空から可愛い女の子がふってきたらラブコメはじまる前に○○でしょwww?

夏鎖芽羽

空から可愛い女の子がふってきたらラブコメはじまる前に○○でしょwww?

 空からセーラー服を着たとびっきり可愛い女の子が降ってきた。

 名前もまだ知らない彼女は膨れ上がったスカートを両手で押さえると、頬を少し赤くしながらこう言った。


「ず、ずっと前から好きでした!」


「あっ、いや、そういうのいいんで」


 僕は断った。

<了>


×   ×   ×   ×   ×   ×   ×   ×   ×


 普通の男子高校生なら人生で一度はフィクションでよく見る「空からふってきた系美少女」が現れないかどうか期待すると思う。でもそんなことなかなか起こりえないから、結論としては


「神様、はやく美少女とラブコメさせろください」


 になる。


 そんなわけで退屈な学校も終わり、美少女も友達もおらず、部活もバイトもない僕は家に向かってそんなくだらない思考を繰り返していた。


 でも、たまには神様だって奇跡を起こす。


「あっ」


 空から美少女がふってきた。

 たまたま見上げた空から人影が見えた。


 世界がスローモーションになる。


 どんな女子高校生よりも、アイドルよりも、モデルよりも、可愛いとわかる女の子だった。僕と同じ高校の制服を着ているから多分同じ学校の生徒だ。可愛い。まぎれもなく美少女だ。こんなラブコメ漫画でもありえない展開が




 ぐちゃ




 可愛い可愛い女の子――美少女はそのまま勢いよく地面に衝突して死んだ。


 勢いよくコンクリートの地面に叩きつけられた美少女の小さな体はまるで水風船のようにぱんと弾け、赤い水とねとねとネバネバした液体を辺りに巻き散らかした。アンモニア臭も同時に周囲に広がり、この世のものとは思えない醜悪な香りが鼻腔を襲う。

 うつ伏せ状態で落ちてきた美少女の体もまた見るに堪えないものだった。背中に肋骨が突き抜け、リュックサックを背負っているように見える。中身はどうやらつぶれた心臓と肺だ。右足は外側に九十度、左足は内側に七十度ほど折れ曲がり、左腕は脱臼したようでぶらぶら中身のないソーセージのようになり、右腕はちぎれてどこかに飛んで行った。顔は下向きに潰れているからわからないが、割れた頭からねちょねちょとした液体が零れ落ちている。


 そんな即死状態の美少女の顔が突然ぐるりと回転してぐちゃぐちゃの顔で、僕の目を捉えた。


「よかったね。よかったね。美少女が空から落ちてきたよ。これからラブコメが始まるね。私のパンチラを見たことにちょっと怒って、あなたは慌てて謝って逃げて、翌日私は転校生としてあなたのクラスで一緒に学校生活を送ることになる。それではじめはパンツを見られたことを根に持っている私があなたのことを嫌っているんだけど、体育の授業の時に怪我した私をあなたが優しく保健室に連れて行ってくれて恋に落ちるの。そこから元々あなたのことが大好きだったクラスの女の子とあなたの取り合いになる。なんで友達も彼女いないあなたのことを好きな人がいるんだろうね。うけるw はははっw それでそれで、その女の子は私があなたを奪う前に告白して、あなたは返事を保留するの。悩むあなたを私がデートに誘って、一緒に映画見て、美味しいお昼ご飯食べて、ウインドウショッピングして、おしゃれなカフェで休憩して、そろそろ帰らないとなんてあなたは言って、でもまだ帰りたくない私はあなたに睡眠薬を強引に飲ませてホテルに直行。そこで既成事実を作って証拠写真をあなたのことが大好きで大好きで仕方ない女の子に突き付けるの。その女の子はどんな顔するんだろう……考えるだけでゾクゾクするね。はははっw 女の子はあなたに詰め寄って文句をいうけど、私に骨抜きにされたあなたはその女の子とは付き合えないって言って、女の子は泣きながらあなたの元を去るの。ざまぁwww それでねそれでね、晴れてつき合うことになった私たちはいっつも一緒なの。クラスの席はもちろん隣同士だし、授業でペアを組むことになっても私と、お昼ご飯を食べるときも、帰るときも一緒。それで休日にはたっくさんデートするの。美術館とか水族館とか言ったり、春はお花見、夏は海、秋は紅葉、冬はスキーをするの。それでそれで初めてが忘れられないあなたは私の体を獣みたいに求めるの。最初はホテルとかお互いの家で親がいないときにするんだけど、次第に性欲を抑えきれなくなったあなたはどこでもどこでもやりたがるの。私の綺麗な綺麗な体を舐めまして、欲情して欲情して、私を私だけを求め続けるの。私による私のための私だけの彼氏になるの。でもねでもね、あるときあなたはあなたのことを諦め切れないあの女の子と一緒に寝るの。一回だけ、一回だけしたらそれで諦めるから。そういって女の子に押し切られちゃうの。でも、あなたのことを深く深く愛している私はそれをちゃんと見ていて、翌日その女の子が恨めしくて恨めしくて、その女の子を拉致監禁誘拐して廃工場の鉄製の柱にくくりつけるの。それでそれで、その女の子に見せつけるように何度も何度もあなたとするの。泣きながら見たくない見たくないって叫ぶ女の子の前で何回もするの。大爆笑だねwwwwwwwwwww それでね、その後は疲れ切って眠ってしまったあなたを起こさないように耳栓をして、女の子のピーをピーするの。女の子は悲鳴をあげるんだけど許してあげない。許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない。女の子のピーをピーしてピーピーピーなの。すごいねwww 笑っちゃうねwww 許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない! はぁはぁ……ごめんね。とりみだしたね。それでね、ピーされた女の子のことは放っておいて、あなたを私の家に連れていくの。翌朝目覚めたあなたとまたしてして、やってやって、やりまくってやりまくって、幸せな日々を送るの。幸せ幸せ。幸せすぎて死んじゃう死んじゃう死んじゃう死んじゃう……!」


「あっ、もう死んでたね」


×   ×   ×   ×   ×   ×   ×   ×   ×   ×


 三日後、空からセーラー服を着たとびっきり可愛い女の子が降ってきた。

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