第10話

爆音と共に壁が砕かれた刹那、朽樹、エル、ゼン、フレイヤは部屋の隅に四散すると同時に魔法防御壁を展開して戦闘態勢のまま煙幕に包まれている砕かれた壁に目を向けていた。


「おいおい、マジかよ…上位魔法では傷一つ付ける事が出来ないほど強力な防御魔法で出来ているこっち(警察)の結界を破壊して入ってくるとは…。」警戒心をあらわにし全身に雷魔法を纏ってゼンは驚きを露にしながら言った。


「少なくとも上位魔法の中でも超位魔法に近い強さの魔法を使う者じゃから宗一郎っ!。気を抜く出ないぞ!」エルはそう言いながら両腕に6個の青白く光り輝く魔法陣を展開し瞬時に放てるように両腕を煙幕に包まれている方向に向けていた。


「はい!」と朽樹はエルに短く返事をして禁忌の鎧【タケミカヅチ】をすぐさま召喚した。朽樹の全身を包み込む様に白銀に光り輝く巨大な鎧武者が現れた。


「警察の結界に攻撃したら重罪なのにぶっ壊してくるなんて良い度胸してるじゃないの!」フレイヤは吐き捨てるように言うと右手で眼鏡をクイッと少し上げ両腕を突き出すと両腕に6個の深紅に鈍く輝く魔法陣が現れた。


砕かれた壁に視界を遮るようにかかっていた煙幕が少しづつはれてくると徐々に結界に侵入してきた者の姿が見えてきた。


現れた姿をみて朽樹、エル、ゼン、フレイヤ達は言葉を失った。


ゼンとほぼ同じくらいの身長ではち切れんばかりの強靭な筋肉に覆われた巨体がまぶしく金色に光り輝きながら姿を現した。顔は恍惚の表情を浮かべた金色に輝く牛の顔、頭には巨大な2本の黄金の角が重厚な槍の様に生えていた。


ボディビルのポーズで両腕を頭の後ろで組み、腰を捻りながら腹筋と脚を強調するポーズの【アブドミナル&サイ】のポーズをとり、何故か鼻息は荒く涎が垂れていて全身が金色に輝きながらもよく見ると体中から血が噴き出している状態で立っていた。


「き、金色に光っておるが……獣人族のミノタウロスか…?」とエルは言いながら現れた金色に光っている異様なミノタウロスを見て更に警戒心を強めた。


「だな…まぁ…結界を破る程の力は獣人族の中で強さが中クラス程のミノタウロスとしてはかなり凄いが………すでに満身創痍だな…何故金色に光っているかはわからんが…。」ゼンは言うと前傾姿勢で身を低くし何時でも瞬時に金色に光り現れた謎のミノタウロスを捕獲出来るように身構えた。


「なぜ金色なのかとかなぜ嬉しそうなのかとかいろいろとツッコミたい事が山程あるけど警察の結界に手を出す時点で逮捕よ。エル!ゼン!宗一郎!」とフレイヤは言うと朽樹、エル、ゼンと一緒に慎重に距離を縮めながら謎のミノタウロスに近づいて行った。


朽樹はミノタウロスに注意を払いながらパーソナルシステムから【牢獄の箱】を取り出すと【タケミカヅチ】の白銀に光り輝く巨大な手が【アブドミナル&サイ】のポーズのまま動かない金色に輝くミノタウロスを鷲掴みにして捕えようと向かった…その時、動かなかったミノタウロスが突然、体を少し捻るように動かし両腕を胸元まで下して胸を強調する様に腕を組みボディビルのポーズ【サイドチェスト】のポーズで雄叫びを上げた。


「うぉぉぉぉぉwwwwwwwww!!!!私の愛を受け取ってくれたのねぇぇぇぇwwwwwwww!!!!嬉しいわ!!マイダーリンwwwwwwww!!!!」涙を流し涎を振り撒きながら金色に輝いていた体が虹色に輝きを変化させてミノタウロスは歓喜に震えながら叫んだ。顔を上下左右乱れ振り撒いている為、大量の涙と涎、噴き出している血が辺り一面に飛び散っていた。


「「「「 ?!?!?!?!?!?!?!?! 」」」」朽樹、エル、ゼン、フレイヤ達は驚愕を露にしていると突然ギターの爆音が鳴り響いた。


「キヱーーー!!!!何が愛だぁぁぁ!!!いきなり『私の愛を受け取ってwwww!!』などと叫びながら俺に角をぶっ刺しやがってぇぇ!!!ふざけんじゃねぇぇぇwwwwwヴッヴォォォア˝ァッ!!!イ˝エ˝ェェヒヤッ!!!ハーーーーーー!!!」と霊体の魔族は叫びながら四股を踏むように足を開きギターを掻き鳴らし胸から上を円を横に描くように頭をグルグルと回した。


