scene 6~10

【scene 6】

名前をつけたのは彼。

ペットショップで一目惚れしたのは私。

楽しかったことも、悲しかったことも、別れも君は私たちのすべての目撃者。

今も君を呼ぶと、あの笑顔を思い出す。

新しい恋人ができて、その人が君を呼ぶ時、私はどんな風に感じるんだろ。

思い出すのかな、あの笑顔を。/fin



【scene  7】

「俺と仕事とどっちが大事?」って聞かれた時、即答できなかった。

あとであなたは、あの時私が迷ったって言ったね。

違う。驚いたんだ。

そんなこと言うなんて。

そんなこと言わせたなんて。

そんな選択で迷わない。

でも私が迷ったとあなたが考えた時点で、

私たちは終わってたんだよ。/fin



【scene 8】

messageの下書を開いて読みなおす。

読みづらくないか、一人よがりじゃないか。

迷っている間に夜が明けた。

冒頭の挨拶をおはようございますに変えた。

こんばんは→おはようございます→こんにちは。

何度書き直しただろう。

そして出せないまま閉じる。Möbius。/fin



【scene 9】

あの日から同じ曲を何度も何度も繰り返し聴いていた。

こんなことじゃ前に進めない。

聴くのを止めて3日、謎の頭痛が続く。

いつもの薬も効かない。

ふと思って封印した曲を聴いた。

おさまってくる。

音楽の力が不思議なのか、私の体がおかしいのか。

古い古い一曲をきっと今夜も聴く。/fin



【scene 10】

大きな目を見開いている。

よっぽどショックだったんだね。

気持ちがすぐに表情にでる。

これ以上話すと倒れてしまうね。

誠実でいたい。だけど君を守りたい。

葛藤は続く。

一生懸命泣くのを我慢している小さな唇に触れる。

これは罪?心が揺れる。

軽い目眩を感じながら君を抱いた。/fin〈in 『CHERRY 』second memory15〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る