2)探偵たちは新しい依頼を受ける②

「ま、待ってよ」

 宿へ戻ろうと歩いていくコールをミッシェルが追いかけた。

「すぐにロスアラモスへ出発だ。乗ってきた馬と鞍は、ここで売るぞ。必要なもんは下ろしとけよ」

「なんだよ。あの子たちにも愛着も湧いてきたっていうのに。いいじゃん、馬で行こうよ」

「時間がかかるんだよ。ロスアラモスへは列車で向かう。そこで馬を調達して調査員が消息を断ったという街へ向かうんだ」

「列車かぁ」

「なんだよ。また文句か?」

「ほら、列車の席ってずっと座っているでしょ? なんか窮屈でねえ……」

「寝てろ」

 コールが素っ気なく言った。

「だから、そうゆうのが嫌なの!」

「だったら本でも読んでろよ」

「本?」

「お前が1冊読み終える頃にロスアラモには着いてるだろうさ」

「本かぁ……でも本ってもなぁ……ん?」

 その時、ミッシェルは、雑貨屋に目を留めた。

「ねえ、コール。先に宿に戻っててよ」

「なんだ?」

「わたし、ちょっと、買い物してくるから」

「買い物?」

「旅の支度。すぐ追いつくからさ」

「お、おい、ちょっと……」

 ミッシェルは、コールの返事も聞かずにミッシェルは雑貨屋に駆け込んていった。

「やれやれ……まったく落ち着きのない奴だ」

 コールはため息をつくと、ひとりで宿に向かって歩き出した。


 ミッシェルは、雑貨屋に駆け込むと店内を見渡した。

 店主がミッシェルに気がついて声をかける。

「いらっしゃいませ。お客さん、何かお探しで?」

「本って置いてある?」

「ありますよ。棚には置いてませんがこちらに……」

 そう言うと店主は、カウンターの下から数冊の本を取り出した。

「どんな本をお探しで?」

「退屈しないのがいいんだけど」

「なら、この怪奇小説などはどうでしょう。アイルランド人の作家が書いた『カミーラ』です。面白いですよ」

 店主はそう言うと、置いてあった本を取るとミッシェルに渡した。

「これ、どんな話?」

「女の吸血鬼ヴァンパイアの話で……」

吸血鬼ヴァンパイアって?」

「人間の血を吸う怪物の事です」

「人の血を吸うだって? バカバカしい」

 ミッシェルは、手渡された本を返した。

「それでは、こちらのなんてどうです?」

 店主は、置かれた別の本をミッシェルに渡した。

「『氷の公爵と灼熱の淑女』という小説です」

 ミッシェルは本を手に取るとパラパラとめくった。

「恋愛ものですが都会では人気らしいですよ」

「ふーん、恋愛ものねえ……」

 ミッシェルは興味なさそうに呟いた。

「主人公の若い女が、年の離れた貴族に恋をしてしまうお話で……」

「え? の恋人……?」

「でも、お客さんはそんな感じのやつが好みじゃなさそうですよね。こっちの方なんてどうです? 『復讐の賛歌・地獄の逃避行』という人気の活劇物で、主人公のガンマンが……」

「買うよ、それ」

「毎度ありがとうございます」

「いや、それじゃない」

「えっ? 『復讐の賛歌・地獄の逃避行』じゃなくて?」

「ん、まあ……そっちじゃなくて、そっちがいいかなぁ……って」

「え? こっちですか?」

「いや、それじゃなくてこっち」

「えーと……」

「若い女が……と、貴族に恋するやつ……」

「ああ、『氷の公爵と灼熱の淑女』ですね。毎度有難うございます」

 店主は、ミッシェルに本を手渡した。

「あ、ありがと……」

 ミッシェルは、買った本を大事そうに抱えて店を出た。


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