異世界での正しいお金の使い方
偽者
第1話 異世界転生に巻き込まれた結果
はーいこんちわ。
お金大好き18歳の高校生です。
進学先は何処にも進学せず、デイトレーダー予定でこれからまるっと金稼ぎに精を出せると思ったら、幼馴染の二人に説教されていました。
そんなところにトラックが突っ込んできてあら大変。
死んだーと思ったらここにいました。まる。
「初めまして、私は女神のレイリア! 勇者の卵君! 君にはこれから異世界に行ってちょっくら魔王を倒して貰……君達は誰?」
そういって俺と芳乃にジト目をするのは人外レベルの超美人。
いずれ俺が会社を起こした時秘書におきたいが、どうにも言動と顔芸的に最終面接で落としそうだ。
「おっかしいなあ。そこの勇者の卵君だけをここに連れてくる予定だったんだけど。余計なのが二人も来ちゃったよ。まずいかなあ」
勇者の卵と言われたのは俺。……ではなく幼馴染で正義感の強い犬飼一樹。
そして余計なのが俺と河合芳乃なのだろう。
「えー……女の子はまあ、一対として絵になるから言いとして男2女1ってどうよ……。あーバランス悪い!ダメだ。せめてあと男1女1か、最悪女1で2:2に……。ああムリだ。いますぐとか発狂されたら超めんどくさいって事でおっけー!」
何がおっけーなのかわからない。
ついでに言うと芳乃は限りなく白に近いグレーで俺は限りなく黒に近いグレーみたいな対応になった。
なに?
そっちの身勝手で俺はここに連れてこられたってのに、いきなりいらない子?
せっかく中学生の時から資産運用を繰り返して増やした貯金を開放して株やFX、デイトレードに使うために金を貯めに貯めて来たってのに一円も使えず、突然こんなところに連れてこられたってのに勝手が過ぎやしないか。
「さてさて勇者の卵君と可愛子ちゃんと目つき悪い子。今回はサービスで君達三人を向こうに飛ばすんだけど、その前にサービスタイムだ! あ、目つき悪い子別に私は脱がないからね」
誰もそんなこと思ってねえし、人を和ませポイント扱いで使ってんじゃねえ。金取るぞ。
「とりあえず、君たちにはまずこの無限に近い数のユニークスキルから一つをある程度ランダムだけど選んで貰うよー」
そういうと女神と俺達を大きく囲んで大量のカードが渦巻いた。
わお。もろファンタジー。
(さてさて、勇者の卵君には実戦系の欄から。可愛子ちゃんには魔法・回復系だとバランスがいいか。目つきの悪い子は……生意気そうな顔してるなあ。うしし。こっちのネタ系にしてみよう)
ん? 今俺のほうを見てなにか悪い顔をしてたような気がする。
「ユニークスキルって言うのは君達しか持ちえないスキルのことね。もうそれはそれは驚くほど高性能だから! 持ってるだけで勇者扱いなんだけど、選べないんだよね。カードが主を決める~的な感じね」
そういうとカードの渦の中から10数枚のカードが一樹の前に浮遊した。
「お。流石は勇者の卵君。10枚以上なんて凄いねえ」
「えっと、この中から選んでよいのでしょうか」
「うんうん。その中からなら何を選んでもいいよー」
ふむ。と一つ一つのスキルの内容を読む一樹をよそに、次は芳乃の前にも7枚のカードが近づいてきた。
「お、可愛子ちゃんのほうは7枚か。7枚でも結構凄いほうだよー! 才能豊かだねえ! これは予期せず当たりを引いちゃったカナ私?」
芳乃も自称女神に聞きながらスキルの説明を受けていた。
そうこうしているうちに俺の前にもカードがやってきた。……1枚だけ。
「ぷ、ぷふぅー! いやいやいや! いくら才能がないといっても一枚とか! しかもネタ! んぷふー!」
このやろう。隠そうともしねえで笑いやがって。
いいじゃねえかどうせもらえるのも1つだけなんだろう。
だったら何枚あろうが一枚で十分だ。
浮遊したカードを手に取り見てみると、一番上にデカデカと『S』とかかれていた。
「あ、それはね。階級だよ階級。一応AとSしかこの中にはないんだけど、でもそれネタスキルなのにSってー(笑) しかも異世界人だから始めはぬるいはずなのにそれじゃあ変わらずハードモードなんだけど(爆笑)」
なんでこの女はわざわざ人の神経を逆なでするんだろうか。
しかも優に事欠いてネタスキル?
ついでに言えば。
なんで、こいつは、俺の、スキルを、見ても、いないのに、ネタスキルだってわかってんだ?
とりあえずまだ疑いの段階ではあるが、心の奥にとどめておこう。
今はこのスキルの説明を読まなければ。
『 スキル等級 『S』
スキル名 ”
スキル説明 この世の中銭や。銭があれば何だって出来る。
銭の無いやつは生きるも死ぬも他人次第やけど、銭のある奴はそれすらも銭次第や』
スキル? 俺の座右の銘じゃなくて?
