第1要素 第1章 アート
ロバート・ヘンライのアート・スピリットにはまず冒頭で次のように書かれています。「本書の主題は美であるーまたは幸福といってもいい。ー中略ー それがなんであれ、ものごとがうまくなされているかどうか、というシンプルな問題だ。それはどこかよそにある特別なことではない。」これを読んだ時、私は大変驚きました。これは起業家の目指すものと全く変わらないのです。絵画の世界がこのようなものだとは全く知りませんでした。
どのような開発者でも新しい商品にこの点を求めているはずです。私たちは新しい商品が人々に幸福をもたらすと信じて開発をするのです。しかし現実はどうでしょう。人々を本当に幸せにできているのでしょうか?中には、性能を上げればいい、新しい機能を足せばいい、価格を下げればいい、というふうに安易に作られた商品が多々あります。新しい幸せをもたらすべき商品が、使い手を置き去りにして作り手のための商品になってしまうことがあります。技術の進歩は重要です。技術は不可能を可能にします。しかし、使う人にとってなにが幸福なのかを考えずに性能を上げても意味はないのです。だからイノベーションが生じるのです。なにが幸福なのかを考えず企業同士が性能競争・価格競争をしあっている間、人々の心が置き去りにされてしまう。そして、人々はその企業から離れ新しい企業へと移っていってしまうのです。
私たちは感性を取り戻さなければなりません。そのためには絵を描くことです。人々をよく見て景色をよく見て絵を描くのです。描いてみればすぐにわかります、どれほど自分がものや人を見ていないかったか。
次の章では、感性を取り戻すための絵を描く練習方法について述べます。私たちは画家になる必要はありません。新商品を開発するために必要な感性を取り戻せばよいのです。
新事業開発 山川一 @masafuro
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