シナリオ論:定型化される物語
-あ、この話。前に読んだアレに似ている。
物語を数多く読まれてきた皆様なら、一度は思ったことがあるのではないでしょうか。これはその作品が何かをパクったからでもはなく(というかその場合を除いて)、それらが同じ雛形を利用して物語を創り出した結果、似たのだと推察されます。
例を一つ挙げましょう。
1.ゲストキャラが登場する
2.主人公達と絡んでキャラクター紹介をする
3.悪いやつが出てきて、そのゲストキャラを困らせる
4.主人公が出てきて悪いやつを懲らしめる
これがいわゆる勧善懲悪と呼ばれるお話の雛形です。テレビ番組で言うとアンパンマンとか、おとぎ話だと桃太郎あたりがこの雛形にはまるのではないでしょうか。
こういった、昔からよく使用されてきた雛形を利用した作品を王道と言います。
王道作品のメリット、すなわち人気の雛形を利用すると得られる利益は大きく2つあると筆者は考えています。
1つ目は読者に理解してもらいやすくなること。詳しい描写や丁寧な伏線がなくとも、読者に後の展開を察してもらうことができます。やや使い古された言葉ですが、いわゆるフラグと言われるものですね。
これにより、斜め読みをしている読者を置いてけぼりにせずに済んだり、また物語の流れ以外の部分に読者の理解力を注力させたりすることができます。
2つ目は面白くなりやすい(カタルシスを得やすい)物語になること。例えば勧善懲悪がおとぎ話や神話にも見られるということは、これが時代によって廃れることのない面白さを含んでいることを示唆しています。つまり時代や民族性に左右されない、人間の本質に近い部分でカタルシスを引き起こしているということ。
当然ですが、逆に王道を行くデメリットも存在します。
真っ先に思いつくのが、週刊少年ジャンプを読めば何となく分かるでしょうが、似たり寄ったりの話になりがたなこと。
王道を行こうとすると、過去の金字塔的作品とどうしても被ってしまう。これを超える面白さを出すのは容易な事ではない。
そのために王道を行く場合は、大筋は王道を行きつつも、細かい部分で「外す」必要があると言えます。
どこで王道を行き、どこで外しているか。これを念頭に置きながら作品を見ると、一見ワンパターンで退屈と思われていた作品も、楽しんで見ることができるかもしれません。
また創作をする方の場合、王道は非常に有用なツールとなり得ます。利用するかはさておき、数々の王道を知っておくことは重要です。著名なクリエイターの方が、口々にたくさんの作品に触れた方が良いというのは、まさにこれが理由であると思います。
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