第7話 旅は道連れ余は情け
彼はそこそこの魔法も使えるようで、急に亜空間?
を出現させたと思えば、中から簡易的な建物を出現させた。
「簡易テントだ。近くの町に行くにしても、ちょっと遠い。もうすぐで夜になるから、ここで野宿になる」
建物の中に案内されると、外から見たらプレハブみたいなシンプルさなのに、屋内は全く違う。何が違うって、広さが外観の5倍は広い。
間取りでいうと3DKといったところだろうか。既に家具一式が備え付けられているため、すぐにでも寛げそうな状態だ。
「外に隠蔽の魔法陣を張ってくる」
ダイニング付近で興味深く調度品などを見ていたところ、ウォルフさんから声がかかってきた。
「何か手伝うことはありますか?」
「問題ない。ここで待っていて欲しい」
わかりました。と返事をしたものの、先に寛いでしまうのは良くないし、どうしようか。
ーーーーーー
「さて、結界を張るか」
魔道具の一種である、この簡易テントは持運びに優れたものであるが、魔物や動物、その他外敵を遠ざけたり、テントの存在を隠したりする機能はない。
もちろん、魔法が使うことができれは何も問題はない。
「魔物か?」
結界の展開は一瞬で終わせられたが、どうやらこちらに向かってきている魔物がいるらしい。気配でもわかるくらい、その魔物らはどうやら緋化【ひか】状態に陥っているらしい。緋化とはこの世界のすべての生物がなりえる現象だ。症状としては<暴走><理性の欠落>となる。
原因はわからないが、なかなか厄介で、この状態を回復させるためには、男性では「神子」、女性では「巫女」と呼ばれる者たちのみである。この状態を回復・抑制するために必要な力であるが、この世界で神子・巫女たちは滅多なことでは生まれないため、殆どが異世界から知能あるものを召喚するという方法をとっている。
もちろん、すべての者が神子や巫女になるわけではない。しかし、召喚された者は神子の能力を持っていなくとも、強力な能力を持っており、それらの呼称として異世界の非召喚者を「勇者」と呼んでいる。
なぜ、彼らが強力な能力を持って召喚されたかは理由は簡単である。文明が進み死の危険が少ない《上位世界》からの者たちだからである。
つまり、<安全と安らぎ>を<対価>に力を得ている。つまり、元の世界で、より安寧に生きる事ができたとされる者ほど能力は強力だ。
それを、この人間たちはわからず喜び、彼らを説伏せ使いつぶす。
そして、生活に安定が見られると、今度は多種族に対して牙を向く愚かな生物だ。
地を踏みしめる音が背後から聞こえる。息を潜めるが吐息を漏らす音、草木をかき分ける音、奴らからよく感じる気配だ。ようやく魔物が来たようだ。
4足歩行型の魔物が4体か。やはり目が真っ赤に染まっている。これが緋化の特徴である。緋化状態を完全に止めるには、物理的に潰してしまうのが手っ取り早い。
「プラズム・メテオ」
電流から取り出したエネルギーを重力に変換するものであるが、欠点は、跡形がほぼ残らないことだろうか。素材調達や食糧確保としては使えない魔法である。
どうやら、今の魔物以外は近くに外敵となりえるものはいないと言えそうだ。
今日は初めて会った彼に、まずはこの世界のことを最低限教えなければならないな。
知人が野たれ死んだらつまらない。そうだろう?
異世界もの 書いてみたけど、なんかうまくいかない プリンセスたけし @kokiyama
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