5) カミノ・レアルの不気味な噂
「カミノ・レアルの町へ行く列車がないって?」
ミッシェルが思わず口走った。
ロスアラモスに到着したコールたちは、レアルの街へ行く為の列車に乗り換えようと駅に降りたが肝心の列車が無いのを知った。
「レアルの街への路線は繋がる前に廃線になっていましてね。列車は走っていないんですよ」
車掌は、申し訳なさそうにそう答えた。
「お客さんたち、どうしてもカミノ・レアルへ行きたいんですか?」
「ああ、仕事でね。どうしても行かなくてはならないんだよ」
「でもあそこは、ずいぶん前からゴーストタウンですよ。行っても誰もいない」
「仲間が行ったきりなんだがね」
「それはお気の毒に……」
「おいおい、死んだってわけじゃないぞ。連絡が取れなくなったってだけだよ」
「いや、その……あの街には、ちょっとした噂がありましてね」
「噂?」
「ここだけの話……」
車掌は誰かに聞かれないか周囲を見渡した後、小声で切り出した。
「あの町に行って行方不明になる者は珍しくないんです」
コールは、眉をしかめた。
「何かあるのか?」
「さあ……」
車掌は、肩をすくめた。
「とにかく、路線が走っていたことはあったんです。でも、あそこから乗る乗客は誰もいないんですよ。だから廃線にしたっていってのはわかるんですが、実は、土地に先住民の呪いか何かがあるんで会社が路線を廃止したって噂なんです。だいたい、カミノ・レアルの町を通り過ぎてアリゾナへ向かうための線路は、ちゃんと途中まで作っていってんだから」
「じゃあ、線路は途中までで、その後は途切れてるってのか?」
「確か、峡谷の直前までだったかな。橋もしっかり架けてあったんですがね。アリゾナに繋がる線路は、コースを変更させて新たに作ったんですよ」
「手間のかかる話だな」
「まったくです。で、話を戻しますが、お客さんカミノ・レアルの町へ行くのは悪いことを言わないからよした方がいいですよ」
車掌は、そう言うと自分の仕事に戻っていった。
「しかたがない。汽車での旅はここまでだ」
「いいさ、馬での旅も好きだし」
ミッシェルは肩をすくめながら言った。
「まずは、この町で馬と地図を手に入れようか」
「マスタングだったら安く手に入るかもね。それより、学者の先生は馬に乗れるの?」
ミッシェルがそう尋ねると教授はにこりと笑う。
「昔、東欧を馬で旅したことがありましてね。こう見えても馬での旅は、慣れていますのでお構いなく」
カッシング教授はそう言ってにっこりと笑った。
「しかし、先住民の呪いとは面白い話ですな」
「呪いなんてばかばかしいよ」
「ミッシェルさんは、そういった類のものは信じてはいないのですかな?」
「何かに祈って人を殺せるなんてできるわけない。人を殺すのは、銃かナイフだよ」
そう言ってミッシェルは、ガンベルトのコルトを抜いてみせた。その速さに教授も感心する。
「おい、ミッシェル。失礼なことはするんじゃない。教授は、俺達の雇い主でもあるんだからな」
「あ……ごめんなさい、教授」
「いえいえ、お気になさらずに」
「でも、先生は、学者さんなのに呪いとかを信じているわけ?」
「呪いに限らず、超常現象的なことを論理的に説明できないものか常に考えています。実は、私の専門分野は、そういったものの研究でね」
「へえ……」
ミッシェルは、そういったものを真面目に研究する学問もあるのかと少し感心した。
「学者って、どんなものでも研究するんだね」
「何にでも原因と結果があるものです」
そう言って教授は真剣な顔つきをする。
「摩訶不思議な出来事にも何かの原因があるのですよ。私はそれを知りたいんです」
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