第5話
カーテンの隙間からの朝日にモナは目を覚ました。ミュータントとして生まれてから今まではあの地下にある隔離室に閉じ込められていたため陽の光を見れることすら珍しい、
「おはよう、よく眠っていたね」
隣に横になっているロアが笑みを浮かべながら髪を撫でる。
「僕は仕事があるからね...モナのお世話を1日していたいところだけどできないからまた隔離室に...いや、今日は図書室に居ようか」
そう言っては少し複雑そうな顔をしてはモナの手に手錠をかける。そう言えば図書室なんて入らせてもらったこともなかった。図書室に着けばロアは少し名残惜しそうにしながらも「また後で迎えにくるよ」と言ってはどこかへ行ってしまい、入れ替わりにモナよりも少し年上だろうか、25歳くらいの女性が図書室に入ってくる。見張り役だろうか。
「モナ君、ロア博士に頼まれて...今日はよろしくね、って...本は読まないの?」
「手錠あるから読みにくい、それに興味無いから」
ソファーに座ったまま1日を過ごす予定だったらしく、隔離室には3日閉じ込められていたりしたことがよくあったりと何もしないのは慣れているし、1日実験と称した拷問のような苦痛に耐えるのよりもずっとマシなのだろう。
「それじゃあ私とちょっとお喋りしない? 私はヴェロニク、よろしく」
「...うん」
面倒だ、というようなぶっきらぼうな返事をするとヴェロニクは少し驚いたような顔をしてから今度はくすくすと笑い出す。それを何だよ、と言いたげにモナが横目で見る。
「あ、ごめんなさい...モナ君は制御装置つけてないし実験の度に抵抗しては壁とか部屋を壊しちゃうっていうからすっごく荒々しいとか暴力的な子かと思ってたの、だから私今日で死ぬんじゃないかってね。ちょっと安心しちゃった」
隔離室と実験室以外にはモナはあまりいないせいか名前だけは知っていたが外見や性格は知らなかったのだろう、ヴェロニクがモナの髪を人差し指で掬う。
「綺麗だね、真っ白...。...ロア博士とは仲が悪いの?」
「知らない」
自分は嫌いだ、しかし何故か昨日彼といると心地よかった。モナの返事に困ったような顔をしてはヴェロニクは質問を続ける。
「じゃあ、嫌い?」
「...自分以外は敵だ」
「モナ君は、自由になったら何がしたい?」
この質問をされると少し考えてから目線を下に落とす。自分はミュータントだけど兵器として使われたくはないし、もしここを出れたとしても何もすることがない。
「あ、ごめんね、質問いっぱいしちゃったね」
考えた事もなかった、自分は何の為にミュータントにされたのか。前は人間だったのか、それとも生まれた時からミュータントだったのか。幼い時からの記憶がまるで霧の中にいるようにぼやけていて何も思い出せない。
「...あいつは俺をどうしてミュータントに?」
今度はモナからの質問だった、いきなりでそれにこの理由は本人しかわからないのではないだろうか、ヴェロニクは少し困ったような笑みを浮かべる。
「何でだろうね、わからない...」
「...そうか」
モナにとっては初めて知りたいと思った事だ。少し肩を落とす。
「ロア博士ね、モナ君の事、すごい大切にしてるのよ」
「どこが...」
「え、逆に自覚してなかったの? モナ君あんまり戦場に行ったことないでしょ、それに制御装置も唯一つけられてないのよ、だからモナ君は自分に楯突かない兵器としてじゃなく人間らしくなってほしいんじゃないかな」
人間らしく?考えたこともなかった。
「それにね、さっきモナ君を送って行く時の顔、5年ぐらい働いているけどあんなに幸せにそうな顔初めて見たのよ」
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