第8話

フレイヤは全員が自分の周りに居る事を確認して自分のパーソナルシステムをオープンスペース表示にして一枚の画像を全員に見せた。


フレイヤのイヤリング型のパーソナルシステムが光りだしテーブルの上に写真を置く様に空中に画像が映し出された。


その画像には一人の魔族と思われる男性の死体が映し出されていた。


朽樹以外の全員が画像の死体をみて緊張感をあわらにし緊迫した空気が部屋を包んだ。


いぶかしげな表情でエルは画像の死体をじっくりと確認した後、フレイヤの顔を見た。


「殺されたのは召喚魔法を使える奴か?」


「違うわ…だけど召喚魔法を研究している大学の教授よ。」とフレイヤはエルを見ながらそう言うとエルはそっと目を瞑り天井を見る様に顔を上げて少し考えた。


「予告状は?」エルは見上げたまま言うとフレイヤは首を横に振りながら無いと答えた。


エルはもう一度映し出されている画像を釘居る様に見た。


「【 奴 】の仕業だと言いたいのか?…ありえんな…死体の殺し方が似ているだけじゃ。」とエルは少しため息交じりにフレイヤに言った。


映し出された画像の死体はまるで丸いクッキーの型で生地をくり抜いた様に異様に綺麗に円柱状で心臓部だけがポッカリとくり抜かれている死体だった。


「わたしもそう思うわ…。」フレイヤもエルを見ながら肯定的な意見を言った。


「だが…万が一と言う可能性が消えないから此処に来たんだろ。」とゼンはフレイヤの気持ちを察したかのように死体の画像を見ながら言うとフレイヤは頷いた。


「仮に【 奴 】の仕業じゃとしたら完全に傷が癒えぬまま動いたに違いないじゃろうて今なら完璧に捕らえられるからの逆に好都合じゃ。今度こそ捕まえて見せるのじゃ!」と腕を組みながらフンス!と穴息を荒くしやる気を漲らせてエルは言った。


「そう…だから最速で犯人を捕らえたいから此処に来たのよ…。」とフレイヤは言うと金井は少し考える様に口髭を触りながら話し出した。


「一番手っ取り早いのは死んだ本人に聞くのが良いでしょうね…分かりました此方の3人には手伝ってほしい事件があったのですがフレイヤ刑事の事件を先に担当して頂く形でお願いします。」と金井は朽樹、ゼン、エルの三人に向かって言うと朽樹は緊張した面持ちではいと答えそれに続いてエル、ゼンも了解の意味も込めて頷いた。


金井の了承をもらいフレイヤは早速現場に行くように瞬間移動の魔法を発動したがゼン、エルは先に食事がしたいと言ったのでフレイヤは不満を口にしたがしぶしぶ了承して朽樹、ゼン、エル、フレイヤの4人で行先を変更してファーストフード店に行く事にした。


繁華街にある衣類や雑貨の店が居並ぶ5階建てビルの1階に構えるファーストフード店『トキョナルド』の入口に瞬間移動した。


日は暮れていたが一般的に夕食前の時間帯なので人通りは賑やかだがファーストフード店に疎らに人が出入りしていた。


フレイヤを先頭にエル、ゼン、朽樹の順に皆で店内に入ろうとした時、朽樹は少し元気のないエルに気付いた。


「どうしたんですか?、エルさん」と心配そうに朽樹はエルに言った。


「 宗一郎 の歓迎会もかねてゆっくりと食事をしたかったのじゃが…」とエルは少し肩を落としながら言うと隣に居たゼンはエルの肩をポンポンと優しく叩いた。


「まあ良いじゃねぇか。フレイヤの件が終わったら何時もの店でやれば。」とエルの顔を見ながらゼンはクイッとお酒を飲む仕草の様に口に手を当て言った。


「そうじゃな。それの方がゆっくりと出来るじゃろうから後でする方が良さそうじゃな。」エルはそう言って足早に皆でレジカウンターに向かった。


「エルさん、ゼンさん有難うございます!。お気持ちだけでも十分嬉しいので全然気にしないでください。」と朽樹は言うとエルは振り向いて満面の笑みで感謝を伝えた。


各々が注文を終えて商品を手に取り店の少し奥まった8人程座れるテーブル席に着いた。


朽樹、フレイヤ、エルの3人はオーソドックスなハンバーガーにポテトの中サイズ、ドリンクはアイスコーヒーをそれぞれ注文し、ゼンはオーソドックスなハンバーガーの2倍の量があるダブルバーガーを20個とポテトも中サイズの1.5倍ある大サイズを20個、ドリンクはコーラーの特大サイズ(1.2ℓ)1杯を注文していてゼンの大きな両手に持っている特大サイズのトレーの上にこぼれんばかりに乗っていた。


