第25話 罪の重さ
「
両手両足を失ったヒミカは呪術を用いて宙を舞い、
「誰1人として生きては帰さぬっ!」
もはや悪鬼羅刹と化した銀髪妖狐のヒミカは、まだ妖魔としては幼い2人の少女に容赦なく襲い掛かった。
腰が抜けてその場にへたり込む
戦闘能力を持たない2人を守ろうと、
その後方に倒れている白雪は、ヒミカが吐き出した黒い霧がその全身にまとわりついて立ち上がることすら出来ない。
「きゃあああああっ!」
「な、南無阿弥陀仏ネッ!」
ルイランはせめて
両手を失ったヒミカはその牙をむき出しにしてルイランの首に喰らいつこうとした。
目を背けたくなるような凄惨な
そう思われた瞬間だった。
『kdjfskdhfhfgkffhskfsklfhfksldjfhs』
その場に奇妙な声が響き渡った。
それはおよそ人間や妖魔の言葉とは思えぬ理解不能な言語だった。
途端に2人の少女に襲いかかろうとしていたヒミカの体が見えない障壁によって阻まれ、空中で静止する。
「がっ……な、なに?」
ヒミカは思いも寄らない現象を理解できず、必死に体を動かそうとした。
だが彼女の体は空中でまるで見えない糸に全身を絡めとられたかのように、まったく身動きが取れなくなっていた。
そしてヒミカの目は信じられないものを見たといったように大きく見開かれた。
驚愕の色を
「ば、馬鹿な……貴様は」
ヒミカの頭上数メートルの宙に浮かんでいたのは……物言わぬ
その姿を目の当たりにして、その場にいた全員が仰天する。
「きょ、
それほど
そして
それはコウモリのような漆黒の羽であり、それをはためかせることで
「ど、どうなってるの……あの姿って」
すると
ようやく黒い霧から介抱されて白雪はすぐに這い起きて顔を上げた。
その目に変貌を遂げた
「て、
「
「詳しく説明している暇はありませんが、
白雪の話に
『itsfdkfaflsmgfbsamfappksjgsnlfhvak』
「こ、これって……」
まるで強烈な重力がヒミカを押し潰すかのようにその全身にかけられていた。
「か、かはっ……な、何だ?」
骨が軋み、筋肉が押し潰される異様な苦痛の中で、ヒミカは確かに見た。
自分の頭から帯状の白い光が発生し、それが天に向かって伸びていく様子を。
(何だこれは……)
まったく理解出来ない状況にヒミカは混乱していた。
だが、その目は確かに見ていた。
伸びていく光の帯に大きく日本語の文字が刻まれていることに。
それはヒミカがこれまでに犯してきた数々の罪状だった。
「あれは何ですの? あの女狐が手を染めてきた犯罪行為のようですが」
ヒミカの頭から発せられてる光の帯によってヒミカ自身が甲板に押し付けられている様子を見て、白雪が困惑した声を上げた。
その隣で
「分からない……けど、あれはまるで罪の重さだわ」
「自分の罪の重さに押し潰されている、ということですの?」
白雪の疑問に明確な答えを持たない
そしてふいに光の帯の発生が止まったかと思うと、それがヒミカの体を強烈に締め上げる。
ヒミカは鬼のような形相を浮かべて空気を切り裂くかと思われるほどの悲鳴を上げた。
「くああああああああああああああっ! お、おの……れ。おのれぇぇぇぁぁぁああああああ!」
その言葉を最後にヒミカは光の帯に押しつぶされていく。
まるで
そして光の帯で作られた
やがてその
自らが犯した罪によってヒミカは壮絶な最後を迎えることとなったのだった。
それと同時に
「きょ、
そしてその体にすがりつくが、
「
すぐ傍にいるルイランと
白雪は少し離れた場所で深い傷を負った
「や、やはり転生術は不完全だったようですわ」
止血用の護符を
転生玉を自分の体内で熟成する時間が絶対的に不足していたこと。
そして
そうした不安要素が今まさに悪い結果となって現れてしまったのだ。
「ざ、残念ながら……あのままでは二度目の死を迎えるほかないでしょう」
そう言う
だがもはやこれ以上の打つ手は何もなかった。
その場にいる誰もが絶望と失意に暮れたその時だった。
小さな黒い影が羽音を響かせて、横たわる
それは子鬼だった。
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