とある世界で君を見た

僕は今日、自殺を決意した。

いつもは優柔不断で決断できないのに、

今回の自殺という決断に、時間はかからなかった。

死ぬと決まればやることはもうテンプレみたいなものだろう、

とりあえず死ぬまえに、全財産使おうとおもった。どうせもう使うこともない

財布には「札なかったんだった」

通帳をもってATMで全部お金を引き出した、

全部といっても大学1年目の僕にたいした貯蓄はなく、、

パチンコに行ってすぐに全部使いきってしまった。ほんとうに死ぬまえすら幸せになれないのか……

時刻は夕方に差し掛かっていた。

そろそろ、「行くか」

と、ここで気がついた、どうやって死のうか……

いろいろ方法はあるからな、

やっぱり、飛び降りかな

そう思い、あるきだした、そしておもむろに歩いていると、ある高層マンションのまえに立っていた。

20階建ての高層マンション、以前僕が暮らしていたマンションだ。

始まりの場所だし、終わりには丁度良いかもしれない。


エレベータは使わず、階段を使って屋上まで登った、息は切れ、汗で服がびしょびしょだ。空がだいぶ近く感じる、

空を見渡すと、太陽が沈み出していた、

いろいろな事に敏感になっている気がするのは気のせいだろうか、いや、きっと死ぬまえはみんなこうなのだろう。

いろいろな事に何かを感じ、想う。

僕にこんな沢山の感情がまだ残っていたのだと…そう思った。


そろそろ行こう、

もうこの世に未練はない、


屋上の柵を乗り越え、柵の向こう側へ、踏み外せばすぐに地上まで真っ逆さまだ、何だか笑える、こんな簡単に死ねるのかと、


手足震え、目眩がする。


「ありがとう、この世界っ、ありがとう!」

声は震えてしまってる。

少し落ち着いて

「さようなら」

そして僕は一歩を踏み出した


僕はマンションの屋上から飛び降りた

飛びおりる前は足が震え、手が震え、冷や汗が留まらなかった。

飛び降りた瞬間から震えは消え、景色がスローモーションに見えた、そして恐ろしいスピードで頭の中に記憶、思い出が蘇ってきた。

これが走馬灯ってやつか。


沢山の記憶が思い起こされたが、未練にはならなかった。


地上がもう近くまで迫っていた

それを直感的に感じたのか、何故か僕は泣いていた、

なんでないてんだよ、もうどーでもよかったはずだろ?どーでも、どーでもいい、

なのに何故、どうしようもなく…

僕の中の感情が叫ぶのだ

"死にたくない"と。

自然と感情は、僕の口から溢れでていた。

見開いた目からは感情の水が流れ出てとまらない、ビルのガラスに映る僕はどんな顔をしているんだろう……




西暦2020年-12/12(月)-PM5:41-晴れ

この日僕、こと神崎千尋は自らの命を絶った。あの世界になんの未練もなく死ねた…はずだった。

世界に未練が残ってしまった、1つだけ、

コンクリートに直撃する前、ビルのガラスの反射に僕は映っていた、それで終わればよかったのだ。

僕しか、映らないはずなのだ。だけど、あれは確かに映った、白いドレスに、美しい美貌をもつ少女が、

僕と鏡合わせのように……

そして少女と目が合う。


「お前は誰だ?」


そう、少女に聞いていた。

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いつか、いつの日か、きっと まったり @chuni

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