第7話

俺とエレナはノーレスト王国へ向かって歩き始めた。


「あ、そうだエレナ、魔法の使い方を教えてくれない?」


「え?杖を持っていたのでてっきり使えるものかと思ってたんですけど使えないんですか?」


「あー、えーっと、俺の故郷はすっごく田舎でな。魔法を使える人が1人もいなかったんだ。」


全部が全部嘘ってわけじゃない。魔法使える人いなかったしな。魔法の概念すらなかったし。


「そーなんですか!わかりました!命の恩人の頼みですもん、手取り足取りお教えしますよ!」


深く突っ込まれなくて良かった。


「あぁ、じゃよろしく頼むよ。」


「はい!じゃあまず、魔法とは何かということを説明しますね。魔法というのは自分のイメージを魔力によって具現化させることを言います。さっきの私の魔法は傷を癒すことをイメージし、魔力を手のひらに集めて放出しました。ハクヤさんが持っているような杖があれば魔力の放出がより楽になります。ここまではいいですか?」


「なるほどな、大丈夫だ。」


「はい、次に魔法の属性についてです。魔法は、炎・水・雷・土・風・光・闇の7つの属性に分かれています。そして、適正がある属性の魔法しか使うことができません。ハクヤさんはどの属性の適正を持っていますか?」


ステータスの一番下に書いてあったやつだな。7つで全部なら...


「えーっと、確か光以外はあったと思うぞ。」


エレナがポカンとした表情になる。


「ま、またまたぁ、ご冗談を〜」


俺は真顔で答える。


「いやマジで」


「え、いや、え?本当に光以外全属性持ってるんですか?だとしたら半端じゃないですよ!?」


「普通はどのくらい持っているもんなんだ?」


「普通は1つだけです。たまに2属性持っている人もいますけど、6属性持ってる人なんて物語の中でしか出てきませんよ!!」


おうふ。マジかよおい。もしかしてこれもロキのおかげか?


「エ、エレナはいくつ持ってるんだ?」


「私は光と風の2属性です!」


「へ、へぇー、2属性ってたまにしかいないんだろ?すごいじゃないか!」


「ハクヤさんのこと聞いた後じゃ嫌味にしか聞こえませんよ。」


俺は顔を引きつらせ、話を無理矢理にでも変える。


「そうだエレナ!風属性の魔法見せてくれよ!いやーどんな魔法なんだろうなーとっても楽しみだなー!」


「う、なんか誤魔化された気がしますけど...。わかりました。じゃああの木に向かって撃ちますね。よーく見ててください。風刃!」


エレナの手の周りに風が集まり、その風がチャクラムのような形になり飛んでいく。

風刃は木に当たり、ナイフで切ったような傷をつけた。


「おぉ!なんかかっこいいな!」


「これは風の刃が回転しながら真っ直ぐ前に飛ぶようにイメージするんです。ハクヤさんも試しにやってみたらどうですか?初めから上手くできる人はいないでしょうし失敗しても少しずつできるようになればいいんですから。」


「よし、やってみよう。」


俺は杖の先に意識を集中させ、今見た風の刃をイメージする。するとだんだん風が集まり、チャクラム状に大きくなっていく。そう、大きくなっていく。どんどん大きくなっていく。


「何やってるんですか!早く撃ってください!巻き込まれますよ!」


その言葉を聞き、俺は急いで真っ直ぐ飛ばすイメージをする。イメージ通りに真っ直ぐ飛んだ俺の風刃は周りの木を何本か真っ二つにしながら森林の奥の方で消えていった。


隣にいたエレナがちょっと遠い目をして呟いた。


「才能って恐ろしいですね・・・」


「ほ、ほら、あれだよ!俺は杖持ってたし!杖のおかげなんじゃないかな!うん!」


「杖があったってあそこまで強化されませんよ!木を何本か真っ二つにする風刃なんて聞いたことも見たこともありませんよ!何をどうすればあぁなるんですか!」


「いやぁ、撃ち出すタイミングがわからなくて戸惑ってたらどんどん大きくなっちゃって・・・。慌てて撃ったらあぁなった・・・みたいな?」


「はぁ・・・、ハクヤさんの場合は少し制御できるようにしないと危なくて使えませんね。他の属性の魔法は私には使えないので独学で練習して下さい。もちろん、制御する練習もね!」


こうして俺は魔法を使えるようになり、森林の一部を破壊した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ロキ様に異世界に誘われました 漆板 @Urushiita-ky

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