「嬉しいわwww!!ダーリンwwww!!!」


「うるせぇww!!ふざけんじゃねェwww!!!ヒヤッ!!!ハーーーーーー!!!!」


「愛してるわwww!!ダーリンwww!!!」


「死ねww!!地獄に落ちろwwww!!!ヴッヴォォォア˝ァッwwwwwwwwww!!!」


虹色に流動的に輝くミノタウロス…恍惚の表情で顔を乱れ振り回し雄叫びの様に叫ぶ度に歓喜の涙と噴き出している血と大量の涎が辺り一面に飛び散る。


一方、股間に天狗のお面を付けている霊体の魔族は唇型のギターを歪ませ弾きながらまるで扇風機を天井に向けたまま羽根を回転させたように頭を回転させ巨大な雄孔雀が羽を広げた様な髪の毛がまるで高速に回転している回転扉の様にグルグルと部屋一面を覆うように回りながらデスボイスが響き渡っていた。


「「「「 ……………。 」」」」朽樹、エル、ゼン、フレイヤ達は白目になりながら言葉を失っていた…。


「抱いてwww!!ダーリンwww!!!」ミノタウロスがボディビルのポーズ【サイドチェスト】のポーズのまま器用につま先立ちで足の指のみを動かしながら霊体の魔族の方に涙と血と涎を飛び散らせ叫びながら向かっていった。


「ふざけんじゃねぇwwww!!!てめぇ『雄』だろうがぁwwww!!!AHAAAAAAAA~!!!!」


「「「「 おっ!、雄だとぉwwwwwww!!!! 」」」」朽樹、エル、ゼン、フレイヤ達は驚きのあまり叫ぶと霊体の魔族が放った衝撃的な発言で我に返りすぐさまエルは異様な姿で移動しているミノタウロスに向かって氷魔法を放った。


エルの広げた手のひらに腕から集約された青白く輝く一つの魔法陣がドッチボール程の大きさの青白く光る球体に変わり凄まじい速さでミノタウロスの気持ち悪い動きをしている足首に命中した。青白く光る球体が瞬時に足首を床に固定する様に氷塊が生成されミノタウロスの動きを止めた。


「あぁwwww!!!あなたぁwwwwww!!」エルの放った氷魔法によって動きを止められ霊体の魔族に近づけなくなったミノタウロスは涎をまき散らし悲痛な叫び声を上げた。


「誰がぁwwww!!あなただぁwwwwwww!!ふざけんじゃねぇぇぇぇwwwwwww!!!!」さらに激しく頭を回転させながら霊体の魔族は叫んだ。


「……そ、宗一郎や…すまぬが早く捕まえておくれ…こ、これ以上関わっていると…ず、頭痛が……。」こめかみを抑えながら少しふらついているエルが言うと直ぐに朽樹は【タケミカヅチ】の巨大な腕を動かしまるで雑草をむしり取るかのようにミノタウロスを捕まえようとした瞬間、ミノタウロスは氷塊で床と一緒に固まっている足首を起点に地面スレスレまで瞬時に体を反らした。【タケミカヅチ】の腕がミノタウロスを捕らえられず通り過ぎた瞬間に反らした体を凄まじい勢いで元に戻る反動を利用してまるで速射砲から発射した弾丸の様に氷塊で引っ付いている床を地面から剥がし音速の勢いで霊体の魔族に向かって飛んで行った。


「うっ!、うそぉwwwww!!!」捕えきれず虹色に光る槍の様にカッ飛んで行くミノタウロスをみて朽樹は驚きを口にした。


「これがぁwww!愛のぉw力よぉwwwwwww!!!!!」ミノタウロスはそう叫ぶと氷塊で足の裏に引っ付いて一緒に飛んでいる剥がれた床を足首に渾身の力を込めて蹴った。氷塊で足の裏に引っ付いて一緒にカッ飛んでいる地面から剥がれた床が氷塊と共に砕かれるとまるでジャンプした様に更に加速した。


一瞬空気の壁が裂け音速を超えたスピードで霊体の魔族に向かってカッ飛んで行くと霊体の魔族をすり抜け後ろの壁を貫通した。爆音と共に衝撃波が部屋を砕いて行いくと霊体の魔族の本体である死体が衝撃波に巻き込まれてぼろ雑巾の様に転がった。


「キヱーーー!!!!俺の体がぁぁぁぁwwwwwwwww!!!!」ほとんどミンチ状態になっている自分の死体を見て霊体の魔族は断末魔の叫び声を上げた。


「に、肉片が僅かに残っていれば十分に召喚魔法は保ちますが…これは…なんと言いますか…お気の毒で…。」朽樹は哀れみを浮かべながら言った。


「精神的にかなり堪えそうじゃな…。」エルはそう言うとまるで苦い飲み物を吐くような顔をした。


「ここまでの死体蹴りはなかなか見れないわね…。」フレイヤは顔を引きつらせながら言った。


「まあ…なんだ…もう死んでるから気にするな。」ゼンは霊体の魔族を励ますように言ったが全然フォローになっていないとエルとフレイヤに突っ込まれていた。


ミノタウロスが貫通して行った壁は衝撃波のせいで壁一面が綺麗さっぱり無くなっていた。ミノタウロスが飛んで行った方向にある三階建ての建物が爆音と共に崩れ去ると金色に輝く光の柱が三本現れたのだった。




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魔法世界でも刑事の仕事は大変です @akiki

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