反転
山川はる
反転
帰り道にノートが落ちていた。
道端に落ちてるのに新品同様きれいで、ちょっと気持ち悪い。まるで今、ノートを覆っていたビニールを剥いだみたいだ。買ってすぐ、ここに捨てたのかな。なんで?不思議だ。
妙に興味が沸いて、持ち帰った。
家に着いてよくよく見ると、表紙には凹凸があって、立体的なギンガムチェック柄になっていた。表紙と裏表紙は、黒。
ページをパラパラめくる。
罫線のある、いたって普通のノートだった。
何も書いてない。
さっきは気持ち悪いと思ったけど、学校で使えそうだし、いいもの拾ったんじゃないか。見た目だっておしゃれだし。
そう思って最後のページをめくると、文字が書いてあった。
『反転』
…?
久しぶりに聞いたな、この言葉。日常生活じゃあんまり使わない。
どういう意味だ?よく分からない。
少し気味悪さが蘇ってしまって、しばらくの間ノートは放っておいた。捨てる気にもならなかったから、なんとなく机の上に置きっぱなし。
数日後。翌日の持ち物を準備していると、理科のノートが終わっていたことに気づいた。時刻は夜12時。
あー。もっと早く気づけばよかった。
ここは田舎だから、最寄りのコンビニへ行くにも30分はかかる。仕方ない、先生に言ってしのぐか。
その時、あのノートを思い出した。
この際、なんでもいいや。
僕は黒色のノートを開いた。最後のページには相変わらず『反転』の文字。
反転 山川はる @Marinbau
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