第三章

25、死者たちの列車

 ダイナマイトで爆破された酒場には誰もなかった。

 ランタンで照らすと吸血鬼の成れの果てであろう黒い灰の一塊が床に転々としている。何があったのかは想像がついた。

 ミッシェルたちは、生き残りの吸血鬼や、アウトローたちがいないか警戒しながら壊れた店内に入った。

「役に立ちそうなものはなさそうだね」

 ミッシェルはめちゃくちゃになった店内を見回した。

「酒は残ってる」

 そう言ってコールは、棚の端に割れずに残っていたウィスキーの瓶を取ると一口飲んだ。

「教授、吸血鬼ってのは銀や祈りの与えられた武器以外になにか無いのかい?」

「吸血鬼は、太陽の光を嫌います。太陽な光でなくとも強い光には、過激な反応を示しますな」

「強い光っていっても……」

 ミッシェルが腕を組んで言う。

「なら、こいつを使おうじゃないか」

 コールは手に持った酒瓶を掲げた。




 屋敷の地下では、特殊な機関車が出発の準備を進めていた。

 異様な赤いオーラが生き物ように蠢き、機関車を覆っていく。

 その傍でレイミアと教会から連れてこられたウィンディが一緒に、この奇妙な機関車を眺めていた。

「これ動くの?」

 ウィンディがレイミアに尋ねた。

「ええ、動くわよ」

「変わった機関車ね」

「そうね。でも、すごく便利よ。居心地も悪くないわ」

 その不思議な機関車の後部には客車が二両、連結されていて身なりの良い大人たちが乗り込んでいた。レイミアを見つけると皆、丁寧な会釈をしていく。

「レイミア? みんな、あなたに挨拶していくわ」

「ああ、気にしないで。単なる挨拶だから」

「あの人たち、何か変」

「それも気にしないでいい。私といれば大丈夫だから」

 列車に乗り込む人たちの顔は青白く、その瞳は、何か別の生き物のような感じだった。

 ウィンディは、何かに似ていると思っていたが思い出したのは列車で襲ってきた吸血鬼だった。だが、彼らには理性があるように感じられ、凶暴そうではなかった。

「この機関車を覆っている光は何?」

「あれは命よ」

「命?」

「多くの人の命が機関車を動かすの」

「機関車を動かすのは石炭の火と水蒸気だって本に書いてあったわよ」

「ウィンディの読む本には載っていない機関車なの」

「不思議ね」

「ええ、不思議よね。中はもっと不思議よ。後で乗りましょう」

「これに乗るの?」

 不安そうにレイミアを見るウィンディ。

「そうよ。これに乗って好きなところに行くの。そうね……ワシントンにでも行きましょうか。ウィンディの新しいお家も見てみたいわ」

「行き先を選べる?」

「ええ、私の望む場所に行けるのよ。そうだ、これでこの大陸の全てを廻ってみない? あなたと私でいろんな町を巡るの」

「アメリカ中を……?」

「そうよ。きっと楽しいわ。いいでしょ?」

「う、うん……」

 ウィンディは、戸惑いながらも頷いた。

「よかった。きっと楽しい旅になる」

 そう言ってレイミアは、ウィンディに抱きついた。


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