ただ一つだけわかったことがある。
どうやらこのスキル。思った以上に俺とあっている。
というかしっくり来すぎる。
スキル説明欄もいいことを言っている。どんな効果かはまったくわからないけど。
ふと二人を見るとまだ選ぶのに悩んでいた。
一つ一つを吟味し、お互いも相談しながら決めているようだった。
「なに? 終わったの? まあまだ時間かかるから、この中からパッシブスキルでも3つ選んでてよ」
ばらばらと地面にまかれるカード類。
それを一度見てから自称女神を見直すと、『どうしたの? ほら早く拾いなさいよ』って顔で見下してきやがった。
しかも俺がそれを拾おうとするとこちらを見ることもなく二人の下へ戻っていったのだ。
確信した。
こいつの俺に対する扱いは冷遇と言えるだろう。
ともかく。今はこのパッシブスキルを見ることにする。
やつへの仕返しは後回しだ。
パッシブスキルは20枚程度で、等級もA~Cまでのようだった。
防御力上昇(小)、攻撃力上昇(小)、回避力上昇(小)、魔力上昇(小)などの戦闘時ステータス上昇系は小で固定されているようだ。いずれ中や大になるのかもしれないが、確定で無い限り簡単には選べない。
一応自称女神に聞いてみたが、顔をこちらに向けることもなく「ええーそーねー」とか聞いてすらいない。
こいつまじで、仕返ししてやるからな。
次は鑑定、収集、飼育、索敵、急所突、隠蔽、速読、などの技能系スキル。
これらにはきちんと説明があり、鑑定ならばアイテムなどの説明文が読めるらしい。
飼育は動物や、植物の成長を少し促すもの。
速読は本を読むなど、基本的には役には立つがそこまで変化はなさそうなものばかりであった。
最後にあったのは特殊とかかれたカード。
経験値アップ(小)、アイテムドロップアップ(小)、状態異常耐性(小)、他人からの好感度アップ(小)、などの特殊アップ系。
読んで字の如くなのだろう。これらの説明文にはスキル名が書かれているのみであった。
なんというか。どれもこれもあれば便利だが、なくても困りはしない程度の能力であった。
この中から3つか……。
それじゃあこれと……あとはこれでいいか。
ん?
ふとカードたちを見ると一枚だけ赤みがかっているカードを見つけた。
他のカードは全部黒いカードなのだがこのカードだけ違う。
ぺらっと表にしてみるとそこには
『 スキル等級 『S』
スキル名 オペレート
スキル説明 解説、隠蔽、解析、鑑定、索敵、などの複合スキルの仕様可能。
またスキルに命令して行動を指定することも可能』
ええ……。
これ一枚でほとんどの技能系スキルがまかなえるじゃんか。
ちらりと自称女神達のほうを見るとまだユニークスキルの説明中。
この赤いカードを含めてアイテムドロップアップ(小)、それと収集スキルを獲得する。
そう決めるとカードは俺の体へと吸い込まれていった。
体に異常はない。というか変化すらなく、何も変わらない感じだったが
『始めましてマイマスター。私がこれから様々なサポートをさせていただきます』
と、何処からともなく頭の中に直接声が響く。
これがオペレートのスキル効果か。
『マイマスター。何かお聞きしたいことはありますでしょうか』
どうやらこちらから話しかけなくてもオペレートは発動しているらしい。
早速利用しようと思う。
「
『はい。
”全てのものがその場で売買可能”です。例えば、獲得したアイテムをその場で売買することが可能です。相手が売ろうと思っていないものなども買い取る事が出来ます』
「あー……常時ショップの前にいるみたいな感じでいいのかな?」
『はい。ですが金額は一定基準により決められております。また、値段は変動する場合もございます』
「なるほど……」
他のユニークスキルがどんなもんか知らないが、使い方によっては……いやかなり使えると思う。
ついでに言えばこのスキルであの自称女神に嫌がらせ程度ならできそうであった。
まだ時間がありそうだったのでもうすこし色々なスキルについて説明してもらっているとどうやらあちらも終わったらしい。
「さてさて! 勇者の卵君に可愛子ちゃん。今度はこっちのパッシブスキルから2枚スキルを選んでね!」
どうやらあっちも終わったらしい。
「隠匿スキルでオペレートを鑑定スキルにしておいてくれ。っというかあいつ女神らしいがばれないか?」
『了解しました。普通の隠匿スキルなら隠しとおせませんが、私がサポートいたしますので問題ありません』
わお。このスキル思った以上に使えるぞ。
「あっれえ? おかしいな。勇者の卵君にぴったりのスキルがあったんだけど……」
自分の体をぽんぽんぽんとまさぐり、なにやらカードを探しているようだった。
「ねえ目つきの悪い君? 赤いカード知らない?」
「さあ?」
「んー……鑑定にアイテムドロップ(小)と収集ね。なんだかぱっとしないねえ。でも君にはぴったりかもねぷぷぷ」
どうやら気を利かせて
「そーですね。まあでもパッシブスキルはこんなもんだろう?」
「そーだねえー」