「エルさん、先ほど話に出てきた【 奴 】って一体…」とバーガーを食べながら朽樹は質問した。


エルは少し考えてフレイヤの方を見た。フレイヤもエルを見て了承の意味も込めて小さく頷くとエルは話し出した。


「そうじゃな…何から話せば良いかのう…まずは名前じゃな…【奴】の名前は シコ・チェイ 、魔族で吸血種じゃ。」とエルはハンバーガーを食べながら言った。


「シコ・チェイですか、吸血種と言う事はほぼ不死ですか…強敵ですね…得意な魔法とか特徴的なスキルなんかはあるのですか?。」と朽樹は頭の中で戦闘のシュミレーションをしながらエルに聞いた。


「うむ、魔族の中でも吸血種は長寿を生かして様々な魔法を極めた者が多く一般の知識として吸血種=魔法と言うイメージがあるのじゃが奴は魔法を使わんそれに固有スキルも持っておらん。」エルはアイスコーヒーを飲みながら朽樹に答えた。


「えっ!。本当ですか?!。魔法を使えないしスキルも無いなんて…じゃあ不死以外はあまり大した事は無いんじゃないですか?」と朽樹はエルの以外な答えに目を見開き驚きさらに質問した。


エルは食べていたバーガーをトレーに置き腕を組みながらしかめっ面した顔をして少し考えていた。フレイヤもアイスコーヒーにストローを指して飲みながらエルと同じようなしかめっ面をして少し考えていた。


ゼンは話の内容に関心が無い感じでトレーの上に山盛りに積まれているダブルバーガーをまるで小さいクッキーをつまんで口の中に放り込むように食べていた。


「それがのぅ~奴は自分の全ての魔力を肉体強化のみに使用しておってなその肉体を使った攻撃が厄介極まりないのじゃ…。」エルはそう言って組んでいた腕を解き自分のアイスコーヒーを取って挿してあるストローを使ってズズーッ!と勢いよく飲んた。


「魔族で肉体強化って…特殊過ぎますね。その攻撃ってどんな攻撃ですか?出来る限り詳しく知りたいのですが…」朽樹はエルの顔見ながら訪ねた瞬間、一度肩をビクンっと震わせて飲んでいたアイスコーヒーのストローを銜えたまま固まった様に動かなくなって冷や汗を掻きながら目を逸らした。


その様子を見た朽樹は訝し気な顔してすぐさまエルの隣に座っていたフレイヤの方に目を向けると目を向けた瞬間、フレイヤもまた同じ様に冷や汗を掻きながら目を逸らした。


「あの~…母さん?」と朽樹はフレイヤに言いながらテーブルに身を乗り出してフレイヤに顔を近づけると無言のままフレイヤは更に冷や汗を流しながら顔を隠す様に背けた。


暫く沈黙が続いた後、朽樹はこのままでは埒が明かないと思い座り直して今度は隣にいてるゼンに聞こうとしてゼンの方を見てみると山盛りに置いてあったバーガーとポテトを食べ終わりドリンクの特大サイズのコーラーを満足そうに飲んでいた。


「…そうだな…説明が難しいからな~まあ…聞くよりも実際に見た方が早いしシコ・チェイと戦う時で良いんじゃあないか?」とゼンは特大サイズのドリンクをテーブルに置いて腕を組みながら言った。


「え?、でも予備知識として聞くだけでも対応が全然違いますしそれに顔の特徴や姿も知っておいた方が良いと思うのですが…。」


「う~む…それはそうなんだが…すまんな。ワシもうまく説明が出来ん。それに奴は必ず俺達の前に姿を現すから探す必要も無いしな。」


「必ず現れるって…復讐か何かですか?」


「いや、奴は優秀な召喚魔法を使える者を自分の目的の為に探しておってな。宗一郎もワシが知る限り5本の指に入るくらいの腕があるからな…必ず奴はお前さんを攫いに来るはずだ。」


「えっ!!。私ですか!!だったら尚の事!知っておいた方が…」と朽樹は更に心配した様子でゼンを問い詰めようとしたがゼンは朽樹の話を遮るように大きな手で肩を鷲掴みにしながらバンバンと叩いた。


「まぁ、まぁ、良いじゃないか。それに言っても多分信じられないと思うからなっ!会って自分の目で確かめた方が良いぞ!」ゼンはガハハハッと笑いながら言うと朽樹の心配をよそに立ち上がり現場に向かおうを言うとフレイヤとエルも慌てて賛同して食べかけのポテトとコーヒーを手に取って立ち上がった。3人の姿を見て朽樹はため息をつき残りのポテトとコーヒーを持って立ち上がり朽樹、フレイヤ、エル、ゼンの4人は店を出て現場に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る