「帝国の艦隊と戦うのに、子供が船長の船なんて弱過ぎてダメだよ?!」
あらすじを見てそう思われた方もいるかも知れません。
でも、私は断言します。
小さな船長ラヴェリテが持つ、子供ならではの純真さ、無邪気さ、そして無条件に愛を信じる気持ち……。それはある種の武器です。
彼女は駆け引きをしないからこそ、強いのです。
彼女は、船員の募集方法が分からなくても、廃船に乗船することになっても、海に落ちてしまっても、それでも自分の可能性を信じています。その心に感じ入って、見知らぬ大人たちや船の精霊までもが最上の戦友へと変わって行くのですが……その過程の描写が上手いこと。
ラヴェリテと船員たちのにぎやかな掛け合いは、本作の魅力の一つです。
特に酒場でのシーンや、海上での遭難後に救助されて出会ったAIや船の精霊との語らいのシーンには思わず胸が熱くなります。
また、「宝島」や「ジム・デービスの冒険」等、航海記の名作に親しんだ方々には、この小説の大きな役を担う「ミラン号」の描写にヨダレが出ることでしょう。
「木造船より金属の船が好きだよ」という方も大丈夫、小説の後半では、装甲艦が圧倒的な戦闘シーンを魅せてくれます!
完結済みの作品ですので、ぜひぜひご覧ください!
とにかく、ラヴェリテがかわいいんです。
作者さんの心の中の、秘密の小箱から飛び出してきたような、素直で、無邪気で、元気いっぱいで、かわいらしい女の子。
ラヴェリテの身には、お父さんが……という、幼い子供にとって大変な出来事がふりかかります。それを何とかしようと、彼女は冒険に乗り出す。ラヴェリテを待っているのは、大いなる海、帆船、港の酒場、怪しげな男たち……海賊の世界。
ラヴェリテは、時にまっすぐに、時にかわいらしく、荒くれ男たちを味方に引き入れていく。それが、なんともいえずほほえましいです。
後半、物語は大きくひっくり返ります。読んできたあなたは「おおっ!」となるか「えー……」となるか。でも、ラヴェリテは動じません。新しい世界で、新しい友達を探していきます。
あなたも、ラヴェリテを応援してみませんか?