キャラクター論:登場人物のロール

 ロールとは役割のことです。

 以前シナリオには王道、つまり定型が存在すると書きました。

 定型を分類するアプローチの1つとして、登場人物のロールによる分類が可能かもしれません。


 着想は戸塚たくす氏の漫画「ゼクレアトル〜神マンガ戦記〜」です。氏は作中で登場人物のロールを5つに分類していました。

 以下がその5つです。

・ヒーロー:物語の主人公。

・ヒロイン:主人公と強い絆で結ばれた存在。異性とは限らない。

・ライバル:ヒーローと正反対の性質を持つ。敵とは限らない。

・サポーター:ヒーローを助ける。

・トリックスター:物語をかき回す。


 ヒーローが男性名詞、ヒロインが女性名詞なのがジェンダー的に気になりますが、シナリオ論特有の言い回しということで理解してもらえればと思います(少女漫画のように女性のヒーロー、男性のヒロインもあり得る)。


 少年漫画、特にジャンプ漫画は定型化の傾向が強く、例として適切だと思います。

 ワンピースの場合、ヒーローは当然ルフィです。サポーターは麦わらの海賊団に当たるでしょう。ヒロインとライバルはそれぞれゲストキャラが務めています。アラバスタ編ならば、ヒロインはビビ、ライバルはクロコダイルとなります。

 トリックスターはシナリオ論の文法上における副詞のような存在で、必須ではありません。アラバスタ編で言えば、ロビンやアラバスタ王が該当するでしょうか。


 さてこのロールですが、物語を構成するのに最低限必要なものは、何なのでしょうか。つまりロールを最もシンプルにすると、どんなお話になるのでしょうか。

 筆者は3つだと思います。すなわちヒーロー、ヒロイン、ライバルです。


 主人公は物語を動かす機軸であり、物語にヒーローが不在なのはあり得ないと思います。カクヨムユーザーの中で主人公不在の作品をご存知の方がいれば、筆者の慧眼を開く絶好の機会になりますので、ぜひ教えていただきたいと思います。

 ライバルは一種のテーゼ的存在であり、主人公の目標、物語のゴールでもあります。起承転結が存在する物語の場合、これも必須だと思います。

 ただしライバル不在の作品はある種存在します。日常系と呼ばれるコンテンツ群がその一例です。これらは目的のない生活、いわゆる日常を扱った作品で、物語全体を通したゴールが非常に希薄です。

 日常系はテーゼが希薄な事を逆手に取った成功例で、ライバルの不在が肩肘を張らなくても読める空気感を生み出しています。癒し系ですね。

 ヒロインは取り扱いが非常に難しい存在です。ヒーローと絆で結ばれた存在とありましたが、その関係性は時代と共に大きく変遷しているように思えます。


 「ヒーローがライバルを倒し、ヒロインと結ばれる」


 これが筆者の考える、最もシンプルな物語だと思います。古事記にある、あの有名なヤマタノオロチ伝説も、この文法に則っていますね。


 ヒロインの立ち位置については、今後取り上げようと思っている「美少女」という存在を語る時に、改めて掘り下げたいと思います。

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