なにやらにやにやとしているが、どうやら一と芳乃のカードは黄色がかっており俺に渡された黒いカードとは違うものらしい。
なるほど。
この女神どうやら心のそこから俺をからかうことを楽しんでいるらしい。
3枚だったのはどうせクズ効果だったからというところか。
もういい躊躇などしてやるものか。
「さてさて、どうやら決まったみたいだね」
『 【名 前】 犬飼一樹
【年 齢】 18
【職 業】 勇者の卵
【レベル】 1
【H P】 200
【M P】 200
【攻撃力】 200
【防御力】 200
【俊敏性】 200
【魔 力】 200
【スキル】 ユニークスキル 大裂斬
パッシブスキル ステータス上昇(大)オーラ(中)』
『 【名 前】 河合芳乃
【年 齢】 18
【職 業】 異世界人
【レベル】 1
【H P】 150
【M P】 150
【攻撃力】 150
【防御力】 150
【俊敏性】 150
【魔 力】 300
【スキル】 ユニークスキル 複数詠唱マルチスペル
パッシブスキル 魔力上昇(大)詠唱破棄 』
『 【名 前】 瀬野 冬夜
【年 齢】 18
【職 業】 異世界人
【レベル】 1
【H P】 100
【M P】 100
【攻撃力】 100
【防御力】 100
【俊敏性】 100
【魔 力】 100
【スキル】 ユニークスキル
パッシブスキル 鑑定 アイテムドロップ(小) 収集』
……ステータスまで違うのかよ。
っていうか芳乃までステータスが俺より高いし。
なによりも一樹のステータス上昇(大)とオーラ(中)だ。
これと指定されたステータスが明記していないと言うことは全ステータスがあがるのだろう。
優遇ってもんじゃなくえこひいきレベルだ。
それに、オーラ?オーラってなんだよ。
またにやにやしてこっちの様子を伺ってやがる。
あったまきた。
「あいつの装備で特殊効果のあるもんを買い取れるか?」
ぼそっと誰にも聞こえないようにつぶやいた。
『鑑定してみます……鑑定中………………。あ、それと私に話しかける場合は心で思っていただければ大丈夫ですよ』
あ、そうなの?
そうだよね。誰もいないところで話してたら変人だもんね。
そういえば俺の貯金してた金って使えるのか?
『使用可能です。現状所有権がマイマスターのものですから』
「さてさて、二人と一人の準備も整ったところで、早速異世界ライフをはじめようとしようじゃないか!」
女神はそういうと大げさに腕を開き後光が射す。
すると俺らの足元に魔法人が出現し、徐々に魔方陣の中へと飲み込まれていく。
「はじめは王宮に向かいなさい。ステータスカードを王様に見せれば万事うまくいくと思うわ」
くそ、オペさんまだか。
『オペさんとは私のことでしょうか? 現在マイマスターの財産を算出しています。現状買取可能なのは2点です。鑑定中・・・』
「あ、そだ。はい勇者の卵君。これ王様に渡してね。これがあれば利用されるようなことはないと思うから、思う存分暴れちゃって魔王とか倒してね! 必ず! 他の女神の勇者の卵よりも先に!」
『鑑定完了。私の独断で4つ選定完了しました。よろしいでしょうか』
おーけーおーけー! 何の問題もない! やつに一泡吹かせてやれ!
『ではマスターの貯金を全て使って
どうせもう使うことが出来ないかねだ! いっそのこと景気良く行こう!
できれば最高の表情を頼むぞ女神様?
『
おーけー。誰にもばれないように収集の効果にある収集空間(小)の中に入れておいてくれ。
『了解しました』
じとーと女神の方を見ていると目が合った。
よほど楽しかったのか俺と目が合うとにやりと笑い、口角が上がっていた。
だがこちらもにやりと笑う。
なるほど。流石オペレート。
いいものを取るな。
今の位置関係ならば確認できるものだ。
さて、気づかないならば悔しがる顔が見えないので教えてあげよう。
×(胸の前で腕をクロス) パン(手のひらを叩く) Vピース 〇(指で〇を作り) ー(眉の辺りに手をつける)
随分古い行動だが、わかったようだ。
スカートの上から肌をなぞり、あるはずのものがないことを確認する。
顔を真っ赤にし、何度も何度も前も後ろも確認するがないものはないのだ!
あっはっはっはっは!
いいざまだな女神様?
その顔だ! その顔が見たかったんだよ!
そして俺の視線に気づくと顔を真っ赤にしたまま俺を睨み付けて手を伸ばしてきた。
返せということだろうか?
だが残念。俺のスキルによってこの布切れの所有者は俺になっているのだ。
それに売るかどうかは俺が決める。
しばらくそのままノーパンでいるといい。ノーパン女神として他の女神に笑われることを切に願う。
もう魔方陣も肩とクビを残すまでになっていた。
これでしばらく会う事も無いだろうと思い、最後に一言。
「ざまあ」
さて、これから俺の異世界金策ライフが始まるゾっと。
異世界での正しいお金の使い方 偽者 @nisemono
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