第9話

瞬間移動で現れた場所は広さは約10畳ほどある部屋で4人が現れた場所は部屋の入口付近だった。コンクリートの床とその奥には一段上がる形で4畳程の広さの畳が敷いてある作りになっていた。


コンクリートの床部分の壁側にはそこで化粧直しや服装のチェックが出来るような横長の大きな鏡にカウンターの様な机、その上にはドライヤーや化粧品等の小物がたくさん置いてありパイプ椅子が4脚ほどあった。


奥の畳部分には激しく損傷した丸形の机に血みどろの座布団等が散乱していた。死体は畳部分の奥の壁近くにまるで血だまりの絨毯の上に寝そべるような形で上向きで寝ていてその死体を保護するように2名の警察官が辺りを警戒しながら立っていた。フレイヤはその警察官に軽く挨拶するとフレイヤ達に現場を交代して2名の警察官は入口から出て行った。


「ここが現場ですか?」と朽樹はあたりを見渡しながら言った。


「ん?。どうかしたのか?。」とゼンは死体を調べながら朽樹に言った。


「あ、いえ…被害者が大学の教授だと聞いたものですからてっきり大学の研究室かと…。」


「ここはライブハウスの控室よ。殺された教授は趣味が音楽だったらしく頻繁に此処に来ていたらしいわ。」フレイヤはそう言うと朽樹に召喚魔法で被害者を呼び出すように言った。


朽樹は死体の傍に向かい召喚魔法を使用した。死体を包み込むように無数の文字がドーム状に赤色に光り表れた文字が死体が見えなくなるほど埋め尽すと粉々にはじけ飛ぶように消えていった。


死体からゆったりと半透明の人の姿が現れると朽樹、エル、ゼン、フレイヤの4人は自分の目を疑った。


死体から現れた霊体の姿は霊体の身長を超える程の長い金髪をまるで雄のクジャクが羽を広げた姿の様に立たせたヘヤースタイルをしていて髪のてっぺんは部屋の天井を余裕で突き抜けていた。


顔はまるで新車のワックスが掛かった車体の様にピッカピカのテッカテカのパールホワイトの化粧をしていた。目元やら頬、口等に炎が揺らいでいるペイントが施してあり。両肩には上向きで巨大なドラゴンの爪が5本ついている黒革の上下一対のライダースーツと着ていた。ライダースーツにはあらゆる所にチェーンが無数に付いていて股間部分にはなぜか天狗のお面が強烈な存在感を放ちながら付いていた。


その異様な姿をした霊体がゆっくりと立ち上がり肩から掛けていた巨大な唇の形をしたギターを構え弾くとアンプが無いのに突然、大爆音のギターの音が朽樹、エル、ゼン、フレイヤの頭の中に響き渡った。


予想外の大爆音に一瞬気を失いかけた朽樹、エル、ゼン、フレイヤだったが何とか持ちこたえ驚愕を露にしながら霊体に目を向けた。


霊体で現れた魔族が突然、光速の勢いでブリッジすると頭を軸にものすごい勢いで回転しだし腹の上に乗せた状態になっているギターからディストーションを加えた歪のある高音が鳴り響いた。


「ヴッヴォォォア˝ァッ!!!イ˝エ˝ェェヒヤッ!!!ハーーーーーー!!!!ウ˝ボゥッ!ウ˝ボゥッ!ウ˝ボゥッ!ウ˝ボゥッ!ウ˝ボゥッ!ウ˝ボゥッ!ウ˝ボゥッ!ウ˝ボゥッ!ウ˝ボゥッ!」


絶叫にも似たデスボイスとスクリームの重低音と超高音の入り混じった声を上げながら霊体の魔族は高速で回転しているとそのままの勢いで回転しながら立ち上がり朽樹、エル、ゼン、フレイヤ達の方に顔を向けた。


「誰˝だ!AHAAAAAAAA~!!!!お˝前˝達˝は˝!AHAAAAAA~!!!俺˝に˝な˝ん˝の˝用˝だ˝!!AHAAAAA~!!う˝ぇ˝ぃ˝っヤッハーーーキヱーーー!!!!」霊体の魔族は目を血走らせながら舌なめずりをしてデスボイスで言った。


「私達は…」


「キヱーーーアッ!!!ウォッホッ!!ウォッホッ!!ウォッホッ!!」


「警察の者…」


「ウォッホッ!!ウォッホッ!!ウォッホッ!!ウォッホッ!!」


「でして…」


「ウォッホッ!!ウォッホッ!!ウォッホッ!!ウォッホッ!!」


「「「「………。」」」」


朽樹が霊体の魔族に説明しようとすると間髪入れずに霊体の魔族はシャウトしながらヘッドバンギングを始めたのを目にして朽樹、エル、ゼン、フレイヤ達は言葉を失った。


霊体の魔族のヘッドバンギングの動きで孔雀の羽の様な髪がうちわを扇ぐ動きの様に朽樹、エル、ゼン、フレイヤ達の体を何度もすり抜けた。


「ウォッホッ!!ウォッホッ!!ウォッホッ!!ウォッホッ!!」


「ウォッホッ!!ウォッホッ!!ウォッホッ!!ウォッホッ!!」


霊体の魔族はヘッドバンギングの動きから突然、朽樹、エル、ゼン、フレイヤ達に向かってまるで地面に突き刺さるかのように頭部のみの一点倒立で逆立ちをした。


「警˝察˝だ˝と˝ーーー!!!そ˝う˝い˝え˝ば˝俺˝は˝弥˝撒˝(ライブ)に˝来˝て˝い˝た˝獣˝人˝族˝の˝ミ˝ノ˝タ˝ウ˝ロ˝ス˝が˝い˝き˝な˝り˝楽˝屋˝に˝入˝っ˝て˝き˝て˝胸˝を˝貫˝か˝れ˝た˝。ヴォ˝ォ˝ォ˝ーー!!俺˝は˝死˝ん˝だ˝の˝か˝ー!ギャヴィエアオォーー!!!!」と霊体の魔族は超速デスボイスを言ったが朽樹、エル、ゼン、フレイヤ達は何を言っているのかさっぱり分からないと言ったポカーンとした表情を浮かべて霊体の魔族を見ていた。


霊体の魔族は少しづつ速度を落としながら同じ言葉を言うと15、16回程でやっと朽樹、エル、ゼン、フレイヤ達は霊体の魔族が言っていることをなんとなく理解した。


「………。」霊体の魔族は無言のままその場で四つん這いになり項垂れていた。


「ようするにじゃ、この被害者の魔族は自分のライブに来ていた獣人族のミノタウロスに楽屋で着替えていた所を襲われた…でどうじゃ?」


「多分あってると思うわ。」と言いながらフレイヤは頷いた。


「ワシも何と無くそんな感じだと思う。」ゼンは心底どうでも言い雰囲気で答えた。


「私は『ミノタウロス』と『俺は死んだのかー!』しか分からなかったです…すみません。」朽樹はエルの手助けがあまり出来なかったので少し残念そうに言った。


「大丈夫じゃ。犯人はライブに来ていたミノタウロスなのは確かじゃからのぅ~OK!じゃ!。」エルは朽樹に向かってサムズアップをしながら笑顔で答えた。


「シコ・チェイじゃあ無いから一安心ね…。あとはライブ情報から割り出してある程度絞れそうだから殺人犯を指名手配をして……。」とフレイヤが言いかけた時、突然入口付近の部屋の壁が爆音と共に砕けた。






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