scene 11~15

【scene 11】

すべて知っているけれど、すべて知らないふりをする。

涙の理由もわかっているけれど。

小さな体であまりにも多くのことを抱え込んで、潰れかけているおまえに必要なものはたったひとつ。

どうしようもないもの。

今できることは愛しさを抑えること。

いつもの姿でそばにいること。/fin  〈in 『CHERRY』scene memory 40〉



【scene 12】

臆病にならずにドアを開けてごらん。

確かにめんどくさいし、邪魔になることもあるけど。新しい感覚がいっぱい味わえるよ。

温かさがシンクロする時のときめきや、

想いのキャッチボールが逸れた時の刹那さ。

ドアを開けてごらん。傷ついても。

思い出があることは幸せだと思うから。/fin



【scene 13】

怒ってたこととか、泣いてたことばっかり思い出す。

やっぱり楽しかったことは時間がたったら忘れてしまうくらいの、小さな小さなカケラだったのかもしれないね。

毎日少しづつ散らばっていた小さなカケラ。

ひとつひとつは思い出せないけど、

まとめたほんわか感は覚えてるから。/fin



【scene 14】

「待たないで待てば。出逢があっても彼の方がいいならそれでいいし」と後輩に言った。

昔、友達に言われた言葉。

時は流れる。待ちぼうけの時、後悔する。

期限があるならいいけど。

期限なく待たせたあげく、迎えに来なかったね。

ぽかんと浮かんでいる月が申し訳なさそうに見えた。/fin



【scene 15】

「初恋」と「初めての恋」は違う。

ときめきを覚えたものが初恋なら、

ときめきも辛さも、

自分の心の醜い部分も、刹那さも知って、

なお想うことができたものが初めての恋。

新しい自分の感情に戸惑いながらも、

愛しさを押さえられなかった人が

初めての恋の相手です。

では最後の恋は?/fin


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