第4話 相互補完! 雷奈と響詩郎
すっかり
時刻は午前4時。
5月中旬とはいえ、この時間はまだ肌寒い。
一台のパトカーと救急車が停車している道路沿いの歩道に一組の男女の姿があった。
「今回も黒字キープ。利益率がいいとは言えないけど、赤字厳禁の大原則を守っているから良しとしましょう」
彼女はつい先ほど、猿の妖魔に襲われていた少女を救ったばかりだった。
ここのところ発生している妖魔による殺人および傷害事件について警察からの依頼を受けて犯人を追っていたところ、現場を押さえることに成功したのだ。
「現行犯でつかまえることが出来たのは良かったけど、少しでも遅れていたら大変なことになるところだったわね。
そう言うと
彼らの背後では、化け猿に襲われて失神した少女を乗せた救急車がサイレンをけたたましく鳴り響かせながら走り去っていく。
パトカーもその後に続いた。
「運悪く軽い霊感の持ち主が、これまた運悪く妖魔の巣に迷い込んだんだろうな。助けられて良かったよ」
少しでも発見が遅れていたら少女は惨殺された遺体として発見されたことだろう。
そんな時は決まって
二人は妖魔の関わる事件を専門に捜査するフリーランスの対妖魔犯罪処理事業を営む霊能力者だった。
「
彼女がその身に宿す漆黒の大鬼・
それは
古の時代より封印されてきた
その活動期に神社から解き放たれる
今世紀の
「今回は1分13秒間の使用で12,500イービル消費。専用口座に残ってる残額は27,500イービルだ」
「じゃあ今回17万イービルが入ってくるから合計で約20万くらいになるわけか。しばらくは
即ち金がかかるのだ。
「前回、誰かさんが張り切って
そう言って肩をすくめる
身体能力は人並み外れた彼女だったが、生まれついての体質のようで、いくら
にも関わらず彼女は
その理由は今もって不明だったが、
それは霊力の代わりとなる何らかの
その
即ち
だからと言って
霊体である鬼にとって金銭は無用の長物でしかないからだ。
「悪かったわね! あんた男のくせに細かいのよ。
「細かく金勘定するのが俺の仕事だ。
「分かってるわよ」
二人は
「万が一、今日みたいな
そう言ってジロリと
「うるさいなぁ。お説教はもう結構よ!」
そう言ってむくれる
そして少しだけ己の感情を抑えながら、わずかばかり普段よりも穏やかな声で言う。
「俺はおまえに命を預けてるんだ。別にプレッシャーかけるつもりはないけど、俺の意見にも耳を傾けてもらわないとコンビなんてやっていけないぞ」
そう言う彼の言葉に
命を預ける。
それは文字通りの意味だった。
「俺の
暴かれた犯罪歴は客観的事実および確たる証拠としてみなされ、ケータイから警視庁のホストコンピューターへと転送されるのだ。
それにより警察の取り調べおよび法廷での裁判を簡略化することができ、その対価として妖貨(単位はイービル)と呼ばれる魔界通貨が
それは罪の重さを金に換算しているように見えるため、
「今回はたまたま17万のまとまった金額が入手できたからいいけど、メリハリつけないとそのうち貯金が無くなって
漆黒の大鬼を駆使して戦うほどに妖貨を消耗してしまう非経済的な能力の持ち主である
そのことは彼女自身もよく分かっている。
「……悪かったわよ。ちゃんと考えるわ」
謝罪しながらもふてくされた様子。
恐らくまた戦闘になれば熱くなるであろう彼女の性格。
それを思って肩をすくめながら
「ほら。警察から依頼料の支払予定通知が来たぞ」
そう言って自分のタブレットを見せる
「へぇ。なかなかいい額じゃない」
今回の仕事の依頼主である警視庁からのメールには、依頼料として支払われる日本円の金額が記されていた。
依頼料については日本円で得た額のうち半分を二人の共同資金とし、残り半分をさらに半分ずつ
「これでまた事務所設立に一歩近づいたわね。もっとバリバリ働くわよ!
「そうだな。ま、とりあえず今日のところは帰って少し寝るか。仮眠取らないとまいっちまうぞ。今日も学校があるんだからな」
そう言うと
この時の二人は自分たちの行く先に苦難の試練が待ち受けてることを知らない。
まだこの業界では駆け出しの二人に大いなる幸運と災厄が同時に降り注ぐのはそれから数日後のことだった。
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