出会い一つがもたらしたもの。

就活中の大学生と心が読める少女。
多感で不安定な者同士の出会いは、互いをどのように変えるのか。

他の方のレビューでも触れておられますが、本作の最大の良点はなんといっても主人公の心理描写だと思います。
ボーイミーツガールものとしての、二人でとある問題の解決に向かって動いていくという話の流れと起承転結をしっかりと踏まえた上で、その場その場での主人公の内面が巧みに描かれています。おかげで、するりするりと読め進められるのに、じわりと沁みるものがあり、ぐさりと突き刺さるところがある。そして、最後にふわりと軽くなる――この晴れやかな読後感は、作者様の見事な心理描写が大きく作用しているのでしょう。
個人的にはスマブラ四人組の関係性に惹かれました。この「出会い」も、主人公にとって大きなものだったのだと思います。

自分を取り巻く状況に漠然とした不安感を持ってしまうことは誰しもあります。それに真正面から立ち向かうのには多大な勇気が必要で、思わず目を背けてしまいがちです。
だけど本作のように、とあるたった一つの切っ掛けで、変わるものもあるのでしょうね。