第26話 命を継ぐ者
子鬼はふわりと降下しながら船の最下層までたどり着くと、
突然のその行動に皆が息を飲む中、子鬼はじっと
「あなた、何を……」
思いつめた顔でそう問いかける
『父上ノ、
「ど、どういうこと?」
そして不審げな顔で
「父上とか母上とか、一体どういうことですの?」
非難めいた視線を送りながら白雪がそう尋ねるのを
「ちょっと黙ってなさい白雪」
そう言う
その場にいる全員が、仮面の下から現れた子鬼の素顔に驚き、息を飲んだ。
子鬼は中性的な顔立ちで男児か女児かは判別がつきにくかったが、その顔は
『コレデ、オ別レ。母上……オ元気デ』
そう言うと子鬼は
「
その途端、
炭のように黒かった肌は血の気を取り戻して元来の色に戻り、背中の羽は見る見るうちに肌の中へと収まって消えた。
それはまるで
「
「ごふっ……かはっ!」
幾度も幾度もむせ返り、その度に動かなかった彼の体が揺れる。
それを見た全員が驚きと喜びをその顔に貼り付かせて声を上げる。
「きょ、
「
その顔に赤みが差し、生気が体に戻ってきた。
「
喜びを噛み締める
子鬼は見るからに弱々しく衰弱し、その場に倒れ込んで動かなくなる。
その姿を見た
「そ、そんな……しっかりして」
「わ、私たちを助けてくれてありがと……ごめんね」
自分を母と呼んでくれた子鬼。
子を持った経験などない自分がどうしてこれほどまでに子鬼の存在を愛しく、去っていくのを寂しく感じてしまうのかは分からなかった。
だが、今にして思えばあの苦しかった腹痛ですら、子鬼が産まれてくるために必要なことだったと思い、大切な事柄に感じられる。
母になるというのはこういうことなのだろうかと思いながらむせび泣く
ハッとして
彼女の手の握っていたのは横たわり目を閉じたままの
「
「よく……勝ったな。全部……見てたぞ」
再び命の
「私にこんな思いさせて、1人で戦わせて、挙句の果てに子供まで産ませるなんて……本来なら丸一日説教してやりたいところだけど……今日だけはこれで許してあげる」
そう言うと
その顔は苦難の果てにようやく我が家に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます