16、ヤンガー兄弟

「ダイナマイトあるか!」

「あります! ボス!」

「貸せ!」

 シモン・ヤンガーは手下からダイナマイトを受け取ると導火線を短くちぎり、火をつけた。 

「これでも喰らえ!」

 仲間の死体に群がる怪物たちにダイナマイトが放り投げられた。

 導火線の火が根本に達すると爆発して周辺を吹き飛ばした。

「おい、もう一本だ!」

 シモンは、さらにもう一本ダイナマイトを投げ込むと店の外に逃げた。

 爆発が起こり怪物たちが吹き飛んだ。

 建物が大きく揺れると屋根から何かが落ちてきた。

「なんだ?」

 ヤンガー一味の目の前に落ちてきたのは黒いスーツのガンマンと少女だった。

 店の中にいた化物とは違うようだ。

「なんなんだ? お前ら」

 一味のひとりが、銃を向けた。

「いや、その……」

 ミッシェルはウィンディを後ろに隠すと銃のグリップに手をかけた。

「おっと! おかしな真似はするな」

 一味が一斉に銃を突きつけた。

 その足元を銃弾が跳ねる!

「屋根にも誰かいるぞ!」

 コールは、ミッシェルたちを逃がすために一味に威嚇射撃を始めた・

 指で逃げるように合図すコールは、引き金を引き続けた。

「ウィンディ、行くよ」

「う、うん」

 ミッシェルは、ウィンディの手を引くと路地に逃げた。


「どうした!」

 シモン・ヤンガーが手下に怒鳴った。

「屋根から誰かが撃ってきます」

 シモンは、馬の鞍からライフルを取ると屋根の上のコールに狙いを定めた。

 引き金が引かれた。ライフルの弾丸はコールのテンガロンハットをかすめた。

「ちっ!」

 コールは、ミッシェルたちが逃げたのを確認すると、その場から離れた。

「あのヤロウ、逃げてくぞ!」

 銃撃が激しくなったが、コールの姿は既に見えない。

「逃げたぞ!追……」

「待て!」

 コールを追いかけようとした手下を止めた。

「兄貴、なんで」

「あいつらは多分、居合わせただけだろう。特に俺らとやり合おうってわけじゃないだろうさ。それより問題はこっちだ」

 シモンは、ダイナマイトで爆破した店を見た。

「何人やられた?」

「四人だ……あの化物ども、喰いついて血を吸っていたぜ」

「誰だろうとぶっ殺すだけだ」

 シモンは、ライフルを下ろしてそう言った。

「ボス!」

「なんだ!」

「それが……とにかく見てくれよ」

 手下は、めちゃくちゃになった店の中へシモンを連れて行った。

 店内は、残骸の散らばり、埃と煙だらけだ。

 手下が案内したのは隠し部屋だった。

「こいつは……」

 隠し部屋にあったのは、金貨や銀食器に懐中時計、装飾品の山だった。

 雑多な箱や袋からすると、誰かを襲って奪った物のようだ。

「どうやら化け物どもは、俺らと同じような事をしていたようだな」

 強盗を生業としているシモンたちには、中の様子からすぐに分かった。

「こいつはすげえ。兄貴、拾いもんだぜ」

 様子を見に来たトーマスが言った。

「ああ、いいもん見つけたぜ」

「なあ、兄貴、もしかしたら、まだ他にもあるんじゃないか?」

「あ?」

「きっと、町に立ち寄った連中を片っ端から襲ってたんだぜ。もっと奪った品モンがあるに違いねえよ」

「そうだな。探してみる価値はあるかもな」

 シモンは、金貨の入った小袋を掴むと中身を覗いた。

「悪くない……おい! ヘンリー」

「なんです! ボス!」

「このブツを積めれる荷馬車を見つけてこい! 町ならどこかにあるだろう」

「わかりました! ボス」

 調達を指示された手下は、暗闇に消えていった。

「なあ、兄貴。このフォーク、俺が貰ってもいいいか?」

 トーマスは、銀のフォークを手にとってそう言った。

「それより、トーマス。お前、腕は大丈夫か?」

「腕? こんなもん……屁でもねえさ」

 化物に噛みつかれたトーマスの左腕にはバンダナを包帯代わりに巻いていたが、そこからは血がにじみ出ていた。

「止血はもっとしっかりしておけよ」

「ああ……」

 にじみ出た血は、床に滴り始めていた。



 

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