日本人は無神論者なんじゃない。ただ節操がないだけだ

 前回の記事で、日本人のルーツの一つにアニミズム信仰があると書きました。これは多神教に分類され、キリスト、イスラムに代表される一神教は相対するものになります。


 結論を先に述べれば、日本人は神様を信じない、または信仰する宗教を持たない無神論者だと言うのはまったくの間違いで、ほとんどの人が宗教観を持つというのが作者の持論です。


 理由は二つ。

 一つ目は日本人が無神論者だという、海外の人の多くが一神教者であるということです。

 一神教の基本は、神は全知全能で唯一無二であるという考え方です。つまり神は二人以上存在しない。彼らにとって宗教とは、唯一の神を崇めることでした。リチャード・ドーキンスの「神は妄想である」によれば、ごく最近まで多神教という宗教観が存在するという認識自体が、欧米には存在しなかったそうです。

 まとめれば、日本人は多神教という、欧米の人にとって宗教と考えられてこなかった信仰を持っていたために無神論者だと思われていた、というのが理由の一つ目です。


 理由の二つ目、これが日本人が無神論者だと思われている最大の理由だと思うのですが、特定の宗教のみを信仰していない人が大勢いることだと思います。

 キリスト教を信仰している日本人はそれほど多くないと思います。それでもクリスマスにお祝いをする人、チャペルで挙式をする日本人は、キリスト教を信仰する日本人よりもはるかに多いのは一目瞭然です。

 家には仏壇があり、正月には神社に初詣に出かけ、子供の健康を祈り七五三を祝う。これらは元は宗教活動の一環であるはずですが、今は生活の節目の行事、俗っぽく言えばイベントとして消化されているのが現状です。


 この無節操にあらゆる宗教行事を楽しむ文化を、作者は否定しているわけではありません。むしろ歓迎すらしている。

 あらゆる宗教を無節操に嗜む民族。私達ほど宗教と上手く付き合えている民族は他にいないのではないでしょうか。悪く言えば、ただのお祭り騒ぎが好きな悪食でしかないのでしょうが。

 過去に日本では神仏習合ということを行ったことがあります。神仏習合とは簡単に言えば神道と仏教が衝突しないように、両方を同一視しようとした宗教観です。別の思想を排除せずに上手く折り合いをつけながら、良いところだけを自分達の生活に取り込んでいくのが日本人の特徴の一つなのかもしれません。

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