24、連れ去られたウィンディ

 教会ではウィンディと教授がミッシェルたちを待っていた。

 教授は、ウィンディから列車で出会った白いドレスの少女の話を聞いていた。

「で、言ったの。あなたは早く隠れなさいって」

「じゃあ、ウィンディ。そのレイミアという少女は、列車での惨劇を知っていたというのかい?」

 奇妙な少女の話に教授は関心を持った。

「そうよ。私はそのお陰で捕まらずに済んだの。レイミアは友達なの」

「なるほど……」

「ここでも会ったわ」

「ここ? ここって……この教会でかい?」

「そうよ」

 カッシング教授は、礼拝堂の中を見渡した。

 何か嫌な空気を感じる。

「おいで。ウィンディ。ここは安全じゃないかもしれない」

「でも、ミッシェルが待ってろって……」

「もちろん待つさ。でももう少し安全な場所を探すんだよ」

「う、うん……」

「どこが安全な場所?」

「レイミア」

 礼拝堂の奥から白いドレスの少女が姿を現した。

 嫌な予感がしたカッシング教授は、ウィンディを背後に隠す。

「お前は……」

「カッシングさん。あれがレイミアよ」

「分かってる。下がっておいで」

「でも友達なのよ」

「違う!」

 突然の大声にウィンディが驚く。

 カッシング教授は、ナイフを取り出し身構えた。

「そうだろ? 不死者め」

 ナイフの剣先がレイミアに向けられる。

「彼女の言っているのは本当の事よ。私は彼女の友達なの」

「たぶらかして血をすする気だろう。悪魔め」

「邪魔はしない方がいいカッシング教授」

 レイミアはそう言うと教授に向かって手をかざした。黒い煙のような物が吹き出ると恐ろしいほどの力で教授を吹き飛ばした。

 壁に身体を押し付けられ気を失う教授にウィンディが駆け寄る。

「さあ、これで邪魔はされない。ウィンディ……行きましょう」

 レイミアは、ウィンディに手を伸ばした。

 



 ウィンディが連れ去られたのと入れ替わりにミッシェルとコールが教会に戻ってきた。二人は床に倒れた教授を見つけ、異変に気づく。

「どうした! 教授」

「すまん……不死者にウィンディを連れ去られた」

 頭を押さえながら教授が言った。

「喰われたのか?」

 ミッシェルは愕然とする。

「いや、さらわれた。不思議な事だが、何かウィンディに興味を持っているようだった」

 教会から出ていこうとするミッシェルをコールが止めた。

「どこへ行く気だ?」

「どこって……決まってるだろ。ウィンディを取り戻すんだ」

「取り戻すったって、お前」

「教授の話していた屋敷に連れて行ったに違いないんだ。取り戻す!」

「武器を持った吸血鬼どもだぞ」

「それでも行く!」

「ダメだ! 行かせない」

「放せよ」

「気持ちはわかるが見知らぬ子供だ」

 ミッシェルは、銃をコールに向けた。

「見知らぬ子供じゃない。ウィンディって名前で、両親も失った子だ」

「本気か?」

 撃鉄が起こされた。

「ああ、ひとりで結構。もともとひとりでやってた。もとに戻るだけだ」

「わかったよ……」

 コールは掴んでいた手を放すと、ライフルを手に取った。

「俺もいく」

「無理しなくてもいい」

「無理はしてない。それにお前の後ろを守る奴はいた方がいいだろ?」

「……好きにすれば」

 二人は、教会の扉を開けた。

「なあ、教授。屋敷に案内してくれよ」

 ミッシェルが言った。

「望みどおり、吸血鬼どもをぶっ殺してやる」

 殺気立った彼女に教授も圧倒されていた。

「わ、わかりました。ちょっと待ってください」

 教授は、荷物をかき集めると二人の後についていった。

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