21、隠されていた列車

 ミッシェルは、祭壇に置かれた弾丸を手に取るとコルトのシリンダーに込めた。

 コールもウィンチェスターライフルに弾丸を込める。

 銃とベルトに弾を込め終わると、残りはポケットに詰め込んだ。

「なあ、教授もうひとつ聞きたいんだが」

 コールは教授に聞いた。

「アンタ、荷物を探してたって言ってたけど、あれは嘘か?」

「いやいや、嘘ではないですよ。私は探していましたよ。不死者たちをね」

「不死者?」

「吸血鬼たちの高位にあたる存在です。恐らく、この街にいる全ての吸血鬼は不死者も仕える者たちですな」

「あんた、詳しいね」

「私は専門家ですから」

「で、見つかったのかい? その不死者とやらは」

「見つけましたよ。不死者たちは、丘にある屋敷に入りました。だが警戒が厳重で忍び込めなかった。銃で武装した兵隊らしき者たちが屋敷を警備している。そこであなた方に協力を頼もうと思ったわけです」

「そいつら吸血鬼か? 人間か?」

「武器を持った吸血鬼ですな」

「死なない兵士が武器を持っているのか……厄介だな」

「お手伝いは期待しても宜しいのですかな? 」

「随分、軽く言うね」

 ミッシェルがコルトをトリガーガードを指で回すとホルスターに収めた。

「教授が言う、お手伝いってのは、吸血鬼の館に乗り込んでそいつらぶっ殺すってことなんだろ?」

「……まあ、そういう事になりますな」

「わたしたちの仕事は、鉄道会社の線路に勝手に乗り入れしている列車の正体と行方不明になった仲間の行方だよ。命を懸けてバケモノをぶっ殺すことじゃないんだよね」

 教授は、ミッシェルの方を見る。

「悪いけど教授。相棒の言うとおりだ。アンタを含めて三人で吸血鬼たちの巣に乗り込むのは、危険すぎるんだよ。おまけにアンタの話じゃ武装してるって言うじゃないか。ただの人間が武装していて集まっていても危険なのに、ましてや吸血鬼だぜ?」

「あなた方を雇うと言ってもですかな?」

「そういう問題じゃないんだ。分が悪いんだよ」

 その時だ。二人の間にウィンディが割って入った。

「私が手伝う!」

 ウィンディが真剣な顔でそう言った。

「私が教授を手伝います」

「ウィンディ、そんな事できるわけないだろ?」

「なんで?」

「何でっていってもウィンディは、子供だし……」

「私、ママとパパの仇を取りたいの」

「ウィンディ……」

 ミッシェルは言葉を続けられなかった。

「コール……?」

 ミッシェルは、コールの顔を見たがコールは、首を横に振った。

「とにかく俺たちは、もともとの事をさせてもらう。鉄道を調べにいく。あんたはウィンディとここで待っていてくれ」

 ミッシェルは、ウィンディの両肩に手を置いた。

「ウィンディ、ここで教授と待っていてくれる? 駅を調べたらすぐ戻ってくるからね」

「う……ん、気をつけて、ウィンディ」

 ウィンディは、そう言うとミッシェルに抱きついた。

「さてと、準備はできた」

 コールは、ライフルを肩に担いでそう言った。

「ああ、こっちもいいよ」

 ミッシェルは、ウィンディを放すと立ち上がった。

「それじゃ、行くか」

 二人は教会の扉を開けて外へ出た。


 ミッシェルたちが乗ってきた馬は、いなくなっていた。

 盗まれたか、逃げられたか、殺されたかだ。

 仕方なく二人は徒歩で駅に向かった。

 暗闇の中、駅を目指す途中、馬上の集団を見かけた。

 人間なのか、吸血鬼なのか判断はつかなかったが、二人は身を隠した。

 通り過ぎる集団が去るのを見送ると再び駅に向かってあるき始めた。


 辿り着いた駅には、誰もいなかった。

 駅には引き込みの線路があって。その先には列車の集積場があった。

「ここの線路、使われてるな」

 コールは、錆の削れたレールの表面を見て言った。

「どこかに列車を引き込んでるんだろう」

「それって……」

「ああ、使われていない路線を通った列車……鉄道会社が言う、勝手に乗り入れしている車両ってのに当てはまると思わないか?」

「ねえ、コール。あれを見てよ」

 ミッシェルは大きな納屋のような建物を指差した。レールもそこへ続いている。


 二人は納屋に忍び込んだ。

 中には機関車と客車がいくつか並んでいた。

 客車を覗くと乗客がいた。

 皆、不思議なことに目を見開いたまま客席に座っている。まるで人間そっくりに作られた人形のようだった。

「みんな、どうしたんだろう?」

「あれは、きっと吸血鬼だ。よく見ろ」

 多くの乗客の服は血で汚れていた。それを気にする様子もない。

「列車の乗客が襲われて吸血鬼になっちまったんだ」

「そんな……じゃあ、ウィンディの両親もここにいるのかな?」

「考えるな。これで俺たちの仕事の半分は終わったんだ。ここは、もういい。探偵社に報告してあとは判断を任せよう。気づかれないうちに出るぞ」

 その時、納屋の扉が開いた。

 二人は、慌てて列車の下に身を隠した。

 数人が納屋に入ってくるのが見えた。

「思ったとおりだぜ! 兄貴!」

 入ってきたのは酒場にいたアウトローたちだ。

「コール、あいつら……」

「しっ! 様子をみよう」

 ヤンガー一味は、ランタンをかざしながら列車に近づいた。

「きっと、ここにお宝を溜め込んでるに違いねえ」

「中の様子を見てこい」

 シモン・ヤンガーが部下二人に命じた。

 列車に乗り込んだ二人は、中の様子を見て驚く。

「なんだ? こいつら」


 しばらくすると銃声と鳴り響いた。

「どうした!」

 列車に乗り込んだ部下たちが吸血鬼たちに襲われているのが見えた。

 窓ガラスに血しぶきが飛ぶ。

「くそっ! 逃げろ」

 危険を察知した一味は、納屋から逃げ出した。

 様子を窺っていたミッシェルとコールも列車の下から這い出すと納屋から逃げ出した。納屋から出た二人は、給水塔の陰に隠れた。

「危なかったな」

「あの馬鹿たち、吸血鬼を起こしちゃったよ」

「ここも危険だ。早く教会へ戻ろう」

「う、うん」

 その時、撃鉄の降りる音が聞こえた。

 反射的にコルトを抜くミッシェル。だが銃口が後ろから突きつけられ身動きができない。

「動くなよ」

 コールもライフルを構えようとしたが、同じく銃を突きつけられた。

「おっと、お前も動くな」

 数人の男たちがコールに銃を向けていた。

 先頭の男の胸には保安官バッヂが付けられていた。

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