第7話

朽樹は直ぐに後ろを振り向くとそこには黒色のパンツスーツに身を包んだ金髪の女性が腕を組みながら立っていた。


人族で言う所の20代半ばの大人の女性の雰囲気を出していたが腰まである長いシルクの様な金髪に絶世の美幼女であるエルと同じくらい美しく異様なほど整っている顔立ちをしている。妖艶な紅の瞳を隠す様に黒縁の眼鏡を掛けていて赤く艶やかな口元から少し牙が見えていた。


「母さんっ!いっ!何時来たんですか!」とアワアワと少し取り乱しながら朽樹は突然現れた女性に言った。


突然現れた女性に気にもかけずにエルは更に朽樹に抱き着いていた。


「なんじゃ…何時から来ておったのじゃ、このビッチで泥棒猫の…こ・む・す・め…が。」とエルは【お・ば・さ・ま】と言う言葉に苛立ちを覚えてジト目で突然現れた女性に言い放つと朽樹の母親と呼ばれた突然現れた女性はあきらかに青筋を立てて仁王立で口元を引く付かせていた。


「ビッチは叔母様の方じゃあありませんかぁ~!私の・だ・ん・な(旦那)・に振られたエ・ル・お・ば・さ・ま!」朽樹の母親は腰に手を置いてエルに顔を近づけながら言うとエルは朽樹から抱き着くのを止めて朽樹の母親に青筋を立てながらさらに顔を近づけて行きお互いの鼻先が着きそうなくらいまで顔寄せていた。


「ほう…私にそんな口を叩く様になったとはのう…永久凍土に永遠に漬けられたそうじゃのう~♪」あきらかに憤怒の表情を堪えた笑みを見せながらエルは言った。


「あら♪あら♪、その前に獄炎の炎で焼き尽くしてあげましょうか?。お・ば・さ・ま♪」と朽樹の母親も憤怒の表情を堪えた笑みを見せながら言った。


エルと朽樹の母親を包む様にどす黒い魔力が空間を捻じ曲げながらにらみ合っていた。


その様子を見てあきらかに犬猿の仲の様な雰囲気を二人から感じ取り朽樹はゼンに近づき小声で二人の仲の事を聞こうとした。


「ゼ、ゼンさん。二人とも滅茶苦茶仲が悪そうなんですが…それと母さんとエルさんは親戚なんですか?。」いつの間にか後ろにある接客用の足つきソファーに座りながらせんべいを食べてくつろいでいるゼンに朽樹は聞いた。


「ん?…なんだフレイヤから聞いてなかったのか?。お前の母親であるフレイヤとエルは人族で言う所の~いとこ?と言うのかな…まあ近い血族になる…吸血族はもともと希少種族だからな…個体数が少ないからおのずと近い血族になるがな…それと二人の関係なんだが…その…簡単に言うとなあの二人はなお前の親父さんに一目惚れしてな…二人であれやこれやと親父さんに猛烈なアプローチを競う様にし合っていてな…その結果、お前の親父さんはお前の母親であるフレイヤを選んだんだがエルはどうしてもそのことに納得がいかずに親父さんが亡くなった今でもああやって喧嘩してるわけだ…。」とバリボリとせんべいと食べながらゼンはいつまでも言い争いをしている二人にほとほと呆れ果てている様に朽樹に言った。


「…そんな事があったんですね…。」とフレイヤとエルの罵詈雑言が続く中、二人の様子を伺いながら複雑な表情を浮かべて朽樹はつぶやいた。


「大体、宗矩 ( ムネノリ (朽樹の父親) )は私が先に好きになったんじゃぞ!。それを横から掠め取りおって!ルール違反じゃ!!!」とフレイヤの顔に指を差しながらエルはフレイヤに文句を言った。


「なによっ!ルール違反て!好きになるのって後とか先とか関係ないじゃない!エル姉より私の方が魅力的だったから私を選んだってことでしょ?…それに…その幼児体型じゃ~ね~…。」


とフレイヤは自分の体を強調する様なポーズを取って勝ち誇った顔をしながらエルに言うとエルは驚愕の表情を露にして自分に雷が落ちたような衝撃と共にその場に崩れ落ちた。


「ひ、酷いのじゃ…」と崩れ落ちながらプルプルと体を震わしながらエルは言うと朽樹はエルを庇う様にフレイヤとエルの間に入った。


「母さん!。今のは酷いですよ!エルさんに謝ってください!」と朽樹は言いながらフレイヤに詰め寄った。


「なっ!。そ、宗一郎には関係ないでしょ!、そこを退きなさい!」突然、息子がエルの味方になるような形になり少したじろぎながらフレイヤは言った。


「いいえ退きません!。今の言い方はちょっと酷いですよ母さん!、エルさんは十分魅力的な方です!それに父さんは決して外見で判断する人ではなかったはずなので父さんにも失礼ですよ!今のは!」とエルを背中に庇うようにフレイヤに詰め寄りながら朽樹が言っていると後ろに居たエルは一瞬目が光った様に見え、フレイヤに向かって悪魔の様な笑みを浮かべて勝ち誇った表情をしていた。


朽樹が後ろを振り向いてエルの様子を伺うと瞬時にエルは目を潤ませて朽樹の袖を引っ張りまるで寒さに打ち震えている子猫の様な姿で悲痛な表情を浮かべて朽樹を見つめていた。


「エルさんに謝ってください!。母さん!」と朽樹が振り向いてフレイヤの方を見て言うとエルは朽樹の背中越しにフレイヤに向かってこれ以上ない位の邪悪な笑みを浮かべながらフレイヤに挑発的な態度を見せていた。


「……」口いっぱいの苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべながらフレイヤは黙ったままエルを睨みつけていた。


「母さん!」と再度、朽樹がフレイヤに謝る様に言っていると朽樹の後ろでエルは声に出さずに「は・や・く~♪」と勝ち誇った笑みで口元を動かした。


「いやよっ!、なんで私が謝らないといけないのよ!。謝る為に来たんじゃないから!そ、そうよ!事件よっ!貴方達にやって欲しい事件よっ!。ゼン!、金井部長もこっちに来て!」と滅茶苦茶強引に話を逸らす様にフレイヤは言うと朽樹はため息を付いて諦め母親の変わりにエルに謝った。


後ろのソファーでせんべいを食べながら将棋を打っていたゼンと金井も将棋を中断してフレイヤの傍に集まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る