第六話【書き換わる世界③】
ハッと目覚め、身体を起こそうとしたがそれは叶わなかった。左右の腕がうまく動かない。それぞれの手首が鎖でベッド上部の柵とつながれている。電気もついておらず、カーテンで外の光も遮られているのか、部屋の中は暗い。
「おはよう、セイジくん」
声のした方に顔を向けると、黒髪ロングの美少女が誠二のお腹の上にまたがり、こちらをのぞき込んでいた。
「ソヨギさん?」
学校一の才女にして常に凜々しい生徒会長、桂ソヨギ。そんな彼女がとろんとした目で熱い視線を送ってくる。
「やっと二人きりになれたわね」
「これはどういうことですか」
誠二は自身の手首に巻きつけられた鎖を見て言った。
「何が?」
「だから、これ外してくださいよ!」
「イヤ。こうでもしないとセイジくんは他の女とどこかへ行っちゃうじゃない」
「どこへも行きませんから」
「ホント?」
誠二はコクコクと必死にうなずいて、思いを伝える。
「しかたないなぁ、もう」
ソヨギがそう言った直後、誠二の両手首が黒い炎に包まれた。
「ひいっ!」
誠二の悲鳴も虚しく、炎は消えない。さっきまで彼を固く縛りつけていた鎖をドロドロに溶かしていく。
「大丈夫。この炎はわたしが燃やそうと思ったものを燃やすだけだから。まぁ逆に言えば――」
ソヨギは瞳孔が開ききったうつろな目で、じっと誠二の瞳をのぞき込んで冷ややかに笑う。
「いつでもセイジくんの手足を焼き切ってあげられるんだけど」
「……そんな!」
誠二は恐怖で叫ぶが、ソヨギはまるでそれが聞こえていないかのようにぶつぶつとしゃべり続ける。
「でも安心して。そしたら頭のてっぺんから足の付け根まで? とにかくセイジくんのこと可愛がってあげるから。上から下まで全部。セイジくんはもうわたしのそばから離れられなくなる……。フフフフフフフフフ」
暗闇の中で哄笑とともに何かを決断したらしいソヨギ。その瞬間からブワッと黒い炎が勢いを増す。
「アチッ!」
さっきまで何も感じなかったのに急に炎の温度が伝わってきて、誠二は戦慄する。このままじゃホントに焼かれちまう。
「そうはさせないわ!」
バチィッ! 突如ガラス窓が砕け散りカーテンが真っ黒に焦げ吹き飛んだ。今は夕方らしい。沈みかけの西日が部屋の中を照らす。その光を受けて輝く金髪ツインテールをたなびかせて颯爽と現れた美少女。釘ノ宮リナ。彼女はソヨギを鋭く睨めつけて、前髪からビリビリと電撃をほとばしらせる。
「属性能力『
「何か気に入らないことがあると、すぐ人に雷撃を喰らわせるあなたに言われたくないわね」
負けじと言い返すソヨギ。リナも顔を真っ赤にして髪を逆立てる。
「何ですって~! と・に・か・く! 私の目が黒いうちはアンタの好きにさせないんだから!」
「ふん、セイジくんに振られた負け犬の分際でよくもそんな口が叩けたものね!」
「ふ、振られてなんかないわよ! だいたい、こ、告白とかそういうのだってまだ……!」
「そう。じゃ、あなたはセイジくんのなんなの?」
「そ、それはクラスメイトで」
「単なるクラスメイトのくせにわたしたちの邪魔をするの?」
「……! そっちこそどういう関係なのよ!?」
「そうね、こういう関係かしら」
ソヨギは不敵に笑うと、すぐそばで呆けている誠二の顔を引き寄せるとキスをした。
「んぐっ」
「ききききき、キ!? あ゛、あ゛、あ゛、アンタ何してんのよー!!」
顔をゆでだこのように真っ赤に染めたリナが全身に雷をまとう。
「お子さまには刺激が強すぎたかしら?」
直後。
バヂィッッ! ゴッッ!
リナが発した特大の雷撃と迎え撃ったソヨギの巨大な漆黒の炎が衝突し、爆発によってあたりに暴風が吹き荒れる。
当然ながら誠二もそれに巻き込まれ、空高く吹き飛ばされた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます