第5話 3年後の自分の姿を思い描く2

私たちの住んでいる場所は、鎌倉駅から江ノ電で2駅目の「由比ヶ浜」


夏は海水浴に来るお客さんで賑わう場所。


外装はレンガ造りでレトロな感じの3階建てのマンション。


私たちは3階の角部屋に住んでいる。


部屋の中は白い壁で清潔感に溢れている。


レトロな雰囲気ながらも、セキュリティはしっかりしている。


インテリアは、彼の趣味に合わせてシンプルなものが多い。


間取りは2LDK。


1部屋は寝室として使い、もう1部屋は、1つの部屋を間仕切りして、2人の書斎として使用している。




彼の仕事は、都内が多い。たまに自宅作業をする。


いつも起きる時間は、大体8時〜9時頃。ゆっくりめの朝である。


朝食を作り、彼を見送るのが私の日課である。




今日の朝食は和食にしてみた。


鮭の切り身を焼いて、味噌汁の具はじゃがいもとわかめ。


海苔と納豆と、シンプルなもの。


食事は大体私が作る。たまに彼のお弁当も作る。


今日はお弁当がいいと言われたので、作ってみた。


彼の好きな甘い卵焼きと鶏の唐揚げ、ポテトサラダ、ポテトをベーコンで巻いたやつ。


…ポテト系が多いなぁ。と思いつつ、お弁当に詰める。


顔を洗って戻って来た彼が、後ろから抱きつく形でお弁当を除く。


「ポテト多くね?」


を、笑われた。


この人とは、本当に意見が合うなぁ。と実感して、ニヤニヤしてしまう。


「何、ニヤついてんの?」


と、顔を覗いてきたと思ったら…


チュッ。と不意打ちに唇にキスを一つ落とした。


「!!」


私はビックリして身を引いてしまう。


「ごめん…可愛かったから、つい…ね」


と、赤ら顔で頬を掻く。


その仕草、台詞に私の胸はキュンと締め付けられる。


(年上だけど、なんて可愛い人なんだ…。破壊力がありすぎる…)




朝食や身支度を済ませた彼を玄関まで見送る。


「いってらっしゃい」


ニコっと笑うと、さっきの仕返しとばかりに、彼にキスをする。


彼は驚いた顔をしていたけど、少し顔を赤くしながら


「今日は早く帰るわ」


一言残して仕事へ向かっていった。


こんなほんわかした気分になれる毎日を過ごせて本当に幸せだ。




食器を片付けて、仕事の準備をする。


今、担当している仕事はファッション誌のコラム、小説を執筆中で、ドラマの脚本も同時に手がける。


いわゆる、売れっ子作家だ。


忙しい日々でも、毎日が充実している。


ベランダに出ると、そこからは綺麗に海が見える。


今日はとても天気がいい。


「あ。洗濯…」


仕事と彼のことで頭がいっぱいだったので、洗濯をするのを忘れていた。


ついでに布団も干そう。今夜はたぶん一緒に寝ることになると思うし。


お互いに子供が特別に欲しいとは思っていない。


授かれば良いよね。といつも話している。


新しい家族が増えれば、また私の仕事の幅も広がるだろう。


結婚式を終えて落ち着いたら、今度はマンションを買うと決めている。


海の見える素敵なマンションに住みたい。


今後の予定として、彼は有名タイトルのアニメの撮影監督をすることになっている。国民的に有名な某ロボットアニメだ。


アニメの制作が始まると、家に帰ってこれない日が続く。


けど、終わったら二人でハワイに旅行に行こうと約束をしている。


それがすごく楽しみだ。




私の口癖は「あー。幸せだなぁ」


気づくといつも言っている気がする。


そんな私の日課は、ほぼパソコンに向かって黙々と仕事をこなす。


パソコンは、MacBook Air。持ち運びできるので家の至るところで仕事が可能。


気分によっては、書斎ではなく、リビングやダイニング、ベランダなどで仕事をすることもある。


たまに、近所のカフェなどにいくこともある。


今日は天気が良いので、窓辺で仕事をすることにする。


お気に入りのコーヒーを淹れて、パソコンをテーブルに置き、電源を入れる。


まず、メールをチェックし、必要であれば、返信をしていく。


私がこの仕事をするきっかけになったのは、彼のおかげだったりする。


まだ、仕事仲間だった頃、私が当時所属していた会社に不満があり、今後の進路で悩んでいた時に、


「シナリオが書きたいなら、うちのスタジオに入れば?話をしてみるよ」


と誘ってくれだのが、今の仕事に繋がるきっかけになった。


それからは、彼のいるスタジオで、ライターとして修行するために、文芸制作という形で所属していた。


はじめは、アニメの脚本を書いていた。


そこから徐々に、実力や名前が知れ渡り、ソーシャルゲームのシナリオを頼まれたりと、瞬く間に環境が激変した。


そんな中で、アニメ制作会社のクライアントである出版社から、漫画の原作を書いてみないか?とお誘いを受けた。


私の長年の夢「漫画の原作者になる」という夢が叶った瞬間だった。


私は、できる限り、すべての仕事を引き受けた。


それからは、休みが全くないほど、ひたすらパソコンに向かって文章を書く日々が続いた。


その時期がなければ、今の私はいない。


最初にきっかけをくれた彼がいなければ、作家としての私は存在していない。


だから、彼にはすごく感謝しているし、一生をかけてでも、彼を支えていこうと決めている。


私の今の目標は、彼が監督を務める作品でシリーズ構成・脚本を担当すること。


それも、近々叶いそうな予感がする。




彼とは、「今後どういう作品を作っていきたいか」を話し合うことがある。


その時間が一番楽しいと感じる。本当に価値観が同じというのは素敵なことだ。




そんな忙しい仕事の合間に、アロマの勉強をすることが楽しみになっている。


昔からアロマに興味があったので、半年前から通信教育で勉強を始めた。


やはり、なかなか奥深い。


今度はアロマをテーマに作品を書く予定である。




鎌倉に引っ越してきて、最初は友達がいなかったけど、昔からの友人たちが遊びにきてくれたりして、寂しさは感じなかった。


最近では、仕事でよく通っているカフェの店員さんや常連さんと仲良くなった。


もともとが人見知りなので、仲良くなるには時間が掛かるけど、出会う方々は皆さん優しい。


私は本当に恵まれているなぁと心から感じる。




————————……




「ふぅ…」


思い描く理想を一気に書き上げた。




「これが…すべて叶うのか…」




書いていて、不可能ではないという、謎の自信と確信があった。




これは、叶う。




そう、確信していた。




書き終えたノートを何度も読み返し、ただただニヤニヤした。




(彼とのポテトのくだり…やばいな…)


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未来脚本 さくらわか @sakura280

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