本屋再襲撃

 さっそくネタが尽きた。文章を書くモチベーションを保てずにエタらせるつもりもないのに連載中のまま放置している私だが、気軽に掌編を書くのであればできるだろうと、思いつきに任せていろいろと書くための箱を用意してみたがそれですら早々と暗礁に乗り上げてしまった。持ち前の移り気を遺憾なく発揮しても短編集という形式であれば大丈夫と考えていた自分の見通しの甘さに辟易する。

 嘘日記にできるような出来事も取り立てて起こっていない。フィクションとして自分の生活を文章にするにしても、何らかのイベントが発生しなければ書きようがない。小さなアクシデントを演出によって膨らませるためには元となる出来事が必要だった。悲しいかな私にはなんということのない日常を読み物に仕上げられるだけの文章力がなく、日々の生活を切り取り掌編とするという手段は取れない。

 しょうがないので他所で書いたショートショートでお茶を濁してみたが一本しかストックがなかったし、新たなアイデアが湧いてくる気配もなくいよいよもって書くことがなくなった。

 私がブログをやってないのは更新を続けられないだろうと容易に見当がつくからなのだが、冷静になってみればそれは嘘日記であっても同じことではないか。行き詰まるのは目に見えていた。

 そもそも私の普段の生活には彩りというものがまるでなく、フェイスブックやインスタグラムに旅行の写真をアップロードするような行為からは縁遠い。陰キャもいとこで、家事風呂トイレを除けば休日は日がな自室に引きこもっているような人間だ。とりわけ冬場は寒さで出かけるのが億劫で出不精に拍車がかかり、この数ヵ月で行った場所はスーパー、コンビニ、書店、服屋、ドラッグストア、病院、美容院くらいではなかろうか。

 書店には新刊購入のために比較的頻繁に通っている。

 その日も帰りに書店へ寄った。ひとくいマンイーターの発売日だった。すでにカクヨムで読了しレビューも書いていたが、おにぎりスタッバーの加筆からしてまたぞろ重要な要素が加えられ作品に厚みが増しているだろうと推測できたので出版されるのを心待ちにしていたのだ。

 前回と同じ書店だったが、時間が早かったからか学校帰りらしい中高生が立ち読みしたり文具を見繕ったりしていてそれなりに賑わっていた。

 しかし、ライトノベルコーナーは客がいなかった。中規模の書店でも一般文芸、ライトノベル問わず客をあまり目にしないのは活字離れのせいなのだろうか。仮にも小説を書いている身としては、小説読みは目当てのものを買ったらすぐ立ち去り書店に長居しないから遭遇する機会がないのだと思いたい。

 ともあれ、ライトノベルの新刊棚でひとくいマンイーターを探す。面陳や平台にはなかったので、レーベルごとにまとまっている新刊の背からスニーカー文庫を見つけてタイトルを目で追って行くが、ない。目を皿にしてひとくいマンイーターひとくいマンイーターと心中で唱えながら再度一冊ずつ確かめていくが、やはりない。

 代わりに、おにぎりスタッバーがあった。この間はなかったのに入荷されているということは、重版がかかったのかったのかすごーい!と手に取って奥付を確めてみたが初版だった。意味わからん。新刊にあわせて一巻目が新たに刷られたわけじゃないのかよ。ひとくいマンイーターは入ってないし、いったいどうなっているのか。いくら地方の書店とは言え、配本が遅れたりはしないというのは経験で知っていたので、だとするならば入荷されていないのだろう。まさか、発売日に仕入れた分が全部捌けてしまったということもあるまい。

 ないものは仕方ないので、おにぎりスタッバー購入した。これでは例の女子高生(https://kakuyomu.jp/works/1177354054882149303/episodes/1177354054882626659おにぎりスタッバーをめぐる冒険参照)のことをとやかく言えないなと思うのだが、紙の本も欲しくなってしまったのだからどうしようもない。

 電子書籍は便利ではあるがこれが困る。面白かったら紙の本も所有したくなり都合二冊購入するはめになるのだ。

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