第3話
ロアはマグカップを両手に持っては上機嫌な様子で地下10階の廊下を歩いていた。
「モナ昔からコーヒー飲めなかったからね」
なんだか懐かしそうにそう呟いてはまだ温かいのか、湯気が立つココアを見ながら分厚い扉の前に立ち、網膜認識の機能までついているのかパネルの前で瞬きをするとすぐさま扉が開いた。
しかし一瞬にしてロアの気分は逆転した。
部屋に充満する生臭い匂い、部下2人がモナを囲んで、モナの髪と太ももからいやらしくたれている白濁。
一瞬にしてココアが入っていたマグカップは地面に落ち、割れ、一瞬にして片方の男の首を締上げる。
「ろ、ロア博士...違うんです、これは」
締め上げられた男を庇うようにモナの腰から手を離し、モナはその場に倒れ込み、男はロアに駆け寄る。
「違う...? 何が」
片手で男の首を締め上げながら駆け寄ってきた男の腹に蹴りを入れると男はぶっ飛ばされ、壁に叩きつけられる。
明らかにぶっ飛ばされた男の方が体格がいいが、そんな男をここまでぶっ飛ばす蹴りの威力は凄まじい物である。
「何してたの?」
「こ、...れは」
首を絞められた男が答えようとするも喉仏にぐっと親指を押し込み、そのまま男はしばらく藻掻くがじきにプランと動かなくなる。
動かなくなった男の首から手を離すと今度は先程ぶっ飛ばされた男に向かってゆっくりと歩き出す。
「ねぇ、何をしたんだい?」
「あ、...も、モナに...俺のを...」
男は顔に冷や汗を浮かべながら返事をする。
「へぇ...モナにそのきったないの、入れたんだ.....」
男の前まで来るとそのまま男を見下ろし、沈黙が走る。
「もうしないので...せめて」
「一生できないように...ね」
言葉の途中でロアがニタァっと笑みを浮かべるとそのまま踵で男の股間を踏みつける。
男は悲鳴をあげるような余裕もなく、気絶したのかそれとも死んだのかはわからないが動かなくなる。
「モナ、怖かったよね...」
そう言いながらモナに自分の来ていた白衣を被せ、抱き抱えると部屋を出てはエレベーターに乗り、最上階まで連れていくとまたも分厚い扉があり、網膜認識で扉が開くと高級ホテルの一室のよいな部屋が見えた。
「モナ、綺麗にしてあげる」
そう言いながら風呂場まで連れていかれ、あっという間に現れると体を拭かれると同時に、手錠も外された。手錠を外されるのは戦地に行く時だけ、寝る時も、実験される時もいつでもされていたので両手が動かせるのが懐かしい。
「モナ、今日は一緒に寝よう」
ベッドにロアが横になり、モナが入れるようにスペースを開けてはポンポンと布団を叩く。
「...嫌だ」
「ほら、温かいからおいで」
人間は嫌いだ、だが寒さには勝てず悔しそうにロアの隣に横になる。
「手錠、外したままでいいのかよ」
「うん」
「お前が寝てる隙に殺すからな」
「怖い怖い、でもね、モナはそんなことできないと思うよ」
あやすようにロアはモナの背中を撫でる。
「俺には制御装置がない、だからお前なんかいつでも...」
ロアの首を締めようと首元に手を伸ばすが何故か心の中の自分が悲しがっていることに気がつき、そのままロアの胸元に手を置く。
「安心して、僕はモナに酷いことしないよ」
「お前なんか...嫌いだ」
そう呟くも体が勝手に動き、ロアに身を預けるようにロアの胸元に顔を埋める。
何故か懐かしい気持ちになり、自分をミュータントにし、好き勝手に実験してきた大嫌いな奴なのに心地よい。
「モナ、昔もこうやって一緒に寝ると甘えてきたよね」
ーーー昔?一緒に寝たのは今日が初めてだろうが。
ーーーだけど俺はこの匂いと感覚を知っている。
「ふふ、寝ちゃったか、...おやすみモナ」
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