第25話守りたい人々

 わっちが、リアーネの元にたどり着くと、リアーネは右手を突き出し、わっちの右の胸を触った。

 「今こそ呼び覚ませ、真の力を」

 ぐぐぐ、うっ 体中が熱い、何かが体の中を這いずり回っているようだ。

 くっ苦しい

 わっちが思わずそう呟くと、リアーネはニヤニヤ笑いだし、両目を大きく見開いた、歓喜に満ちたその表情は、悪魔の本性を表している。

 わっちの体の中にも、隠れていた悪魔が呼び覚ますように黒い角、コウモリのような翼をズズズと奇妙な音を発しながら、現れ始めた。

 ぐおーと咆哮をあげたわっち、カエルさんが狼狽えてわっちを見ている。

 (こんな姿、カエルさんに見せとぅなかった)

 「ふふふ、準備はできたな、ではこの牧場を破壊するとしよう」

 なんじゃと!

 「話が違うではないか」

 わっちはリアーネに飛びかかろうとすると、頭に物凄い激痛が走った。

 「ふふふ、お主の力を発揮させると同じ瞬間に傀儡魔法をかけておいたのじゃ。お主は小生を襲う事はできん、そして小生の命令には決して逆らう事ができんのじゃ」

 下品な笑いを浮かべると後ろから声が聞こえてきた。

 「おぉ、来たの、血色の騎士、お主の兄は小生が殺しておいたぞ」

 村長さんは耳をかいた。

 「相変わらず、汚いやり方だな、リアーネ」

 リアーネはあぁん? っと村長さんの後ろからたくさん人が来るのを見た。

 村のみんなが集まって来ておる!

 アニグスさん、イシイさん、ユアリさん、エレイスさん、ミリさん、マドレーヌさん、ヒゲジイ。

 過去の事が頭の中によぎった、悪魔と知った町の人達が、優しかった人達が手の裏を返したようにわっちを殺そうとして、そしてわっちは町を破壊してみんな殺してしまった。

 同じ事がまた繰り返されるのか?

 不安そうな表情をしているのが分かったのか村長さんはわっちを見て笑った、テディベアの村長さんが笑えるようになっている。

 「エミ、君が悪魔だって事はみんな知っていたよ、だがね、君が来た時、ある女性が村のみんなに懇願したんだよ、あの女の人は優しい何も危害は加えないって、一緒に住んで分かったんだと、だから皆エミの事を受け入れた、そしてあの女性が言ったように君は頑張って牧場を建て直し、皆に優しくしカエルの呪いも半分解いた」

 あの女性、もしかして。

 「なんじゃ? 貴様らが来てどうだっていうんだ! デュルンダル、奴らを焼き殺せ、あの時と一緒だ、貴様を殺そうとしてる、殺る前に殺れ!」

 リアーネの言葉でわっちの頭に激痛が走った、そしてわっちは村のみんなに死の魔法の言葉を唱えようとした。

 「エミやめろ!」

 カエルさんが飛びかかりわっちの死の魔法をまともにくらった。

 「カエルさん!」

  わっちはぶるぶる震えてカエルさんを持ち上げた。

 か弱い声でカエルさんは言った。

 「忘れても、忘れても、来てくれた、嬉しかった、ずっと一緒にいたくて勇気を出して木の扉を叩いた時、あのリアーネにカエルにされた、しかし、それでエミは俺を忘れなくなった」

 はっとした、あのショタになった、カエルさんの顔……。

 山奥でひっそり暮らしていた、この村の村人に挨拶しに行ったが、村長さんに教えてもらい、もう一人いる村人。

 ゴルディールさん?

 その名を聞いた瞬間、カエルさんはピカーと体全体が光始めた。

 「グリモワールの呪いもリアーネの呪いもエミのキスそして真実の名を発した瞬間すべて消えた、お前の優しさがカエル、いやゴルディールを救った」

 村のみんなが笑顔で笑った。

 「私達も、ゴルディールさんの事を思い出しました」

 ユアリさんが笑いながら言うと、イシイさんが頷いた。

 「みんな、エミさんが大好きですよ、そしてこれからゴルディールさんも大好きになります」

 アニグスさんがキラキラ笑顔を浮かべた。

 「ゴルディールに僕のエミをあげない、これからもライバルよ」

 エレイスさんがふんと鼻息を出すと笑った、ミリさんもその横で笑っている。

 「これからも貝型パンを作ってもらうからね」

 マドレーヌさんがくくくと声を出して笑った。ヒゲジイも笑っている。

 でも、カエルさんはゴルディールさんは、わっちは目をつむったゴルディールさんに口づけをした、その瞬間わっちは目を見張った。

 さっきまで村にいたが真っ白ななにもない空間にゴルディールさんと立っていた。

 「やはり私の見る目は間違ってなかったね、あんたを牧場の跡継ぎにして正解だったよ」

 汚れた服、変形ベレー帽、エミーヌさん。

 「エミーヌさんが村の人達に?」

 エミーヌさんは意外そうにわっちを見た。

 「ほぉ、あの生意気な悪魔が礼儀を覚えたとみえる、ラーミ村の人はやはりいい人ばかりだな、幽霊になって村人に説得した私のお陰かもしれないがな」

 わっちはぽりぽり頬をかいた。

 ゴルディールさんは目を覚ました。

 わっちはゴルディールさんの方を見てい言った。

 「ごめんね、あなたの事を忘れていて」

 モウワスレナイヨ、カエルさんううんゴルディールさん、村のみんなも、だからみんなも忘れないでね、私の事」

 ゴルディールさんはわっちの言葉を聞いて叫んだ「どういう事だ!?」

 「アリュタシュア!」

 わっちは叫んだ、最強の魔法しかしそれは捨て身の魔法、いくら悪魔でもその体は耐えることはできない魔法。これでリアーネも戦争もオワル。

 「エミーーーーーーーーーーーーーー!!」

 ゴルディールさん村のみんなありがとう。

 ぶおっと風かふいた。

 「我が身を犠牲にしてまで村を守る、泣かせるじゃねえか」

 エミーヌさんが優しく言った。

 はっと俺は目を覚ました、ポンポン牧場に俺は立っていた、もうカエルではない、リアーネが代わりにカエルになっていた。

 「ゴルディール、エミは? どうなったのだ?」

 村長さんが近くで俺を抱き抱えたまま俺に聞いた。

 「エミがあの魔法を唱えた、禁断の大魔法アリュタシュアを……」

 みんながしーんと静まった。

 「忘れないでってエミの事」

 俺は改めてエミが大好きだった事を実感した、この村人もエミが大好きなんだ。

 ポンポン牧場の牧場主になった俺は牛を撫でていると、入り口の方から物音がしたので走って行った、牧場のお手伝いさんが来るのを迎えるのだ。

 「最後のお礼だよ」

 エミーヌさんはそう言ってなにかわっちにぶつぶつ粒やいた。

 わっちはラーミ村入り口の看板の前にいた。


 牧場、手伝える人募集中

 ポンポン牧場、ゴルディール。

 

たったったっと走ってゴルディールさんがわっちを見て微笑んだ。

 「お世話になります」

 「みずくせえぞ、エミ、俺はお前を忘れてはいないからな、もう忘れないぜ」

 わっちとゴルディールはぎゅっとハグをした。

終わり

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ポンポン牧場 星ぶどう @kakuyom5679

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