昨今、世界に存在する性別は生物学的な雄と雌では区別できないほどに膨れ上がっている。
グローバル化と多様化の推進によって人の性別も、その一途を辿っている。
ダイバーシティについて考えることが多い私にとっても、全ての性別を把握しているとは言い切れない。
特に、この世界で何が難しいか、それは認められつつあるという過程にある事実だ。だから人によってはBLや百合といったタグで小説を忌避することもあるだろう。
しかしこんな世界だからこそ、今この作品を多くの人に読んでほしいと私は思う。
Parched loveは恋愛を謳っている小説であるが、イメージ通りのキラキラした恋愛ドラマは描かれない。それは登場する多くのキャラクターたちがセクシャルマイノリティであることに起因する。
しかしそれはただゲイであるとかレズであるとか単純な話ではなく、ストレートかセクシャルマイノリティであるのか、自分の性の対象がどちらであるのか悩むキャラクターや、性愛に多くのトラウマを抱えたキャラクターなど、この世界の複雑さを個性あるキャラクターたちが上手く表現してくれている。
特に評価できるのはこのセクシャルマイノリティをSFに上手く落とし込めているということだ。ただのクローンではなく、男性の容姿に女性の性器がついていたり、女性の容姿に男性の性器がついていたりと、性同一性障害ではなく、なぜかセクシャルマイノリティとしてのクローンが誕生してしまったという事実が、この物語の大きな謎として作用している。
これがエンタメとしてセクシャルマイノリティを考えるに良いポイントとなっている。物語としても世界の問題に目を向けるきっかけとしても非常に面白い作品だといえよう。
一つ残念なのが、これが非常にweb小説的な文章であるということだ。ダッシュの多様であったり、地の文で定まらない第一人称や第三人称。このせいで、読んでいて、物語の全容を掴みにくくなってしまっている現状だ。
しかしそれを抜きにしても面白い作品であった。是非、この物語を色々な人に共有したい。
完結した際に星を三つにさせていただきます。