第7話

「消したあ?!」

 葉太が距離に対して不必要なまでの声量で叫ぶので隆史は耳を塞いでのけぞった。隆史がのけぞった分だけ、葉太はまた距離を詰める。

「なんで?! 俺まだ読んでないのに?!」

「書けなかったからだ。あのままこねくり回していても手垢まみれの薄汚い何かが出来上がるだけだし、それなら全て消してしまった方がいい」

「俺! まだ! 読んでないのに?!」

「完成しなかった作品なんて読ませる気はない」

「プロでもあるまいし何そのプライド?! 普通唯一の大切な読者そんな無下にする?!」

「まあまあ」隆史は葉太の体を押し戻しつつその頭を撫でる。

「また別の話を書くよ。その時は読んでくれ」

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豆崎豆太 @qwerty_misp

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