キャラクター論:アニマとゴースト

 村上裕一という方が著書「ゴーストの条件」の中でゴーストについて論じていました。

 これがなかなか難しい内容で、私自身も理解できたとはとても思えない状態なのですが、このゴーストというのはキャラクターを扱う上で重要な考え方だと思いますので、拙い文ですが紹介したいと思います。


 ゴーストという語源ですが、これは恐らく攻殻機動隊から来ていると思います。

 攻殻機動隊は多くの人によってその世界観が広げられたコンテンツ群なのですが、元は士郎正宗氏の漫画作品です。

 この漫画では、ゴーストの説明はそれほどなされてはいないのですが、おおよそ「AIが持たないヒトの精神階層」という意味で用いられています。

 後のアニメ化に際し、監督の押井守氏や神山健治氏によって解釈の拡大がなされ、全身義体(サイボーグ)の主人公が「自分は機械(AI)ではなく人間である」と信じる拠り所として、ゴーストという概念が使用されます。

 有名な台詞で「囁くのよ、私のゴーストが」というのがありますが、これは主人公自身が人間であることを主張する端的な表現ですね。


 村上裕一氏はこのゴーストという概念を攻殻機動隊の外、一般的なキャラクターにも適用し、その一般条件を導くことを試みたのではないでしょうか。

 氏は人形(キャラクター)は人の模倣であり、ゴーストは魂の模倣であるとしています。つまり攻殻機動隊での定義、「ゴーストを有することは人間であることの証明」に倣うと、コンテンツの中でヒトとして消費できるキャラクターは、ゴースト(魂)を有していることになります。


 またキャラクターがゴーストを担う必要条件として、データベースの出力先として感情と物語を十分に表現できる解像度を持つことを、氏は挙げられています。

 しょせん二次元の記号に過ぎないキャラクターを人間と同一視して消費する、換言すれば、泣いたり、ときめいたり、恨みを買ったりといった感情を移入してキャラクターと触れ合うには、それが分かる表情、そしてそのキャラクターが歩んできた人生が分かるだけの情報、この2つが必要だということだと思います。


 このキャラクターにゴーストを感じ、消費することができる発想、思想。これが以前の記事で書かせていただいたアニミズムに端を発するものだと思います。

 アニミズムの語源、「アニマ」はラテン語で「生命」「魂」という意味です。

 その意味では、十分条件的に「アニミズムとは無機質なものにゴーストを吹き込む信仰」と言うこともできるのかもしれません。


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