エピローグ
前編 帰ってきた響詩郎
夕暮れ時のバスハウス。
退院した
あれだけメチャクチャになった室内をよく数日で元に戻せたと思ったが、どうやら思わぬ助っ人があったようだった。
「おかえりさないませ。
そこには薄桃色のエプロン姿の風弓白雪が膝をつき、三つ指を立てて待っていた。
にこやかにそう言う白雪に
「あ、ああ。ただいま。と、とりあえずシャワーでも浴びようかな」
日没を控え、バスハウスの中には白雪が用意した夕食のいい香りが立ち込めている。
白雪は魔界から人を呼び寄せてこのバスハウスの修理と改造を格安で行った。
そのため、内部は以前と若干変わっている。
1階部分に
そう。
白雪もこのバスハウスに住むことを決めたのだ。
そんなことは
「だ、だけど魔界の姫さまが住むにはここは狭すぎるんじゃないのか?」
そう言う
「
淀みのない口調でそう言う白雪に、
「……なぁ。白雪。おまえには今回本当に助けられたし感謝もしてるが、だからと言って俺がおまえの……その、お、夫になって風弓一族に入るなんて無理だぞ?」
その
「ふふふ。でもこれからしばらくの間、私をおそばに置いてくださるお約束でしょう?」
「そ、それはまぁ……」
「それならば
そう言って白雪は片目をつぶって見せた。
その仕草があまりにも可憐で、
「そ、そうか。ところで
「さぁ……先ほどまではいらしたんですが、そういえば姿が見えませんね。でもすぐに戻っていらっしゃるでしょう。それよりシャワーを浴びていらしてください。バスタオルは後ほどお持ちいたしますから」
海上でオロチと戦ったあの夜。
蘇生した
その甲斐あって体調はすぐに元に戻り、本日めでたく退院となったのだった。
熱いシャワーを頭から浴びながら
彼の入院していた病院には
来なかったのは
まず、
薬王院ヒミカは死に、その身柄が警察に引き渡されることはなかった。
このことは
戦いの中で子鬼の力をもってヒミカの罪科換金額を借り入れたのだが、容疑者を警察に引き渡さなければ罪科換金額は振り込まれない。
借入額は500万イービルを越える大金であり、これがまるまる借金として残ってしまうと聞いたときには
だが、警察から依頼されたAランクの仕事の報酬が当初の金額から数倍に膨れ上がったのが不幸中の幸いだった。
当初は密航の手引きをしているヒミカを捕まえることが目的だったが、そのヒミカがオロチというとんでもない蛇神復活を目論んでいたことを突き止め、それを阻止した。
警察への
その報酬はかなりの額に登り、これと引き換えに膨大な借入額を相殺することが出来たのだ。
ただ、弥生やルイランへの支払いなどの諸経費やバスハウスの修繕費用などを含めると、その報酬もまったくといっていいほど手元に残らず、大変な苦労にもかかわらずほとんどタダ働きのようになってしまった。
また、船上で捕縛されていた結界士の倫もそのまま逮捕された。
これで今回の事件では倫、サバド、フリッガーの3人が逮捕され、死亡した薬王院ヒミカと幻術士のヨンスは容疑者死亡のまま書類送検となった。
また、警察内部の内通者については
これでこの件はようやく一件落着となった。
「まあ実際よく生き残ったよなぁ。一回死んだけど」
そう言うと
自分ではまったく記憶がないのだが、船上でオロチに殺された彼に白雪が転生の術をかけたことにより、一時的に妖魔に転生したという。
翼が生えるなどの肉体の変化や、ヒミカを葬り去った新たな能力の発現。
結果として転生術自体は失敗に終わり
白雪は見舞いの席で深々と頭を下げて、勝手に転生術を施したことを
だが、彼は逆に白雪に礼を言った。
それがなければ自分はあのまま死んでいただろう、と。
あれで一時的にでも命を繋いだことが、その後の子鬼による蘇生術での回復へと繋がったのだから。
一方、
子鬼を生み出すこととなった彼女の体を検査するためだ。
子鬼がなぜ
そして
そうした現象の原因は、
「子鬼か……」
そう
「私よ。
シャワールームの
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