第1話 これが本当の僕です



 生徒会の仕事も終わり下校の時刻になった。

 片付けを済ましたほかの役員達は帰る準備をして生徒会室から出て行く。

「会長お先です」

「会長ー、お先に失礼まーす!」

「うん、また来週ね」

 栗原さんや他の生徒会役員のみんなが生徒会室から去って行った。

 僕も資料を片付け帰る身支度を済ませ本日決まった議案の資料をファイルに入れ生徒会室の戸締りを済ませ教職棟にある生徒会の顧問がいる保健室へ行く。

 コンコンッーーーーーーーーー

「はいよー。勝手に入りやがれ」

 相変わらずやる気がなさそうな返事だ。

 保健室の中へ入るといつも通り先生はPCゲームをしていた。

 白衣姿のダメな大人代表である先生の名前は白鳥シグレ。通称ダメ男。

 この光景を見たほかの生徒が勝手に付けたあだ名だ。

 くれぐれもこの名を付けたのが僕じゃない事を分かってくれ。

 去年赴任してきたばかりなのにその態度は如何程なものかとも思えるがシグレ先生が真面目に仕事をしていたら次の日は絶対台風になるな。

「これ本日の議題の資料と生徒会室の鍵です」

 資料と鍵を机に置くがシグレ先生はPCの画面を食い入るように見つめこちらには見向きもしなかった。

「あの、先生…」

「うるさい黙ってろ!!今は莉乃ちゃんに告白中なんだ!!やっと、やっと、待ちに待ったこの日がやって来たんだ。俺の苦労が今日こそ報われる」

『転校生くん、ごめんね。莉乃は転校生くんと付き合えないんだ』

 女の子の立ち絵が反転し黒い画面にBADENDという文字が出てきた。

 その瞬間先生は豹変した。

 バンバンーーーーーー

「うわぁぁぁぁぁあああ!!!!」

 いつものように大声を上げ、勢いよくシグレ先生は机に頭を何度もぶつける。

 この狂ったような行動に流石の僕もかなりはドン引きした。

 過去最高でこんなにドン引きしたのは初めて。

 幸い下校時刻だしほかの生徒はほとんどいない、職員室から離れているためこのダメな大人代表はこのようなキチガイ行動が出来るのだ。

 ノートパソコンも学園の支給品なのにパソコンの中はエロくない健全なゲームが何本かDLしてありアニメの画像などが大量にファルダーの中に入ってあったのを前に確認済みだ。

「先生、もう気が済みました?」

「いや、まだだ、まだ俺は立ち直れん」

「たかがゲームじゃないですか。てか、シグレ先生この子攻略するのいい加減諦めてください」

 そうだ、早急に諦めて早く仕事をしてほしい。

「いや、諦めん。俺は必ず莉乃ちゃんとラブラブ幸せになる」

 このやり取りも何回目だろうか。

 シグレ先生がこのゲームにのめり込んだのは今からちょうど四ヶ月前。

 全キャラを攻略して優雅に過ごしていたシグレ先生だったが公式が前から要望あったこの莉乃っていう攻略難関の隠しキャラを追加したのが原因だ。

 それからというものシグレ先生莉乃の攻略に全身全霊を注いでる。

「そうだ。攻略サイトを見てはどうです?」

 攻略サイトでも何でも見てさっさと攻略を終わらせてもらいたい。

「それがな、ちょーーーー難関過ぎてまだ誰も莉乃ちゃんを攻略できたことないんだ」

 この莉乃って子は誰にも攻略出来ない超絶地雷女なのか。

 そんな子の攻略なんて辞めてしまえばいいのに。

「そうですか。なら今すぐ攻略を諦めて教師としての本文を全うして下さい」

「いやだぁぁぁー!!!俺は絶対りのちゅぁぁんを攻略するんだもん」

 このダメ男気持ち悪いな

「そうですか。ならもういいです。とにかく書類に目を通して確認印押してくださいね。あとテニス部の方にも顔を出してください」

「はいよ、てかお前そのキャラ疲れないの?」

 うっ!?このクソ男いちいち煩いな。

「ちっ、いちいち、うっせーなこのダメクズゴミ人間こちとらいじめられないように優等生の完璧人間演じてんだってーの!」

 ふーう、言いたいこと言えてスッキリした。

 てか、優等生演じるのも疲れるな。

 そう、何を隠そうこれがオレの本性。

 だがまだもう一つあるがそれは今ここでは言えない。だってそれトラウマだもん。

 小学校の時のあるトラウマのせいでオレは優等生を演じてるって訳。

 生徒会長までに登りつめたし案外優等生演じるのも悪くない。

 お蔭で先生からの評判も良いし。

 でもこのキャラ疲れる。

「はぁぁん、その目付きお前の姉に睨みつけられてるみたいで、快感だな」

 このダメ男もうすげー気持ち悪いな。

 てか姉貴はこの人に何やったんだ。

「おい、シグレ、オレ様とあいつが姉弟なの誰にもバラしてないだろうな」

 シグレの首元をつかみオレは食い入るように睨み付けた。

「いやー、言うわけないじゃない?俺とマトルちゃんの仲だし」

「シグレがそこまで言うなら勘弁してやろう。もし言ったらパソコン全部破壊してあんたの部屋にあるヲタクグッズとか全部破壊するから」

 オレはポケットから鍵をだしシグレの前に出した。

 勿論この鍵はオレの寮の部屋の鍵であってシグレの部屋の鍵なんて持っていない。

 シグレはバカだから疑うこと無く信じるだろう。

「お前もいつの間に合鍵を!?お前ら姉弟揃って恐ろしいな」

 ははは。本当に信じてる。

 そして今恐ろしい事が聞こえたが聞かなかったことにしよう。姉貴ならやりそうな事だ。

 オレは姉貴に学園の中では他人の振りをしろって言ってある。

 薄情だって?だが仕方ない事だ。

 血の繋がった姉弟だがオレ様のパーフェクトスクールライフを送るためには情は無用。

 だが他人の振りしろとは言ったがバリバリ色々と接点はある為普通に話したりしてる。

 まあ、1番は姉貴がまともになってくれればいいだけの話だが。

 昔はすごいまともで憧れのいいお姉さまだったのになー。

 あ、姉貴が誰かはまだヒミツ。だってその方が気になって続きを読みたくなっちゃうでしょ?

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俺の日常はお前らのせいでめちゃくちゃだっ!! 星野いおり @tansansui03

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