15、酒場からの脱出

 窓から店の前に集まった男たちの様子を見ていた。

「奴らの仲間かな?」

「街の者には見えない。だがまともな連中でもなさそうだ」

 その時、背後から物音がした。

 とっさに音の方に銃を向けたコールとミッシェルはその姿に呆気にとられた。

「なんで生きてんだ?」

 そこにいたのはコールが倒した男たちだった。銃弾を撃ち込んだはずが起き上がって再び襲ってきたのだ。

「このっ!」

 ふたつの銃声が鳴った。ミッシェルの放った弾丸が、男たちの頭を撃ち抜いた。

 男たちは気味の悪い奇声をあげながら灰になった。

「本当にこれでくたばったんだろうな」

 ミッシェルは、床に広がっていた灰を蹴飛ばした。

 銃声!

 こんどは酒場の方から銃声が聞こえてきた。

「しかけてきたか?」

 コールは耳を澄ました。

「……いや、これは撃ち合いだな」

 窓から外を覗くと馬に乗ってた男たちが酒場に慌てて入っていくのが見えた。

「どうする? コール」

「とにかくここにはいられない。逃げるんだ」

 部屋を出ると階段へ静かに向かった。身を伏せながら酒場の様子を見ると、化物と化した住人たちと、ならず者たちが殺し合っていた。

 銃を撃ちまくるアウトローたちに怪物たちが襲いかかり、下は血の海だ。

 下に降りるのは、無理だと分かったミッシェルたちは、部屋に戻った。

「ダメだね。あれじゃ降りれないよ」

 ミッシェルは、頭を掻いた。

「仕方がない……」

 コールは窓を指差した。

「屋根をつたって出よう」

「宿代踏み倒しだね」

「いや、前払いしてるよ」

 コールは、そう言ってため息をついた。

 ウィンディは、戸惑いながらミッシェルの腕を掴んだ。

「ああ? 大丈夫だよ。こんなのいつもの事だから」

「ミッシェル、いつも、吸血鬼を相手にしてるの?」

「あ……いや、そいうのは初めてだけど……まあ、なんとかなるでしょ」

 そう言ってミッシェルはウィンディに片目を瞑ってみせた。

 コールは、窓を開けると足元になる屋根への高さを確認した。

「いけそうだ」

 そう言って、コールは、窓から身を乗り出した。

「待ってよ」

 ミッシェルは、ウィンディの手を引くと窓に向かった。

「ウィンディは、高いところ大丈夫?」

「うん……頑張る」

「いい子だ。ウィンディならきっとやれるよ」

 ミッシェルはニコリと笑いかけると先に窓から出た。

「さあ、おいで」

 最初は、戸惑っていたウィンディだったが、覚悟を決めて窓から外に出た。

 屋根までは足が届かなかったが、ミッシェルが手助けしてなんとか屋根に降りた。

「慌てないでいいからね。ゆっくりおいで」

「おい、いそげよ。ミッシェル」

 ミッシェルは、コールを睨みつけた。

「な、なんだよ……睨んだりして」

「さっさと行きな! ボケ!」

 コールは、肩をすくめると屋根の上を歩き始めた。

 銃声が激しくなっていた。

 ミッシェルとウィンディが屋根の上を行こうとした時だ。

 下で爆発が起きた!

 屋根が大きく揺れ、ウィンディが足を滑らせてしまう。

「きゃああ!」

「ウィンディ!」

 ミッシェルは、屋根から落ちるウィンディを空中で掴まえると身をひるがえして地面に背中から着地した。

「痛てて……」

「ミッシェル」

「だ、大丈夫だよ」

 ミッシェルは、腰を押さえながら起き上がった。

「ウィンディは?」

「大丈夫だよ。あの……ありがとう」

「いいさ」

 ウィンディの頭に手を置いた。

 だが、落ちた場所が悪かった。その時だ。


 ミッシェルたちが落ちたのは酒場の外にいたヤンガーの一味の目の前だった。

「おいおい、なんだ? おめえらは」

 一味は、先程まで怪物に向けていた銃口をミッシェルに向けた。

 

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