スタンドアローンコンプレックス現象その1
表題のこれも、以前論じたゴーストと同様に、今後行うシナリオ論、コンテンツ論の理解に有用だと思いますので、ご紹介したいと思います。
ただし筆者はこれの正式な名前を存じ上げません。もし読者の中で正式名称、または別の呼び名をご存知の方がいらっしゃれば、ご教示願えればと思います。
カタルシスの回で少年は冒険ファンタジーが好きだ、少女は可愛いものが好きだと書きました。しかしそう言い切られるのは納得いかない人がいるでしょう。少年漫画が好きな女性だっているし、子供だからって大人向け(18禁という意味でなく)の漫画が好きだっていいじゃないかと。
ジェンダー意識が高まっている昨今では、ともすれば差別的だと批判されかねない主張です(それはそれで言葉狩りや言論の弾圧のような気がしますが)。
そこまで承知していて、なぜ筆者は言い切ったのかと言いますと、それはとある集団のうち、少年とカテゴライズされる者の定型、つまり統計学的な中央値を指したからです。この「少年」を筆者はスタンドアローンコンプレックス(現象)と呼んでいます。
語源は多くの方が推察されたと思いますがアニメ「攻殻機動隊 S.A.C.」からの引用です。
以下にあらすじを述べますので、読む場合はネタバレにご注意を。
作中では笑い男という電脳ハッカーが登場します。笑い男は電脳硬化症という病の治療法について不正を行った製薬会社対して義憤を覚え、いくつかのサイバーテロを起こします。
しかし笑い男が起こしたと思われたテロのうち、実際に本人が起こしたのはほんの数件であり、その他はいわゆる模倣犯の犯行でした。
この集団が「笑い男」というキャラクター性を、本人を必要とせず共有、体現することで「笑い男」という個が集団の中に現れてくる現象を作中ではスタンドアローンコンプレックスとしています。
「攻殻機動隊 S.A.C.」では「笑い男」という強烈な個の場合を指してスタンドアローンコンプレックス現象という言葉を使用していますが、筆者は定義を少し広げれば、統計学的中央値を指した場合にも使用できると考えています。
社会番組の中で「世論の間では内閣に対する不信感が募っています」とか「この食品偽装問題があったことで食品メーカーに対し、消費者は怒りの声を露わにしています」といった表現を聞いたことがあると思います。この世論とか消費者とは具体的に誰を指しているのでしょうか。誰のことでもないのです。
例えば後者の食品メーカーの例の場合、消費者集団の声を集め、それを平均化してみると何らかの意見が浮かび上がってくる。その意見を持った人がいると仮定された存在、それを「消費者」と呼んでいるのです。
ちなみに筆者が「少年」を平均値ではなく統計学的中央値だとしたのは、極端な意見によって集団の声が大きく影響を受けないようにするためです。平均値と中央値の違いについては、統計学の基礎を学んで頂ければ理解できるかと思います(リクエストあれば説明致します)。
次回は実際にスタンドアローンコンプレックス現象の考え方を、コンテンツ論に当てはめてみたいと思います。
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