14、強盗団 対 吸血鬼
ヤンガー一味が町に到着したのは夜になってからだ。
「兄貴! これからどうする?」
弟のトーマスが言った。
「酒場を探せ。まずは祝杯だ」
「酒場か……」
トーマスは、通りを見渡した。
「寂れた町だな。開いてる店が見えないぜ。雰囲気も変な感じだ」
「気にしすぎだ。おめえの悪いクセだ」
「だが、兄貴。俺、本当に嫌な予感がするんだよ」
そう言ってトーマス・ヤンガーは、胸にかけた十字架を握りしめた。
そうしていると部下の一人が灯りを見つけた。
「ボス! あれが酒場じゃないですか?」
「よしよし、あるじゃねえか。お前ら! 仕事の祝杯だ!」
シモン・ヤンガーの号令で一味は、酒場に馬を向けた。
店の前に来ると一味は馬を降りて酒場に乗り込んだ。
店内では、保安官をはじめとする街の住人たちが銃を片手に集まっていた。
「どうした?」
立ち止まっている部下たちを押しのけて入ってきたシモン・ヤンガーが入ってきた。保安官たちのライフルや銃を見て反射的に身構えた。
「やれやれ、手配ってのは早いもんだな」
一味の他の者たちも住人たちに気づかれぬようにゆっくりと銃のグリップに手をかけた。
保安官は、シモン・ヤンガーの方を見た。
「なんだ? お前ら」
「いや、来るところを間違えちまったようだ」
「今日は貸し切りだ」
「そうかい。では俺達は引き上げるとするよ」
その時だ!
酒場の二階から銃声が鳴った。
保安官が二階を見上げる。
「罠だ!」
弟のトーマス・ヤンガーが叫んだ!
同時にシモンが銃声のあった二階に気を取られていた保安官を撃った。
それを合図にヤンガー一味は、店にいた住人たちに向け銃を撃ちまくり始めた!
数人が銃弾に倒れた。
銃声を聞いて外にいた一味の残りも乗り込んできた。
人数は住人たちの方が多かったが、場数を踏んだヤンガー一味の方が上手だった。
これが、ただの田舎の住人たちだったら一味の圧勝だっただろう。
だが違った。
「なんだ! こいつ、死なねえぞ!」
銃弾を撃ち込まれ倒れた住人たちが次々と起き上がってくる。
「くそっ! 死にやがれ!」
一味のひとりは、撃ち続けたがやがて弾が尽きた。その周りを生き返った住人たちが襲いかかった。もう銃を使いもせずに獣のように飛びかかっていく。
「兄貴、こいつら死なないぞ」
シモンは、目の前の住人の心臓に数発を撃ち込んだ。
「ぎゃあああ!」
恐ろしい叫び声を上げて灰になった。
「見ろ。死なないわけじゃねえ。心臓だ! 心臓を狙え!」
一味は、襲い掛かってくる住人たちの心臓に狙いをつけて銃を撃ち始めた。
心臓に弾丸を撃ち込まれた住人は灰になっていく。撃ち損ねた一味の何人かが
無残に身体を食いちぎられた。
「ちきしょう! 化物が!」
トーマス・シモンが襲いかかってきた住人の心臓に狙いをつけた。だが引き金を引いたものの弾は空になっていた。慌てて銃弾を取り替えようとしたトーマスに怪物と化した住人がとびかかった。払いのけようとしたトーマスだったが、腕に噛みつかれてひっくり返ってしまう。
「痛えな! ちくしょう!」
必死に怪物を振りほどこうとするが、尋常ではない力で押さえつけられた。
「兄貴!」
弟のピンチに気がついたシモンが怪物の頭に銃弾のありったけをぶち込んだ!
血しぶきがトーマスの顔に飛び散った。
頭の半分を失って動かなくなった怪物をトーマスがはねのけた。
「くそったれめ!」
起き上がったトーマスは、怪物の死体に唾を吐き捨てた。
「大丈夫か?」
「ああ、だが血が止まらねえよ」
足元に転がっていた怪物が灰になって消えていく。
「こいつら、頭をなくしても死ぬんだな」
「普通はそうだろ。やっぱり俺の勘が当たったぜ。この町はヤバイ」
「いけるか、トーマス」
「当然だろ!」
トーマスは、弾丸の交換を済ませるとそう言い放った。
「よし、兄弟! この化物どもを皆殺しにしてやろうぜ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます