第304話きりぎりす

人のもとにまかれりける夜 きりぎりすのなきけるをききてよめる


きりぎりす  

     いたくななきそ

            秋の夜の

                長き思ひは

                     我ぞまされる



                      藤原忠房 古今196



とある人のお屋敷を訪ねた夜に、こおろぎが鳴いていたのを聞き、詠んだ歌。


こおろぎが 本当に悲しそうに鳴いているけれど

長く尽きない辛さは 私の方が勝っているよ



招かれてしまって仕方なく居続けないといけないのだろうか

そういう時の時間は長い

こおろぎは、辛そうに鳴いているけれど、愛人のもとへ行きたくても行けない、この私のほうが、余程辛い。

             


※きりぎりすは、現代のこおろぎ。        

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