは初めて見たわ。)だから受け取って、またね、って言って別れたわ。ありがとう、マルチェッサ。きっと立派な魔法使いになったら、また会いましょうね、マルチェッサ!




〈日付が書かれていない〉

 なんてことなの。もう、私は旅を続けることができないかもしれない。でも、書かないといけないわ。マルチェッサ、あなたのためにも。

 昨日の夕方、新しい町に入った途端、門の影から頭を殴りつけられたの。普段の私だったらそのまま倒れてたのかもしれないけど、エレイヤが守ってくれたみたい。体が光って、私の足が地面を蹴ると村の外に戻ってたわ。何が起きたかその時は分からなかったけど、大人の男たちが村から武器を持って出てきたのを見て、私はとにかく逃げなきゃいけないって思ったの。そこからは、来た道を私とエレイヤの全速力で走ったわ。その中で、魔女は殺さなければならないとか、神へのぼうとくしゃを殺せとかっていう言葉が聞こえて来たわ。数か月前に悪い猟師に追われた時よりもずっと怖かった。町からずっと離れた森の中で、私は頭を落ち着かせて考えたの。この国は、マルチェッサや私が思ってたよりずっと魔女を嫌っているみたい。きっと、この前までいた町からの知らせが私の足よりも速くあの町に届いたのね。私を、殺すために。あの時の神父さまの目が思い返されるわ。あの目は私が見たことのない目だった。

 夜の草むらの中にかがんだまま、私は寝ようと思ったわ。でも胸の中で、何か嫌な感じがしたの。それを振り払おうと思って、でもどうしてもできなくて、その理由を考えたわ。この国の人達が、私の事を嫌がってる。でも、それじゃあ。私から魔法をかけられたマルチェッサはどうなるのかって、思い付いてしまったの。

 エレイヤに無理を言って、羽を生やして森から空に出たわ。普段、エレイヤも私も疲れやすいからあまり使ってなかったけど、その時はそうしなければならないと思ったの。それで、一目でわかったわ。普段夜は寝静まってるはずのあの町の中心から、火と煙が登っていた。

 頭が恐怖でぐらぐらと揺れて、体を止めることができなくて、空から町へと飛び込んでいったわ。火を取り囲んでいたのは数人だった。その中に、あの神父さまがいたのも覚えてるわ。空から落ちてきた私を見て、彼らは逃げて行ったわ。中には、許してくれ、って叫んでる人もいた。でも、その時はそんな事は何も気にならなかったの。だって、見間違いようがなかった。いつも彼女の着ていたシックなワンピース、長い黒髪が、火の中で揺れるのが見えたわ。私、エレイヤに「火を消して」って叫んだ気がする。そうしたら、空から雫が落ちてきて、あっという間に雨になったの。ざあざあ降りになると火は消えて、中には炭と、焼け焦げて色も分からなくなった彼女の服、そしてマルチェッサがいた。

 マルチェッサ、私を許して。あなたに呪われながら生き続けるなんてできない。お願い、マルチェッサ。この愚かで幼いサリアを許してください。



『千鳥月の十』

 昨日と今日で、エレイヤと一緒に棺を作ったわ。木を一本、まるごと使った棺。色は肌色のままだけど、きっとこのままの方が素敵だわ。

 ねぇ、マルチェッサ。私は魔法使いになったら、皆を幸せにしてあげられると思ってた。ママもパパも畑作業なんてしなくて済むし、お婆ちゃんを若返らせてあげることもできるかもって。でも、それで皆が本当の笑顔になれるのかしら。私がみんなにしてあげることなんて、本当に小さなことだけなのかもしれないし、逆に不幸にすることだってあるんだわ。たとえそれが、エレイヤと一緒でも。


 だったら、私のこの旅に、何か意味があるのかしら?


 私は、魔法学校を見つけるわ。そうしたら、その答えが出るかもしれない。さようなら、マルチェッサ。あなたの棺は、町から少し離れた森の、二股に大きく分かれた木の下に埋めることにするわ。また会いに来る。さようなら。







〈最後のページまで全てが破り取られている。〉








『白王の世 八の年 鴉月の五』

 かつて魔法学校だった場所に着いた。港に住む人々の言葉は本当だった。かつて繁栄した魔法使いの聖地であるその島は、ある王国との戦争に巻き込まれて戦場となり、やがて滅びた、と。その島には今や何もない。瓦礫と、それらを覆う木々くらいだろうか。

 気が付けば、倉庫でエレイヤに会ったあの日からもう四年が経とうとしている。しかし、遠くまで来たものだ。ママとパパに会いたい。お婆ちゃんに会いたい。マルチェッサ、あなたにも会いたい。だから、ここが私の旅の終わりの地。あとは、来た道を戻るだけ。

 しかし、その前にひとつだけすることがある。かつて、二股の木の下で、あの時の私が今の私へと投げかけた問いに答えなければならない。

 いいわ、愚かで幼いサリア。今も愚かで、あなたより少しだけ年を取ったサリアが答えてあげる。でも、本当にばかよね、私ったら。だって――――


 そんな事、言うまでもないじゃない。

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