スタンドアローンコンプレックス現象その2
引き続きスタンドアローンコンプレックス(SAC)現象を取り上げたいと思います。
今回はSACをコンテンツへ応用するメリット、例、リスクを紹介します。
集団をSACと見なすことで、個人差を無視して「少年」だったり「少女」だったり、あるいは「世論」や「消費者」を集団に見出すことができます。いわゆる「典型的な○○」を作り出すことができるのです。
ここで以前「定型化される物語」や「シナリオ論とはつまり定石」で語った王道の話に行き着きます。「典型的な○○」とはつまりキャラクターの王道を指した言葉なのです。
なので「典型的な○○」を物語で使用するメリットもシナリオ論の時と同様になります。
つまり、読者に理解を容易にさせ、カタルシスを得やすい(この場合は共感を得られやすい)キャラクターを作ることができるのです。
少し例を挙げてみたいと思います。現実に存在する人への批判にならないように、あえて極端な話をしますが、巨乳の人はおっとりとした性格をしている(巨乳=おっとりとした性格という等式が成り立つ)、メガネをかけているとインテリである、インド人やブラジル人は陽気である、◯◯国製の家電はトラブルが多い、といったものが挙げられます。今挙げた例は集団の中の小集団を扱いましたが、これは個人でも当てはまります。ある一発芸を持つ芸人さんのキャラが、◯◯というギャグの人、となるようにです。毎年発表されている流行語なんかも一例ですね。
キャラクター論側からのアプローチは別の回で行いたいと思います。
リスクとしては、母集団からのデータの精確な抽出が難しいことが挙げられます。
統計学的中央値たる「少年」を創り出そうとした場合、まず集団(例えば日本人)から少年に該当する人を集めてくる。そして集めてきた少年の共通性が高い項目を抽出する。これが行えれば何も言うことはありません。けれども実際には項目を無限個抽出することは不可能ですので、どうしても抽出者の恣意性が含まれた項目でしか抽出できません。また時間軸も考慮するとなると、(つまり普遍的な「少年」を作り出すためには)過去現在未来の少年を集めてくる必要があり、過去はともかく未来が含まれた時点で当て推量となってしまうわけです。
元ネタの攻殻機動隊SACでは、社会で起きる製薬会社に対する批判やテロ活動、電脳硬化症に対する賠償活動、といったものが「笑い男」と呼ばれ、実際にそう呼ばれていた人物が存在するにも関わらず、キャラだけが一人歩きをするという物語と読み解けるわけです。
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